いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

小名浜沖94cmのスズキを計測してみた件

うみラボの八木です。

記事の更新が少し遅くなってしまいましたが、アクアマリンふくしまさんに依頼したスズキの測定結果が届きましたのでご報告です。

前回の記事にも書きましたが94cmというのはスズキでもかなり「大物」の部類です。スズキという魚は出世魚としても知られており一般的には
40cmぐらいまでをセイゴ
50cm前後をフッコ
60cm以上をスズキと言う所が多いようです(※地方により若干異なります)

一般的には1年で20cm前後、2年で30cm前後に、3年で40cm前後になると言われます。コレもまた地方によって若干異なり、南の方ほど成長は早く北に行くほど成長は遅くなるとも言われているようです。

スズキになるまでには4〜5年、80cmともなると10年近くかかるそうです。メータークラスになると更にそれ以上の月日が必要になってくると…。なるほど…レアな訳です(ため息


さて、そんなスズキですが、以前に一度アクアマリンさんで測定をしていただいたことがあります。私は去年裏アクアマリンツアーというものをやっていたのですが、その第二回裏アクアマリンツアーの際、アクアマリンの方が釣ってきてくださったスズキを測ってその場でいただいたんですね。

(詳しくはコチラ→http://togetter.com/li/722082

この時は70cmのスズキで結果はN.D.でした。かなり大きめの個体だったので少し検出されるかなと思っていたのですが、いわきのスズキはそこまででもないのかなという印象を持ちました。

しかし今回測定してもらったものはそれをはるかに超える94cmです。どのくらいの数値だったんでしょうか。それでは結果です。

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Cs-134とCs-137合算で29.8Bq/kgという結果でした。

やはり大型の個体にはそれなりにセシウムが残っているようですね。今回もアクアマリンふくしまの富原獣医にコメントをいただいております

スズキの98cmは大物ですね。アクアマリンの同僚も去年、同サイズを釣ったのですが食用にされてしまい測定できませんでした。まあ、自分で釣った魚は多少、セシウムが入っていても食べたいのが釣人の心情ですかね。今回のスズキは30Bq/kgほどでしたが、100Bq/kgをひょっとしたら超えるのかなと思っていただけに、食品的にはいい意味で期待を裏切ってくれました。研究者的にはちょっと残念ですが(笑)。

震災直後の2011年は、水族館前で釣ったスズキで2000Bq/kgほどありましたので、それに比べたら相当低くなりました。たぶん、この個体も2011年の頃には数千Bq/kgあったんでしょうが、4年弱経った今ではこのレベルにまで下がるんでしょう。現在ではいわき周辺の海魚で100Bq/kgを超える魚を見つけるのは至難です。

なるほどなるほど。

やはり事故直比較的高い数値であったたスズキも4年という時を経てここまで下がってきているという感じなのでしょうか。それとやはりですが、「個体差」も大きいようです。スズキは移動する魚ですし、個体により餌のか好みなんかもあるらしいです。

大量の汚染水が海に流されていた時に「何処にいて」、「何を食べていた」のが重要なんでしょうね。「震災前生まれの魚にはセシウムがある」という表現よりは「震災前生まれだと線量があることもある」っていうほうが正しい表現なのかもしれません。


さて、この結果を持って釣具屋さんに報告に行くと「あ、それぐらいなんですか。大きいから100Bq/kg超えると思ってましたがそうでもないんですね!」と仰ってました。

私的には思ってたより若干高い数値かなとも思ってたのですが、人によって『想像していた数値』が違うんだな。と感じました。「実際に測ってみる」と、やはり色々と分かったり感じたりすることが多いんだなと改めて感じましたね。

また、店員さんに持ち込みありました?と聞いたのですが、あれから測ってほしいという依頼はなかったようです。「4年も経って家に持ち帰って食べる人もかなり多くなりましたからね。それでもまだ大丈夫?と聞いてくる人はいるのでまたよろしくお願いします」とのことでした。

うんうん。釣った魚を持ち帰って食べる人が多くなってきたのは本当に喜ばしいことですね。それが今まで通りの日常、普通のことですもんね。

寒いのでなかなか釣り場に足を運ぶ機会はありませんが、また魚を測ったらコチラで報告致しますね!

