いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

第8回うみラボ 福島第一原発沖調査レポ・マダラ編

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。

去る4月19日日曜日、今年度初の「うみラボ」福島第一原発沖海洋調査に行ってきました。結論から言うと、いわゆるひとつの「爆釣」で、マダラ、アイナメメバル、そしてソイなど、爆釣の名にふさわしく非常に充実した釣果でした。福島の海は、本来の豊かさを取り戻しつつあるという実感が、回を重ねるごとに強くなっています。

しかしながら、すべての魚が安全になったとは言えませんし、ブリッブリの食べごろに育っているのに未だに試験操業の対象になっていない魚種も少なくありません。福島の豊かさ、そしてその豊かさを味わうことの出来ない悔しさ、そして悲しさ。引き裂かれるようなそんな複雑な感情を、調査のたびに感じているところです。

では、調査の模様を振り返って参ります。

朝9時に久之浜港を出発。1時間かけて東京電力福島第一原子力発電所1.5km沖を目指します。途中、広野火力、福島第二原発を通過し、福島第一原発に到着するわけですが、これ何度も言いますけども、本当にこの地区は発電所銀座なんですね。この電気でもって首都圏の発展を支えているわけです。首都圏の皆さま、電気のスイッチを入れたら、どうぞこの光景を思い出して下さいませ。

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朝9時、調査船は久之浜港を出発。風は冷たいものの天候もまずまず。順調に調査が行われました。

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広野火力発電所。ここの発電所で作られる電気はみな首都圏で使用されています。東京電力管轄です。

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ひっそりと静まり返る福島第二原子力発電所。現在発電は行われていない。

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来るたびにクレーンの位置などが微妙に変わっている福島第一原発。作業員の皆さん、どうかご安全に。


さて、まずは原発沖1.5kmのポイントで海底土を採取します。こちらは毎度おなじみエクマンパージ採泥器を使用。アクアマリンふくしまの富原せんせいの手によって的確且つ迅速に採取されていきます。

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そしてこちらが海底土の計測結果。72時間乾燥後に測定しています。

原発直近の1.5kmポイントでありながら、想像以上に値は低く、Cs137が45.2Bq/kg、Cs134が7.74Bq/kg、セシウム合計で53.0Bq/kgという結果でした。うむ、これはうみラボ計測以来最低ということになりますね。

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富原せんせいによると、「一冬越えて海底の状況も変わったのかもしれない」とのこと。「何回か調査しないとわかりませんが、沿岸域の汚染は徐々に撹拌され薄まりつつ深場に移動しているので、原発前の海域でも同様なんだろうと思います。今、汚染水の問題で騒がれていますが、この数字を見る限りあまり影響してないようですね」(富原)。

確かに汚染水の問題は非常に心配されますが、海底土を見ていくと、今回の結果は非常に低いものとなり、海底土に影響を与えるほどの汚染水は出ていなさそうだ、ということが推察されます。しかし、ホットスポットも移動すると言われていますので、今回のデータをもってしてすべて問題なしということではありません。今後も継続して調査していきます!!


さて、今回のうみラボ、調査の標的をはっきりと「メバル」に設定しました。

というのも、メバルは、比較的浅い海域に住み、しかも移動が少ないので、原発事故直後からほかの魚種に比べて線量が高い傾向にあったんです。しかも20年近く生きる個体もいるので、原発事故後大量の放射性物質を取り込み、今なお生き延びているご長寿の個体が少なくない。そこで、メバルの動向を調査することで原発事故の影響を考察できるのではないかと考えたわけです。

ただ、船長によると、原発直近の海域の水温がまだ冷たく、まだ浅場にはメバルがやってきていないということで、今回は原発沖10km、水深50mあたりのエリアに移動し、サビキと呼ばれる仕掛けを使ってメバルを釣り上げます!! 

さあああ、釣るど!!  エイエイオー!!!!



釣り糸を垂らすと早速うみラボけんきゅう員の八木に当たりがぁぁ!!!

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なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!! 巨大ナマズかぁぁぁぁぁっ!?

と思ったら、マダラです。そう冬の味覚。鍋で、ホイル焼きでおいしい「真鱈」です。でもオラこんなデッケえマダラ見だごどねえ。こんなのスーパーでも魚屋でも見たことないっすよ? 全長1m近くはあったでしょうか、とてつもないマダラでした。

この日のためにリールを新調し、並々ならぬ覚悟で釣りに挑んだ八木。壮絶な格闘のすえに、見事この日の第一釣「巨大マダラ」をゲット! 888888888!!! 

(しかしこのあと八木は燃え尽き症候群のような状態になり、「オレ今日はもう釣りいいや」とか言って調査を放棄する始末。よほど満足感を得たのでしょう、その後しばらくボーーーッと海を眺めていました)




さて、その後の釣果はどうかと申しますと、もうすごかったです、マダラが。

うみラボアドバイザーの五十嵐泰正せんせいもマダラゲットーーーーー!!!

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同じくアドバイザーの津田和俊せんせいもマダラゲットでいい笑顔頂きましたーーー!!

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なんだろうこのマダラフィーバー

鍋何人前作る気だよ! と突っ込みたくなるようなマダラフィーバーでした。この日のうみラボには、万が一のために釣りの先生方にも参加頂いたのですが、先生方も続々とマダラを釣り上げてまして、もう船の上はマダラだらけ。メバルよどこ行った?