釣具屋さんに持ち込みされた魚をアクアマリンに持っていった件

うみラボけんきゅう員八木です。

うみラボでは船を出さない冬の間、いわきの堤防から釣れる魚を測ってみようという試みを行っております。もっと身近なもの、生活に密着した「いわきの魚」を測ってみてどのくらいなのか調べてみようということですね。

あまり海になじみが無い方はピンとこないかもしれませんが、海に面したここいわきでは、山にきのこや山菜採りに行くのと全く同じ感覚で「釣り」というものが生活に密着している人も多いんですね。

また、釣りというものは結構「情報戦」みたいなところがあって、その年のその季節、どこでなにが釣れてるか釣り人同士で情報交換したり、釣具屋さんなどで情報を仕入れたりすることが多かったりもします。

あくまで私の個人的な思いなのですが、その「情報」のひとつに「どの魚」が「今」「どれくらいの放射能量があるか」というものがあっても良いかなーなんて思っております。

と、いうわけでですね、先日釣具屋さんにその旨を話したわけですが、その釣具屋さんに年明けに買い物に行った所「魚、少し集まってますが持っていきます?」と声をかけられました。

おお! 早速! ありがたいことです!

店員さんが奥の冷凍庫からカッチンカッチンに凍った魚を出してきてくださいました。
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カチンコチンなのであまり良く判別出来ないかもしれませんが大きいものはヒラメ。照島近辺で釣れたものだそうです。

小さめなのはアイナメ30センチ前後のもの4〜5本と35センチ前後のもの2本。こちらは大津港で釣れたものだそうです。

大津港というのはいわき市の港ではありません。いわき市のすぐ下、茨城県の最北、北茨城市にある港です。県外ということになりますが、私も良く行くいわき市の釣り人にはなじみ深い港です。アイナメは今の所小名浜周辺よりも北茨城方面の方が調子が良いみたいですねー。

「いわきの魚」ではありませんが、せっかくだからとアクアマリンに届けることになりました。

そうそう、「測定」してくださるのが「アクアマリンふくしま」ということも大きいですね。「アクアマリンで測ってもらうんですよ」と言うとすんなり受け入れる方が多いそうです。それほど「アクアマリンふくしま」という存在はいわきの人にとってなじみ深いもので信頼のおける機関なんなんだなと改めて実感します。

そしてまた数日後また面白いモノがあると聞いて釣具屋に行った所出てきたのがコレ(笑
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94cmのスズキ!!!!!! でけぇええええええ!!!!
小名浜沖で船で釣ったものだそうです。

コレは面白いですね。

スズキという魚、ルアーマンからは「シーバス」と呼ばれそのファイトっぷりからルアーフィッシングの対象として人気のある魚です。

また出世魚としても知られ、セイゴ→フッコ→スズキと名前を変えます。なかでも80cm以上のスズキは釣り人から「ランカー」と呼ばれ自慢のできるもの。ましてや1m超えはテングになっても許されるような代物なのです(笑

そしてヒラメやアイナメと同じように原発事故直後は国の基準値を超える100Bq/Kgを超える個体も多かったため未だに福島県では出荷制限がかかっている魚でもあります。また、スズキはアイナメ、ヒラメなどの「底物」とは違い比較的移動をする魚ではあります。しかし「ブリ」や「カツオ」などの南方回遊系の魚とは違い、近海、すなわちこのいわき近隣を回遊している魚です。

また個体によっては磯場や汽水域にずっと居着いたりする魚もいて、「個体ごとに大きく数値の異なってくる魚」なんですね。94cmともなれば震災時成魚だったことは間違いなくどんな数値が出るか非常に興味深いですね。



さてさて、と、いうことでアクアマリンふくしまより、先日持ち込んだヒラメとアイナメの測定結果が届きました。

さっそくご紹介
まずはヒラメから
釣った場所はいわき市照島近辺
57cmとかなり大きな個体ですので震災前産まれ、震災時には成魚だったと思われる個体です。
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結果は見ての通りCs−137のみ6.63Bq/Kgという結果でした。
Cs−134は半分弱として合算10Bq/Kgといった所でしょうか。

今までのうみラボの1F沖のヒラメの測定結果を見てもCs−137が検出されるのは50cm以上の個体がほとんどです。
やはり震災時成魚だった個体ですので当時の影響が微量残っている。といった感じでしょうか。
なるほど。この辺のヒラメもこの大きさの個体はこんな感じなのかな?
1匹だけではまだまだわからないのでもう少し検体を確保して測ってみたい所ですね。

続きましてアイナメ
こちらは北茨城市大津港。いわきからほんの数km南にある港です。
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まずは小さめの個体4匹合計で測った結果です。
こちらは4匹の平均全長が31.3cm。

結果はN.Dです。
以前富原さんが仰ってたのですが常磐アイナメは35cm前後より小さい個体が震災後産まれだとの事です。
平均30cmほどのアイナメは震災後産まれなのでしょうか。やはりN.Dという結果になりました。


そしてまたアイナメ。釣れた場所は同じでこちらは2匹で測定。平均全長は34.7cm
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結果はCs-137が5.63Bq/kgとこちらはわずかですが検出されました。
先ほども書いた通り、35cm前後が震災前産まれか震災後産まれかの基準になってくるようで検出されるかされないかの目安になってくるのかなという結果になりました。
しかし検出されたといっても検出限界ギリギリのごく微量な数値でした。ずいぶん減ってきてるんだなという感じですね。

アイナメに関してはアクアマリンふくしまの富原せんせいにコメントをいただいております

富原せんせい「35cmのアイナメは3~4歳ですので少しでますね。現在は検出されるとしたら35cmで10Bq/kg前後、40cmで20Bq/kg前後、45cmで30Bq/kg前後って感じではないかと思います。まあ、放射性セシウムが検出される個体のほうが少ないです。100Bq/kgを超えるのはここ、しばらくは見てません。50cmのビール瓶ならひょっとして…。誰か釣ってきてくれませんかね~。」

だそうです。
そういえば年末に私が小名浜で釣ったアイナメも35cmでした。
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この個体も0〜10Bq/kgくらいだったのかな?と思います。全てがこの法則に当てはまるとは思いませんが、『だいたいこれくらい』という目安にはなるのかな?と思います。
しかし50cm以上のビール瓶(というより一升瓶?)サイズのビッグアイナメはどれくらいの数値が出るんでしょうかね。是非ともゲットして測ってみたいところですね!

小浜港でイシモチを釣ってみた件

前回の記事からの続きです。

小浜港で「イシモチ」が釣れてるとの情報をキャッチしましたが、はて。

「いつもこの時期になると小浜に集まってくるんですよ震災後から毎年釣れてます」と富原せんせい。

そうなんですか!

私の記憶では「常磐の海のイシモチシーズン」は春〜初夏だった記憶がありましたが(新舞子海岸や勿来海岸で良く釣れる)この時期にもイシモチが釣れるんですね。そういえば確か以前そんな話を釣り友達から聞いたことがあったかも。

小浜港も震災で大変な被害を受けたところですが、その時に湾内が洗い流され、底がほとんど砂地になったためにイシモチが入ってくるようになったのではないかと。

しょうがない! イワシ2匹ではかっこつかないからイシモチ行ってみっか!

というわけで小浜港に到着です。
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この小浜港は小名浜より少し南にあるとても小さな港です。奥の方では未だに港内を修理しているのがうかがえます。

辺りを見回すとルアーマンがちらほら。イシモチが釣れてるというのは嘘じゃないようですね。

ん? しかし皆さんどこかぎこちない? とりあえずお話を伺い、見よう見まねこんなワームでイシモチ狙ってみます。
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……

………

しばらく竿をふってみましたが全くの無反応。そして底がかなり浅いことを再確認。ほんと浅い。水深5m無いのでは…。こんな所で魚がほんとに釣れるのかと不安になります。

色々試していると、先ほどお話を伺った方が「アタリあっけ?」と声をかけてくださいました。そして「しかしあんちゃんは上手にルアー投げるなぁ。どうやって投げてんだ?」「糸は何号なんだ?」となんか逆に色々聞かれるはめに(^^;

見た目60〜70前後でしょうか、この方、以前は餌釣りオンリーだったけども、ここでルアーでイシモチを釣ってる人を見かけて、1ヶ月ほど前にルアー装備一式を購入して始めたばかりだとか!