どうもですねえ、富原せんせいによると、試験操業で長く「禁漁状態」が続いたため、マダラが増えすぎちゃってるんだそうですよ。ただでさえ微妙な生態系のバランスが、試験操業によって漁をしていた頃とは別のものになっている。これは興味深いことです。

マダラを調査していると、胃の中からズワイガニなどが出てきたりすることがかなりあるそうで、事実、浜通り全体的にカニの数が減っていると感じている漁師もいるそうです。マダラが食い荒らしている可能性があるというんですね。

ううむ。

実はですね、タラという魚は「何でも食っちゃう」魚なんだそうです。食欲旺盛でとっても貪欲なので、なんと100種類以上もの餌を食べるのだとか。ちなみに「たらふく食う」という言葉は、文字通り「鱈の腹のようになるまで食べる様子」を表わしているそうです。

そうだったんだ! たらふく。なるほど!

さらにね、カニの仲間に「タラバガニ」っているじゃないですか! タラバ=鱈場、つまり「タラが多く棲息しているところ」で獲れるカニなので「タラバガニ」なんだそうですよ奥さん! 

いやあああ魚の話、面白いナァ。



はっ! 話を戻しましょう。

要するに、試験操業というのは事実上の資源管理漁業なわけですが、それによってタラの数が増え、生態のバランスに影響が出ていると言うわけです。漁業資源が豊かになり、それが100%喜ばしいことかいうとそうでもない。やはり適正に増やし適正に漁をするというのが、いいバランスなのですね。

ちなみにそのタラですが、すでに安全性が確認されており、試験操業の対象魚種になっています。ガンガン福島のタラを食べて、ズワイガニを守らなければなりません!!

で、今回の標的のメバルですが・・・・・・


釣れねえええええ!!!!!!

釣り糸を垂らしても、食欲が貪欲なタラがメバルよりも先に針に食いついてしまうんですね。そのせいで、メバルがいると思われる海域でも、まあ釣れない。タラしか釣れない。

というわけで、このポイントからは移動をします。船長によると、小良ケ浜沖に、メバルの釣れるよい漁場があるのとこ。早速この場から移動して、メバル狙いで再チャレンジします!!!

ではでは、メバルの結果については次回お送りするとして、先にマダラの放射性物質の計測結果をお知らせしておきます。



**** 計 測 結 果 ****

マダラ① 
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測定結果 ☞ Cs137 : N.D. / Cs134 : N.D.


マダラ②
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測定結果 ☞ Cs137 : N.D. / Cs134 : N.D.


マダラ③
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測定結果 ☞ Cs137 : N.D. / Cs134 : N.D.


ということで、3検体とも検出限界値以下というデータになりました。

今回は、この3検体以外にも、さらに2検体を計測して頂きましたが、すべてN.D.だったとのこと。体長から推察するとすべて3歳魚ということで「震災後に生まれた個体」だと推察されます。放射性物質がすでに希釈された海で育っているわけですから、まあ当然低いわけです。

富原さんによると、「マダラは大きくなりますが寿命は案外短く8歳。釣りで釣れるマダラは2〜4歳がほとんどだろうと思われるので、うみラボの調査で、今後マダラから10Bq/kg以上の放射性セシウムが検出されることはないだろう」とのことでした。

また、「冬場は浅場にやってきて釣りのターゲットになるマダラも震災前まではせいぜい100m前後くらいで、50m程度のとこでマダラが爆釣なんて今まででは考えられない」とのこと。かなり数が増えてきていることが推察されます。

さらにですね、タラという魚は3月〜4月にかけて福島県沖を移動し、その後北のほうへ長距離を移動する魚なんだそうです。ですから、原発事故直後に放射性物質を取り込んだタラが宮城や岩手まで移動し、その結果、震災直後に、宮城や岩手で線量の高いタラが見つかったわけですね。

しかし、今回の調査の結果、原発事故直近でN.D.。先にも申し上げましたが、福島県沖のマダラは試験操業の対象魚種であり、これまでの膨大な調査データを精査した結果、安全性が確認されているわけです。

今回のうみラボのデータは「原発沖10km」という比較的原発に近い海域であったにも関わらずN.D.でした。福島県や漁協、漁連などの関係各所が慎重に慎重を期して試験操業の対象に加えていることがわかります。本当に頭が下がります。

いやあ、それにしても、マダラがこんなに釣れるとは思いませんでした。本当はメバルを釣りたかったのですが、まあ、タラについていろいろ学ぶことができましたし、それはそれで大きな収穫だったと言えると思います。

何より、タラって体が大きいので、釣るには最高の魚です。わたしも1尾釣ることができたんですが、思わず竿を支える左の肩がプルプルいってましたよ。釣り上げた時の充足感は、今までうみラボで釣った魚とはまた違う格別のものがありました。

いやああ、楽しかった。

さて次回のうみラボブログでは、今回の調査の後編、メバルアイナメの調査結果についてお伝えしたいと思います。魚屋で福島のタラを見つけたら、ぜひおいしく召し上がって下さい。みんなでズワイガニを守りましょう!!