「俺たちはみんなまだぺーぺーだから(笑)」と照れくさそうに笑います。(ん?俺たち?

よく見ると周りの方も皆さん同じ年齢ぐらいの方ばかり! 「今日はいくつ釣った」「さっき大きいのに糸切られたんだ」などなどと楽しそうに話してます。

すっげーーー! なんか超楽しそうだしかっこいいぜおいちゃん達!! いくつになっても新しいことにチャレンジ出来るって素敵!

ちょっと皆さんとお話ししましたが、ほんっと皆さん楽しそう。満面の笑顔。これが今まで通りの極々普通の光景、当たり前の光景なんだよなとしみじみ思いました。

そこでこの素敵なおいちゃんたちに今日釣ったイシモチを見せてもらいました。
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なかなか良いサイズ! しかも数釣りも出来るんですね! 魚が釣れたと分かれば俄然やる気が出てしまうのが釣り人のサガ。


しかしその後もの凄い強風と寒さのため、1匹だけ釣ってあえなく撤退。

無念…。

この日の釣果、
イワシ2匹イシモチ1匹。

簡単にイワシとイシモチが釣れるよ! ってのが今回の記事の見どころだったのに!!

なんということでしょう。





しか〜し、そのあと友人から電話がかかってきたのでリベンジで深夜また小浜に出撃!!(え
だって悔しいじゃないか!(アホ

気温0℃の中、なかな良いサイズのイシモチが釣れました。
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さて、このイシモチ、良く見ると傷を負ってる個体が多いことに気付かされます。これは誰にやられたものなんでしょうか。

実は犯人は『ウミウ(海鵜)』だそうです。

この日は見る事が出来ませんでしたが、日中小浜港に行くと、浅瀬に入ってきたイシモチを上手に捕える『ウミウ』が見られるそうです。そしていわきにはこのウミウの生息地として天然記念物に指定されてる場所があるんですよね!

それが小浜港から少し北に行ったところにある『照島』です。震災以前はサンマリーナから良く見えましたね。観光サイトにも紹介ページがあります
照島のウミウ | いわき市観光情報サイト

いわきの海って本当に奥が深い。知れば知るほどにいわきの海が好きになってしまいますね。



さて、このイシモチなんですが前日250匹釣ったという富原せんせいにいつものように測定をしてもらっております。まずはその結果から

〜富原せんせいのコメント〜

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ニベの測定結果を送りします。まあ、NDです。ニベは比較的線量がでやすい魚だったんですが、この2年は出ませんね~。昔はゴカイ類がメインの餌だと思ってたんですが、浮いているニベが浮いているワームに食いつくところを見ると、魚食性も強そうですね。

ニベは比較的放射性セシウムをためやすい魚で、原発事故の2年後くらいまでは、現在の食品の基準値である100Bq/kgを越すような結果もしばしばありましたが、我々の昨年度の検出限界以下か相当に低い結果になってきていて今はほとんど出ていません。世代交代したせいでしょうか。海が着実に奇麗になっていることを実感させてくれる魚ですね。

ということでした。

あれ? ニベってなに? イシモチではなくて? どういうこと???
と思った方も多いでしょう。

今までイシモチイシモチと散々書いてきましたが、「イシモチ」という標準和名の魚は実はいないそうです。イシモチは耳石と言われる聴覚器官が発達しておりこれが『石持ち』の名前の由来になっているそうです。
【イシモチの耳石】
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しかし、正式には「シログチ」という魚と「ニベ」という二種類の魚がいて、その総称が『イシモチ』だそうです。この2種類の魚、非常に似ているため一般には「イシモチ」という名前で一緒に扱われておりますが、実は常磐の漁師はちゃんと区別しているそうなんです!

シログチはウロコが剥がれやすいため「ハダカイシモチ」という名で干物にして売られており、干すと淡白な白身の旨味がギュッと濃縮されて美味しくなると言います。

一方、釣りで釣れるのは「ニベ」が多いそうです。「シログチ」より沿岸性が強いからではないかということで、コチラは刺身が美味いそう。

なるほど。

イシモチって「シログチ」「ニベ」という二種類の魚の総称なんですね。また勉強になりました。

というわけで釣ってきたイシモチは今回も美味しくいただきました。イシモチというと「塩焼き」なイメージでしたが、刺身も淡白で上品。「クセの無いスズキ」みたいな感じでとても美味しかったです。皆さんも「ニベ」を食べる機会があったら是非お刺身で食べてみてください!