小名浜沖のイシガレイとクロソイを測ってみた件

こんにちは。魚の釣れない釣り師、うみラボけんきゅう員八木でございます。

さて、暖かくなってきたなと思ったらまた冬に逆戻り! みたいな安定しない日々が続いておりますが、今年ももう4月。すっかり春!新年度!という感じになってきましたね。

小松けんきゅう員が先日UPしてくれたように、うみラボも始動! 今年も1F沖調査も再開しました。春先はメバルを狙ってみよう! ということになっております。

しかしですね…実は私八木は「うみラボ釣りキチ担当」という事になってはおりますが、元々おかっぱり(船に乗らず陸からの釣り)専門でして、船の釣りは全くのド素人なのです。恥ずかしながら船用の釣り具なんて持ってません(だって高いんだもの)

いつもお世話になってる船長からは『船釣りとしては正直グレーゾーン(笑)』とまで言われる始末。さすがにこのままじゃいかん!うみラボの権威に関わる! ということで、うみラボで使用する船用のリールと竿、それとメバル用の仕掛けを買いにいつもの釣具屋さんへと足を運びました。

遊びじゃありません! これも調査の為なんですよ!(真顔


いつもお世話になっているトビヌケ釣具店に入るや否や「八木さん!魚ありますよ!」と店員さんから声をかけられます。

おお!そうでしたそうでした。

忘れちゃいけない『いわきの海で釣れた魚を測ってみよう企画』は依然として継続中なのです。最初は船を出さない冬の間だけの予定ではありましたが、釣具屋さんも協力してくださってるし、なにより「測ってほしい」という方が少なからずいる。まぁそれだけでも続ける意義はあるのかなーと思います!


さ~て今回はどんな「いわきで釣れる魚」なんでしょう!

というわけで今回お預かりしたのは『イシガレイ』そして『クロソイ』です。どちらも小名浜沖、船釣りで釣れた個体ということです。

おお! カレイ!

先日うみラボで企画したサイエンスバー『カレイナイト』でも紹介した通り常磐の海はカレイの宝庫なのです。

釣り人御用達のweb魚図鑑『ぼうずコンニャク』さんの魚図鑑
イシガレイ 市場魚貝類図鑑
にも福島産や茨城産が多いと書いてありますね~

さてまずはそのイシガレイ!
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そして結果!
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そしてクロソイ!
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そしてクロソイの結果!
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結果は、

イシガレイ       Cs137:19.9Bq/kg Cs134:N.D.
クロソイ(3個体合計)  Cs137:N.D. Cs134:N.D.

こんな結果が出ました。さて今回出た数値に関してもアクアマリンふくしま獣医、富原せんせいよりコメントを頂いております。

カレイは大きかったので少しでますね。産卵後で痩せていましたので50センチオーバーでも測定に必要な筋肉量の500gが取れませんでした。ですので参考値扱いです。

クロソイは3個体で測ってN.D.です。1Kgで測っているので検出限界も低いんですが、それでも数値は出てきませんでした。クロソイまで出ないとなると、なに測ればいいのやら…まあ、この手の根魚はムラがありますので、継続的な調査が必要です。

ということです。

また、富原せんせいが言うにはカレイは10歳は越えているとのこと。成長の速い若い頃は大きさで年齢がわかるそうなのですが このサイズだと断定するのは難しいようです。一方、クロソイは案外成長が早く35センチで3歳くらいだそうです。

ふむふむ、なるほど。

今までのうみラボの調査の結果から、今現在でもある程度数値が出るのは『比較的浅場に生息している魚』で『移動をあまりしない魚』に多く、それでいて『震災時既に成魚だった魚』に多く、上記に当てはまっても震災時産まれていない個体からはほとんど検出されないということがわかってきています。

また、先日のメバルの記事でも富原せんせいが仰ってましたが、最近のニュースでメバル放射性セシウムの濃度は加齢と関係するという福島大学環境放射能研究所の報告があったそうです。

そして、これはあくまでも個人的な意見なんですが、釣りをしていると良く聞く話で、川で釣れる1mを越すような超大型のスズキはヒレにコケが固着していたり、クロダイも大型の個体はフジツボみたいなのがくっついてたりするのがいるみたいです。

やはりどんな動物でもそうですが、歳をとるとあまり頻繁に動かなくなり、代謝が悪くなるのかなーと。うちのワンコなんて10歳超えたらほとんど散歩しなくなってきたし!

だから特にメバルやカレイのような『あまり移動をしない、且つ寿命が10年以上あるような魚』は大きければ大きいほど(歳をとればとるほど)、数値が出る可能性がある、というか、事故当時の放射性セシウムが排出されにくいのかな? などと感じます。

まぁあくまで一般の釣り人が感じたというだけなんですけどね(^^;

というわけで、今年の1F沖調査も始まりましたが、引き続き『いわきの海で釣れる魚を測ってみよう企画』は続けていこうと思います! よろしくお願いします!

第7回うみラボ 福島第一原発沖メバル調査レポ

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。

昨年11月の第6回を最後に海洋調査はいったんお休みし、けんきゅう員の八木を中心にした「釣り計測」を続けて参りましたが、つい先日の3月15日、4月以降のうみラボの活動方針を決めるための「試験調査」に行ってきましたので、その試験調査の結果も含めてレポートいたします。

※このうみラボ調査は、あくまで独立した有志団体による「独自の調査」ですので、出荷規制や試験操業の判断基準になることはありません。国や県の調査とはまったく関係なく「自主的に」行われております。それをふまえたうえでお読みください。

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東京電力福島第一原子力発電所沖で釣り調査中の八木けんきゅう員

久之浜漁港を出発して北に1時間ちょい。途中、広野火力発電所福島第二原子力発電所を通過し、福島第一原子力発電所に到着します。この日も粛々と作業が行われていました。ハッキリと目に見える変化はないようにも思えますが、しかしながら廃炉のための作業は続いています。改めて、現場で作業にあたる皆さんの無事の作業を祈ります。