ではまた!

小名浜でイワシを釣ってみた件

皆さん明けましておめでとうございます。うみラボけんきゅう員、釣りキチの八木です。今年もボチボチとうみラボ頑張って参りますのでよろしくお願いいたします。

さて、以前の記事の続きです。

12月中旬の話になってしまいますが、イワシ大爆釣の報を受け、週末小名浜に向かいました。毎年この時期になると小名浜港にはイワシの群れが入ってきて簡単にサビキで釣れるんです。今年もそういう季節がやってきたんですね(しみじみ)。

早朝アクアマリンがある2号埠頭へ。先の記事でサヨリを釣った先端ではなく車を止めてすぐの場所です。こんなところがイワシポイントだとか。さすがに朝は冷え込むので(この日気温1℃)人は少なめですが数人の方がもう釣っております。

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早速サビキを用意します。

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餌は「アミ」と呼ばれる小型のエビです。これを巻いて魚を集めサビキという疑似餌で小魚を釣る訳ですね。

また「サビキ」は小魚(イワシやアジ等)を釣るのに最も優れた釣具と言われ世界中の漁師や釣り人に「SABIKI」として親しまれ使用されてるそうです。

グローバルスタンダード!SABIKI!!


そんな世界に誇るSABIKIで簡単にイワシゲット!

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サビキは初心者にも簡単に釣れて楽しい。またイワシやアジ等美味しい魚がたくさん釣れる。こういうところが世界に愛される秘訣なのですな。勉強になります。SABIKIは偉大なのです。

しかしながら!なぜかこの後が全然続きません!(哀

「昨日は釣れたんだけど…」。隣の方が呟きます。釣りでは良くある光景ですね。はい。私はいつもこんな感じです。昨日釣れたからと言って今日釣れるとは限らない。世界のSABIKIでも魚がいなければ釣れないのです(涙

さて、このイワシ、先の記事にも書いた通りN.D.だったそうです。

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回遊系の魚で一カ所にはとどまらず、ずっと広い海を移動する魚です。またイワシは3〜5年が寿命だそうで、震災時成魚だった個体が残っていそうですが、それは水族館等で飼育してる場合がほとんどで、野生のイワシ(これなんか言葉が変な気がしますがw)は、ほとんどの個体がその前に魚食性の強い魚に食べられてしまうそうです(泣)

魚に弱いと書いて鰯。なるほど。そういえばヒラメを釣る時もイワシが餌でしたね(^^;

と、なると、前回のサヨリ同様『回遊性が強く』『(魚食性の強い魚の餌になるような)サイクルの早い』魚はかなり安全性が高いのではないかという事になるんでしょうか。

さて、そんなこんなでこの日はその後お昼頃まで粘ったのですが釣れたイワシは結局たったの二匹(哀

そんなダメダメな私に追い打ちをかけるがごとく富原せんせいがお昼休みに様子を見にきました。「駄目ですよ〜、釣れない日に来ても。釣れてる時に走って来ないと(満面の笑顔)」。いやいや待てw職場が目と鼻の先の人にしかそれは出来んだろw

「釣れないイワシよりイシモチなんかどうです?昨日小浜で150匹も釣っちゃいました。日中もワームで釣れるみたいですよ」と富原せんせい。

なにぃぃっぃ!今度はイシモチだと!!なんですかこの試練は!

しかしさすがにイワシ2匹ではカッコつかないのでそのまま小浜港に向かう事になりました。

(次回イシモチ編に続く
(ちなみに年末もイワシはそこそこ数は出てたようなのでまだまだチャンスはあるようです)

小名浜で釣ったアイナメとドンコとマイワシを測ってみた件

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の八木です。

今回もいわきで釣れる身近な魚とその生態、そして現在の放射能量などをお伝えする「いわきの魚を測ってみよう」企画です!!