そしてやはり気になるのが汚染水問題。第一原発の排水溝から高濃度の放射性物質を含む水が外洋に漏れ続けていながら、東電は10ヶ月近く公表せずに何の対策も講じていなかったことが先月報じられています。東電への不信感がますます募るわけですが、日々漏れ出ている汚染水が外洋にどのような影響を与えているのか。やはり実際に調べてみるほかありません。

そこで、今回の獲物は「メバル」です。

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メバルっちゃこういう魚。煮付けが最高ですよねー

メバルとは。▶日本の北海道南部から九州、朝鮮半島南部に到る海域に分布し、海岸近くの海藻が多い岩礁域に群れをなして棲息する。カサゴのように底にとどまらず、岩礁付近を群れて泳ぎ回るが、垂直に切り立った岩場に沿ってホバーリングするように立ち泳ぎすることもある。岩礁の間から温泉が湧き出ている海域では、温泉の上に集まって立ち泳ぎする姿も見られる。食性は肉食で、貝類、多毛類、小型の甲殻類、小魚などを捕食する。(wikipediaより)


なぜメバルかというと、比較的沿岸で泳ぐ魚で、しかもあんま移動しない魚なんですね。ですから、原発1〜2kmあたりの海域を泳いでいるメバルは、長期的に汚染水の影響を受けているとも言えます。やはり原発事故直後から「高い魚」の代表格のような魚でしたし、メバルの動向を継続調査することで、何らかの兆候や傾向を読み取れるのではないかと考えたわけです。

ところがね、皆さん、魚って1年中いっぱい釣れるかってーと、そうじゃないんです。

メバルは「春告げ魚(はるつげうお)」と呼ばれることもあるように、冬から春にかけて釣りシーズンを迎える魚なんですね。基本的には高水温を嫌う傾向があり、水温が15℃以下になる頃から水深の浅い場所でエサを穫るのだそうです。我々はそれを狙おうっちゅうわけです。

実は、福島のメバルといえば、釣りファンの人たちからはとても有名でした。釣り人口の多い関東などではすでに大型のメバルは数が減っているため、30cmを超える「尺(しゃく)メバル」を目指して、多くの釣り人が福島の釣り船に乗ったそうです。

メバル釣りに用いられるのが「サビキ」と呼ばれる、針がいくつもついた仕掛け。1~3メートル程の幹糸に3~12本の釣り針が木の枝のように付けられていて、その針にアミエビを模したビニールや魚の皮、鳥の羽などを巻きつけるそうです。魚がこのハリをエサと間違えて食いつくのだとか。

まあ、わたし詳しくはわかりませんけれども、ようはそのたくさんの針にいくつものメバルが一気に食いつき、弓なりにしなった竿を少しずつ引き上げていくところに、メバル釣りの醍醐味があるんだそうです。


さて、調査です。

本来はやはり原発1.5km沖くらいでトライしたいのですが、今の時期は水温が冷たすぎて原発直近にはまだ群れが来ていないようで、今回は原発からおよそ10kmほど沖の海域で釣りをしています。今回はあくまで「試験」ととらえ、水温の上がる4月以降、改めて1.5kmあたりのポイントを狙いたいと思います。

では、興奮を抑えつつ、粛々と釣りがスタート、の途端、爆釣!!

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すげえ、メバルだ。数珠つなぎで!! 30cm近い尺クラスがしっかりと釣れていきます。1本の竿に4尾も5尾もくっついてくるんですよ。私、海釣りはほとんど経験がないんですけれども、この重み、そしてこの興奮はやはり調査とはいえ禁じ得ないものがありました。いやあ、これはすごい。

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えらいゴツいメバルを釣り上げてご満悦の八木けんきゅう員

これが、釣り人が羨む「常磐の尺メバル」。かなりゴツい。

漁業資源の回復を実感する瞬間でした。試験操業とは事実上の「資源管理漁業」です。漁の自粛が続いている間に、メバルは大きく成長し、数も増えてきているのです。しかし、メバルはまだ試験操業の対象にはなっていないという現実があります。悔しいですね。ほんとうに。

メバルが解禁されれば「常磐の尺メバル」を目指して釣り人はかならず戻ってきてくれる。そこで、穫り尽くさないよう数を制限した上で釣りを楽しんでもらう。そんなサステナブルな釣りを福島から発信・啓蒙できるのではないか。そんな妄想も頭の中をかけめぐりました。

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メバル、サビキでガッツリ釣れるの図。いやあ、すごい〜!

やはり、実際に釣るという「身体的行為」を通して得られる実感というものは、なんと言うか「百聞は一見に如かず」的な説得力があるんですね。釣りの「楽しさ」を感じつつも、やはり一方では「悔しさ」もある。簡単には割り切れない感情を、船の上で共感、共有することも大事なんだと思います。

なにはともあれ、海は豊かですね。



さて、今回釣り上げたメバルですが、アクアマリンふくしまに持ち込み、放射性物質の検査も行っていますので、まずはこちらで結果をお知らせします。

まずは平均全長29.4cmの「尺メバル」。1尾だけでは計測に足りないので、3尾分の筋肉を使って計測しています。そして2番目のデータが小さめ(それでも25cm近い)のメバルを5尾使ったもの。この2つのデータで、メバルの動向を見ていきます。

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メバルが「11.2Bq/kg」、そして小さめのほうがなんとN.D.という結果でした。メバルといえばまず「線量が高い」イメージがありましたので、正直このデータには驚きました。もちろん釣り上げたポイントが「少し沖合」ということもあろうかと思うのですが、低いですね。計測をお願いしたアクアマリンの富原獣医は、次のように解説しています。

先日のニュースで、メバルの濃度は加齢と関係するという福島大学環境放射能研究所の報告が報道されていました。20年ほど寿命があるメバルは、震災後に流された汚染水の影響が最も残っている魚です。メバルの30cmは10歳以上、25cmは5歳以上と推定されるので双方ともに汚染水の影響を受けていたと思われますが、年齢が若いほど代謝が高く、放射性セシウムの排出が早いので、大きいほうは11.2Bq/kg(Cs134はN.D.)、小さいほうはN.D.という結果にも反映されているのかなと思います。


ただ、今回のメバルは拍子抜けするほど低いです。いろんな場所で原発前のメバルのデータを見てきましたが、5歳以上の個体は200~400Bq/kgほどあるという認識でした。ちょっと改めなくてはならないですかね。今回、低かった要因は原発前の海域でメバルが釣れるポイントが水深40~50mの深場であったことが影響したのだと思われます。原発の前でなくても、汚染水が流れたルートで、もう少し浅いポイントを探して釣れば、また違った結果になるのかもしれません。


なるほど。

メバルは10歳以上、つまり成長しきったメバルなんですね。したがって代謝のスピードも遅く、排出がなかなか進まないため、比較的高めになると。一方25cm以下は5歳〜と若く、代謝のスピードが速いため、排出が進んでいるのだそうです。

ヒラメのときもそうでしたが、個体の体長=年齢を見ることで、原発事故時に大人だったのか、あるいは生まれていなかったのかを知ることができました。同じ魚種でも、汚染の傾向が予測できるということですね。メバルにも年齢によって汚染の状況を予想することができそうです。これがわかったことは、うみラボとしても大きな収穫です。

しかし、富原先生がおっしゃるように、今回釣ったポイントは深場であり、浅場であれば汚染された個体が釣れるかもしれませんから、今回のデータをもってして「メバルももう安全じゃね?」などということは絶対に言えません。やはり継続して調査していくことが大事ですね。

メバルは、水温が高くなりすぎてしまうといなくなってしまうため、6月くらいまでが釣れる時期だとのこと。これに合わせてうみラボも、4月〜6月は集中してメバルを狙い、その汚染の状況を確認してみたいと思います。さらに「釣り」を拡充せねばなりませんね。

4月もがんばってレポートしたいと思います。

小名浜港でトゲクリガニを釣って計測してみた件

みなさんどうもこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。

冬の釣り調査は八木けんきゅう員に任せきりでしたが、ひと月ほど前の2月15日なんですが、私にも何か釣れるんじゃねえかと八木さんを無理矢理引っ張りだして小名浜港で釣り糸垂れてきました!! 遅ればせながら、今回はその模様をレポートします!!


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小名浜港。朝、7時。

さ、寒いいいいいいいいいいいい!

そして風強えええええええ!!!! 

もうですねえ、八木さんが隣で何言ってるかわからないくらいビュンビュン風吹いてて、釣りどころじゃない。こんなクソ寒いのに釣り人って釣りするんですか?

いやいやいや申し訳ない。釣り人である八木さんのおかげで冬期のうみラボの活動が続いているわけですからね、ほんと、八木太公望(釣りバカ)の功績はデカい。

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ご覧の通り、冬期のガチフル装備で獲物を狙う八木けんきゅう員。波の立ち方で風の強さがわかります


で、なんでこんな寒い日に釣り糸を垂れてるかというと、なんとですねえ、うみラボ、取材が入ったんですよぉぉぉNHKの!

ディレクターうみラボの普段の活動を取材したいので、なんか釣りとかやってる風景撮れませんか?
こまつわがりましたぁ! いつも釣ってますからちょろいもんすよ!(八木さんなら何かしら釣ってくれっぺや!)

ってな具合で非常に安直に取材を受けてしまいまして、それで八木さんにお願いをして釣りに出かけたんですけれども、聞いたらこの時期って1年で一番なんも釣れねえ時期なんだそうですね。しかもこの風。港全体が揺れるような波が出てましてね、これじゃあ魚たちも奥の方に引っ込んでるだろうなあと。

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アイナメ狙いで岸壁の底を突っついて歩く八木けんきゅう員

カメラ回ってますからね、アイナメ狙いで八木さんになんとか託したわけですが、、、
釣れねえええええええええええええええ!

いや、八木さんの力を疑ってるわけじゃないっす。この天気と、ディレクターの無茶な要求がダメなんすよ! (いやいや見通し甘過ぎたおれが一番だめなんですががが)


そんなところで、救世主登場!!! オレたちの富原せんせい!!!

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そして釣り竿をセットして間もなく、

釣れたああああああああああああああああああああ!!!!

カニゲットォォォォォォォォォォォォォwwww

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ちっせええええええええええええええええええwwwww!!!!

富原せんせいに伺うと、これは「ヨツハモガニ」というカニだそうです。浅場の岩礁帯なんかでよく見られる普通種で、身体の鉤型の毛に千切った海藻を着けてカモフラージュする擬態の名手。たしかに! なんとなく貝殻とか石ころに見間違えそうな甲羅です。

いやあ、ヨツハモガニですか。今まではただの「小さいカニ」だったのに、こうして名前が与えられてその生態なんかを教えてもらうと、なんだかかわいく見えてきますね。こんな小さなカニにもしっかりと名前があり、そして特徴もあり、暮らしがある。うーん、すばらしい。

でもね、あたしゃ許さないよ。釣果それだけでいいんすか!!! 