と、その前に・・・・

先日NHKの「はまなかあいづToday」と「おはよう日本」でうみラボの取り組みが紹介されました。皆さん見て頂けましたでしょうか。あまり上手に話せませんでしたが、なんでこんな事を始めたのかなど、そういった思いとかを感じていただけたら幸いです。

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そして、その放送を見てくれた釣り友達から「八木ちゃん、見たよ!!」と連絡を貰いました。
「ツインパワー(リールの名前)のキャップ取れてんぞ!(笑)」
「相変わらずフローティングベストきったねぇ!(笑)」
「あれ?セルテート(リールの名前)買った?」

などなど色々な感想・・・・。

違うお前らそこじゃない(真顔)

そんな友人達もですね、この「測ってみよう企画」の話をした所、みんな興味を持ってくれました。「実はまだ根魚震災以降食べてないんだよね」「食ってるけどやっぱ気になるよね」「俺は食ってるけど子供には食べさせてないんだ」と様々な思いを抱えているようです。

私がうみラボでわかってきた事を話すと、皆「そうだったんだ」「そんな事今聞くまで全然知らなかったよ」と話していました。

そんな流れで「ロックフィッシュダービーもあるからこの冬はみんなで根魚釣っぺ」と協力してくれることに。持つべきものは釣り友達ですね

ん…ロックフィッシュダービー…だと…?

それや ( ̄▽ ̄)!

毎年この時期になると、地元の釣具屋で「ロックフィッシュダービー」なるものが開催されます。アイナメやソイなどの根魚を対象に、釣具屋に釣った魚を持ち込み大きさを計測して「誰が一番大きい魚を多く釣るか」のコンテストみたいなモノです。

これってば検体の宝庫じゃないですか!

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早速地元の釣具屋「トビヌケ釣具店」に。

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そしてこれが「ロックフィッシュダービー」の概要です。釣具店店長に「測ろう企画」のことを話すと「わかりました。持ち込みしてくれた人に測定して貰いたい人がいたら冷凍して保存しておきますね」とのこと。

この釣具店、震災後1年くらいは、アクアマリンに魚を持ち込んで魚の測定をしてもらっていたみたいですが、最近は釣り人も戻ってきて忙しかったりとなかなか持ち込む機会がなかったようです。それでも「根魚はまだ…」という方もいるらしく、「こういった取り組みは大歓迎です。どんどん言ってください。協力します」と嬉しいお返事をもらいました。

また、このうみラボの記事を読んでくださった方で、釣った魚の数値が気になるという方がいらっしゃいましたらロックフィッシュダービー関係なく「トビヌケ釣具店植田店」まで持ち込んでくださって大丈夫です。釣具店に保管したのち私が責任を持って「アクアマリンふくしま」に持ち込んで測定いたしますね。

こんな感じで地元の釣り仲間や釣具店にも協力してもらい「海に関する様々な情報」を共有していきたいなと思います。

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というわけで早速友人がアイナメとドンコを釣ってきてくれました!

で、アクアマリンに持ち込み測定してもらった結果がコチラです

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富原せんせいからは、以下のようなコメントを頂きましたので、参考に載せておきます。

アイナメは量が足りなくて350gで測定しました。そのせいか分かりませんがCs137はN.D.、Cs134は10.8Bq/kgとなりました。Cs134は誤差が±9.14Bq/kgでしたので、予想ではセシウム合計で4-5Bq/kgですかね。量が足りないとたまにこんな結果になります。ドンコは480gで少し足りませんでしたが、これぐらいなら問題ありません。結果はN.D.です。

ちなみに富原さん、マイワシも釣って計測していたようで、参考までにそちらの結果も。
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まあ、N.D.です。昨日の満潮前数時間から潮止まりまで入れ食いで、150尾ほど釣れました。今日も見ているとたくさん釣れていました。

ふむふむなるほど。ちょっと量が足りなかったようですね。そしてアイナメは一個体が35cm近くあったのでその影響か「ごく微量」ですが検出されているようですね。ドンコは小さい個体が多いせいかN.D。全部震災後生まれなのでしょうか。この結果を友人に報告すると「ドンコ大丈夫なんだ!」とびっくりしておりました。

んでマイワシが大爆釣でN.D。しかも爆釣だと!!

行かねば!!!!(次回マイワシ編お楽しみに!)

小名浜港でサヨリ釣って測ってみた件

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の八木です。

前回お伝えした通り、1F洋上調査は冬の間お休み致しますが、ブログの読者から「1Fの洋上調査も大事だけども、実際いわきの港で釣れるような魚ってどうなってるの?」というお声を頂きました。

確かに!