ということで、再び釣り糸を垂れる、八木けんきゅう員と富原せんせい。

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あっちのほうで釣ってみっぺ! みたいな感じで2人が作戦会議を行い・・・・

5分後・・・・・・。

キタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

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カニィィィィィィィィ!!!!!!!!

でけえええええええええええええええええええwwwwww!!!!!

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でかい! いかにもカニらしい迫力!!

しかも毛ガニじゃん! 小名浜産毛ガニ獲ったどぉぉぉぉぉ!!!

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これは、毛ガニなのか! 


と思ったら、これ「トゲクリガニ」というカニだそうで、小名浜港にいっぱいいるんですって。いやあ、おれ小名浜生まれ小名浜育ちですけど、こんなうまそうなカニがいるなんて知んにがったぁ! 富原せんせいによれば、小さいものはみそ汁に、大きいものは茹でて食うと絶品なんだそうです。青森県では名産品として広く食されているみたい。

(で、こうしたやりとり、すべてNHKのカメラに収められてしまいまして、「釣りの下手くそなうみラボメンバーがクソ風の強い日に釣ろうとしてやっぱり釣れず、アクアマリンの富原さんが来たらカニが釣れて、うみラボはどうしようもねえなあ」みたいな仕立てで番組が作られておりますので、どうぞ皆さんご笑覧頂ければ。4月5日のEテレ「福島をずっと見ているTV」だそうです。)

で、このトゲクリガニなんですが、富原さんたちが後日さらにいくつか釣り上げまして、放射性物質の計測に必要な分を足した上で計測してくれましたので、その結果をお知らせします。今回は「身」だけでは無理ですので、甲羅も含めて乾燥させ、それを砕いたもので計測をしています。

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で、計測の結果、納得のN.D.でした!!! 乾燥して量が減っている分、検出限界も少し高めですし、これじゃあ出ないよなという感じではあるのですが、そもそもカニやエビなどの甲殻類はセシウムを溜めにくい魚種でして、福島県沖ではすでに毛ガニ、ガザミ、ズワイガニベニズワイガニヒラツメガニが試験操業の対象になっております。もちろんすでに出荷もされています。

参考までに、直近の、県のモニタリング調査結果。いずれもN.D.でした。
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ですから、うみラボ的には「カニは出ない」ことはわかっていたのですが、こうして自分で釣って、そのうえで測ってみると、やはり安心感がありますよね。新聞やメディアなどでこうした調査結果は出てますけれども、やっぱり数字だけだとイマイチ実感がない。でもこうして実際に釣ってみる。魚の重みとか、その時の風の感じとか、いわゆる「身体感覚」として記憶されるというのが、かなり重要なんじゃないかと改めて気づかされました。

今年のうみラボ、この「身体感覚」に訴えるためにも、やはり「釣り」を拡充する必要があるかもしれません。ますます八木太公望が躍動しそうです。

サイエンスバー「カレイトーク」開催!

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。

冬の間は八木けんきゅう員の怒濤の「釣り計測レポ」をお届けして参りましたが、3月21日、約1年ぶりに「サイエンスバー」を開催しました。サイエンスバーというのは、まあ酒飲みながらいろいろ科学しようぜ的なイベントでして、今回のテーマは「カレイ」ということで、イベントのタイトルも「カレイトーク」。カレイの今をサイエンスします!

講師を勤めて頂いたのは、うみラボでもご支援頂いているアクアマリンふくしまの富原獣医。ご本人いわく「カレイはあんまり詳しくない」そうですが、ビシっと1時間近くお話しして下さいました。完璧なプレゼンも用意してくださり、まずは感謝申し上げます。

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さて、カレイと一口に言っても種類はさまざまで、日本には数十種類のカレイがいるそうですが、皆さん、福島ではどのくらい、そしてどんなカレイを水揚げしていたかご存知ですか? 福島県で水揚げされるカレイのうち、震災前の平成22年のデータをもとに水揚げ量の多いカレイを紹介すると・・・・

マガレイ        1022トン
アカガレイ       504トン
マコガレイ       294トン
ババガレイ(ナメタ)  244トン 
ミギガレイ(ニクモチ) 208トン
イシガレイ       204トン
ヤナギムシガレイ    159トン
メイタガレイ      67トン

カレイってこんなに水揚げしてたのね!!!

といった感じでして、震災前は全国でも有数のカレイの名産地だったわけです。マコやナメタは煮付けの最高峰、そしていわき名物ヤナギ干し、普段の食卓にも欠かせないマガレイやアカガレイや、干物が手頃なニクモチなど、福島の海にカレイはなくてはならない存在でした。

震災後は、地道な取り組みにより、試験操業の対象になったカレイもありますが、やはり魚種によって様々な傾向があるようで、例えば今回も富原せんせいから解説があったように、浅い海域に生息するナメタ(ババガレイ)などはまれに線量が高い個体が見つかるようで、試験操業の対象にはなっていません。

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逆に、深い海域で泳ぐような種類は、すでに安全性が確認されたものについては順次試験操業の対象になっています。たとえば沖合の底引き網で漁獲されるニクモチ(ミギガレイ)などは、試験操業の対象にすでになっています。同じ「カレイ」でも、生態や個体によって状況が違うんですね。おおざっぱなくくりではなく、細かく見ていく必要があるということです。


ちなみに、

今回のサイエンスバーでは、酒の肴として「ナメタの煮付け」を1人1切れ用意しました。県外産のナメタになってしまいますが、1人1切れですよ、贅沢でしょう! そしてこのナメタ、小名浜の老舗「サスイチ小野水産」さんの板前さんに仕込んで頂いたものなので、そんじょそこらのとはワケが違う。こういう贅沢な肴も、サイエンスバーの魅力の1つ!

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その魚を食いながら、その魚を学ぶ!! 情報の入ってくる厚みが違うんです。

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さすいちさんのオードブル。メヒカリの唐揚げが入ってるのがうれしい。

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丁寧につくられた大川魚店さんのおつまみ。これがまた地酒に合う。

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とよマルシェにあるウロコジュウで買ったイルカの煮込み。

でね、これで会費1500円ですよ。専門家の話を聞いて、ナメタの煮付け食ってお料理やおつまみ食べて、それで1500円。わたし値段設定間違ったんじゃないかと思うほど、サイエンスバーは楽しくおいしく、ついでに安く、漁業の未来を学べる場です。酒飲んでるので、皆さん盛り上がっちゃって即興的に質問も飛び出します。その雰囲気がいいんですよねえ。

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富原さんのような獣医さんや漁業関係者が持っている「専門的知識」というのは、その業界では至極当たり前のものかもしれませんが、私たちのような一般人からすればなじみのない話。しかし、やはりそれが何とも面白い。「福島県内」の人にとっては当たり前の情報が、他県の人にとっては「?」になってしまうところとよく似ていますが、やはり知ることは楽しいものですね。

ちなみにカレイの後は、小名浜の沿岸部にも生息しているらしいオットセイの話や、放射性物質についての詳しい話なども繰り広げられまして、いろいろ脱線しつつも、非常にいい雰囲気の中で学ぶことができました。いやあ楽しかった。

うみラボでは、このような「楽しく面白く学べる場」をですね、今後もいろいろと展開できればと考えています。イベントや企画の情報も、こちらのブログにアップしたいと思いますので、ぜひ折に触れてブログに遊びにきて頂ければと思います!

よろしくおねがいしますっ!!

火力吐き出しで釣られたクロダイを測ってみた件

ご無沙汰しておりました。うみラボけんきゅう員八木です。少しずつ暖かくなって春の訪れを実感する今日この頃です。

いわきの冬はそれほど釣りものが多くなく、堤防から狙えるのはアイナメメバルなどの魚種に限られてきます。特に2月〜3月頃は水温も低く魚の活性もいまいち高くないため、私みたいな人間は趣味といえども釣りをさぼりがちになってしまいます。

しかしながらいわきの釣り人はたくましい。例のトビヌケ釣具店から、魚が少したまりましたよと連絡がありました。この寒さの中でもやってる人はやってますね〜見習わなければ!!(口だけ番長)

今回、お客さんから預かった魚はアイナメ2匹と、クロダイだそうです。

おお! クロダイ!!

実はクロダイという魚種もなかなかに放射性物質が検出されやすい魚種でして事故後2年近く経った時期にかなり高い数値が検出されニュースにもなった魚です。持ち込まれた方もかなり大きい個体だったため、不安に思い、測定を依頼してきたようです。

その大きさなんと50cm弱!!かなりの大物です。さすがに事故以前産まれの個体でしょう。もしかしたら少し高い数値が出るかもしれません。

釣った場所はどこですか? と聞きます。

そうです。そちらも重要。決して人様の釣った場所の情報を得ようとしてるのではございませんよ!!(白目

この大物クロダイ、「火力吐き出し」で釣れた個体のようです。

火力吐き出し。いわきの釣り人には定番の場所なのですが、ブログをご覧の方の中にはご存知ない方も多いでしょうから説明致しますと、いわきの南部、鮫川の河口にある「常磐共同火力発電所」の「温排水吐き出し口」なんですね。

そうなんです。温排水が流れ出ているために、この吐き出し口周辺は水温が少し高く色々な魚が集まってくるのです。特に冬場は顕著で、今回釣れたクロダイやらヒラメやら、それとそれらを狙う釣り人なんか温排水に寄ってきます(笑

また南方回遊系で死滅回遊魚と呼ばれる魚(春から夏に黒潮に乗って幼魚がやってきて、冬を越せずに死滅してしまう魚)も集まります。俗に言うメッキアジとかそういうやつです。結構いろんな魚が冬に釣れたりするので人気スポットなんですね。


さてさて、そんな「火力吐き出し」で釣れたクロダイ。どれくらいの数値が出るんでしょう。とても気になります。。。

はい。そいうわけで結果です。今回もアクアマリンふくしまさんに測定を依頼しました。

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なんとN.D


そしてアイナメ。こちらは少し1匹では量が足りなかったためあくまでも参考程度にとの事です。

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こちらもN.D。アイナメは今までもかなり測ってきていますがほとんどの個体がN.D~数Bq/kgですね。



さて、クロダイの結果についてですが、今回もアクアマリンふくしま獣医富原先生にコメントを頂いております。

富原せんせい曰く

クロダイはまれに100Bq/kg超える個体が出る魚ですが、小名浜近傍のクロダイは低い傾向です。
クロダイに関しては原発より北の海域、たとえば仙台湾でも100Bq/kgを超えるような個体が見つかることがまれにあります。
ある時期にまとまって仙台湾で漁獲されるとのことから、仙台湾クロダイの繁殖海域になっている可能性があり、まれに100Bq/kg基準を超えるクロダイが見られることから福島県北部に生息するクロダイの繁殖海域も仙台湾なのかもしれません。
小名浜周辺のクロダイの数値が低いのは福島県北部のクロダイの繁殖海域と異なるのかなぁと勝手に推測しています。


なるほど!

そういった繁殖地域がどこかなどの関係もあるのかもしれません。さすがにそこまでは考えた事もありませんでした。クロダイは宮城などの一部地域でも出荷制限がかかってるところがまだあるのでそういった可能性もありそうですね。

またその宮城県にいらっしゃる津田せんせいからは次のようなコメントをいただきました

津田せんせい曰く

クロダイは昔から初夏の産卵時期のノッコミの時は名取市閖上の防波堤から釣れていたのですが、10年ほど前からちっこいのが金華山付近の定置網にかかるようになっています。おそらく温暖化の影響でどっかの根に居付いているんだろうと言われてます。


なるほど。温暖化等の影響もあって県北のクロダイも北に行ってるのかもしれませんね。

しかしながらこの50cmにもなろうかというクロダイがN.D。でもやはり1匹だけではまだ判別出来ないのでもう少し個体が欲しい所です。

そうそう、それと釣具店の方から嬉しい報告がありました。実はこの地元釣具店「トビヌケ釣具店」さんもうみラボ1F調査に何度か乗船してくださってます。私たちうみラボの活動に深く共感してくださり、トビヌケ釣具店さんでもこういった地元の魚についての放射能量などの調査、情報発信をHPや店頭等で行ってくださるそうです。

自分たちの好きな事は自分たちで知る、調べる、発信する。必要な所にはまだまだ必要な事かもしれません。まあ、あまりしゃっちょこばらずにボチボチと楽しみながらやていければいいなと思います!

ではまた!

BIGアイナメ3連続測定結果

今回もうみラボけんきゅう員、八木からの報告です。

今年も早いものでもう2月ですね。寒さが厳しい季節ですが、いわきは例年に比べると比較的暖かい日が多い感じです。

そりゃあ釣りも捗りますよねー。

・・・・・・。

ごめんなさい、捗りません! 暖かめとはいうものの、寒いものは寒いのです! もちろん今回のBIGアイナメも私が釣ったものではございません!!!(ドヤァッ)

というわけでですね、今年1月に釣れたいわき近隣のBIGアイナメの測定結果を3連発でお知らせ致します。

まずは1匹目の調査結果。こちらはうみラボでもおなじみのアクアマリンの富原せんせいが見事江名のテトラ帯で釣り上げたものです。なんとその大きさ48cm!

ビール瓶サイズとは良くいいますがこれはもう一升瓶サイズといっても過言ではありません。思いっきり自慢されました(笑)。が、これは自慢しても良いサイズですね。そうそう釣れるもんじゃございません!

さてここまで大きいとなるとやはり気になるのは放射能量。以前こちらでも書きましたが、アイナメに関してはサイズが大きいものほど放射能量が高くなる可能性が大きくなるそうです。果たしてどうだったのでしょうか。

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結果はCs-137のみ7.24Bq/kgという結果でした。この結果自体色々な受け止め方というものがあるとは思いますが、あくまで私の個人的な感想としては「思っていた以上にかなり低い数値」でした。

この前のスズキの様に30Bq/kg位、もしくはそれ以上はあるのかなと思っておりました。以前釣った35cmのアイナメと同程度ですね。富原せんせいは「まぁ、だいたいはこんなもんでしょう」と言っておられました。

続きまして2匹目。こちらはいわき市小浜港で釣れたという40cmのアイナメで、トビヌケ釣具店に持ち込まれたものです。40cmの大きさですと1匹で測定する際に必要な「筋肉部分のみ500g」がとれるか微妙との事だったのですが、アクアマリンスタッフの方が丁寧に捌いて骨についた身の部分までキレイに削ぎ落してくださったようで1匹で測定が可能になりました。ありがたいことです(感謝)

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コチラは40cmの大きさにも関わらずN.Dでした。


どんどん行きます3匹目! こちらは北茨城市大津港の40cmアイナメ福島県ではなく南の茨城県ですが。いわきの釣り人にとって大津港は身近なところなんですよー。

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コチラもN.D。40cmのアイナメがどちらもN.Dという結果になりました。いわき近隣の堤防から釣れるアイナメ、40cm以上の大型のものでもここまで下がっていたんですね。

うみラボでも何度か取り上げましたが、アイナメはあまり移動しない魚であるため、生息している場所の環境にかなり依存しているのでしょう。

ということは、逆に考えると、ある堤防で釣れた大型アイナメのほとんどがこの程度の数値(N.D〜10Bq/kg)ならば、そこで釣れたアイナメはまず大丈夫なのではないかという推測も成り立つのかもしれません。もう少し検体を増やしてみたいところですが、いわきで釣れる魚で食品基準値の100Bq/kgを超える魚を見つけるのは至難の業かもしれません。

しかしながら、ここまで数値が下がっているにもかかわらず、未だアイナメ福島県の試験操業対象魚にはなっておりません。漁業関係者の方が対象魚をむやみやたらに拡張せず、もの凄く慎重に対象をセレクトしていることが良くわかりますね! 漁業関係者の方の苦労には本当に頭が下がります。

ということでいわきで釣れたアイナメの測定結果でした。また測定したらコチラで報告いたします!