我々は元々このうみラボを「福島の海がどうなってるのか知りたい! 確かめたい!」という思いで始めたわけですから、地元の海がどうなってるのかも発信しなくちゃいけません。

いわきには元々釣り好きな方も多くいらっしゃいますし、休日ともなれば小名浜港やアクアマリンは釣り人で賑わうのが当然の風景でした。震災直後はほとんど見かけなくなった釣り人も、ここ最近は良く見かけるようにもなりましたし、釣った魚も持ち帰る人も以前と比べて増えてきています。しかし、それでも依然としてアイナメやヒラメなどを泣く泣くリリースする方も多いと聞きます。

事故直後1年くらいは、行きつけの釣具店でも魚の放射能量を測っていたという話を耳にしましたが、今はほとんど聞きません。事故から3年以上経った今だからこそ、頭の中の『近場で釣れる魚の放射能量のデータ』をアップデートする必要があるのかもしれません! というわけで今回から「いわきの防波堤から釣れる魚を測ってみよう」というのをやってみようかなと思います!!

というか「なんで今までやらなかったの?」と言われそうですが…。

はい。それはですね・・・・。けんきゅう員八木の怠慢であります(笑)!!
(やろうやろうとはね、思ってたんですよ。はい)

というわけで、何釣っぺ。

基本的にいわきの冬の釣り魚のターゲットは根魚が主流です。そうです。アイナメ、ドンコ、ソイ、メバルなどです。ですよねー。気になりますよねー。そして、あまり放射能関連では話題に上らない所では、夏のアジから変わっていってサヨリ、イワシなど。こちらは初心者でも簡単にサビキなどで釣れます。このあたりがいわきで釣れる冬の魚の代表です。

さて、何がら釣っペな。。。。と悩んでる所にうみラボでもおなじみ、アクアマリンふくしまの獣医、富原せんせいから緊急入電が入りました。

「先日アクアマリン前でサヨリ200匹釣りました(笑)」(富原)

出たああああああっwww! 聞いても無いのにいきなり始まる釣り人特有の釣果自慢! しかも200匹とか頭おかしい(褒め言葉)。でもそんな話聞いたらいてもたってもいられません! 悲しいけどこれが釣り人の宿命なのです。早速週末にアクアマリンへ向かいます。

着いたのはお昼過ぎアクアマリン前にはすでに大勢の太公望たちが釣り糸を垂らしておりました。小名浜港にこれだけの釣り人が戻ってきているんですよ皆さん!!

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アクアマリンの先端は「釣り特区」となっており、小名浜港のような大きな港湾内にこういう釣り特区があるのは全国でも珍しいそうです。ちゃんと海に落ちない様にチェーンもあり足場も良いので小さなお子さんとの釣りに最適ですね♪

しばらくすると富原せんせいも登場。周囲のおっちゃん達と親しげに会話しており、しかも「先生」と呼ばれています。あーここの釣り人たちはみんなアクアマリンの獣医だと知ってるんだなと思ったら意外や意外、みんな知らなかったようで『釣りの』先生らしいです。富原せんせい恐るべし(笑)

さて、私はサヨリ釣りが実は初めてなのでしかけやら何やら全て富原”せんせい”に教えてもらって実釣開始。仕掛けは「延べ竿」に「ウキ」、「ワカサギ用の2号針」というシンプルなもの。餌はアミです。私は一応ルアーマンなのでアジ用の竿に仕掛けをつけて開始します。

で、、、、、

簡単に釣れた(笑)

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しかしさすがは富原せんせい、私の3倍のスピードでさよりを釣り上げていきます(赤い彗星かw!!)。いやあ、さすがは先生! というわけで数時間で2人で50匹以上のサヨリを釣り上げ終了。

で、ここまでは私の以前の釣りブログと一緒(黒歴史)。

ここからがうみラボのうみラボたる所以です。「富原さんが釣り上げた200匹のサヨリ」のデータを参考にしつつ、サヨリの状況について富原せんせいのコメントをもとに考えていきましょう。まずはその200匹の計測データです。

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セシウム合計でN.D.です。

これ「196個体」となっているのは、魚体が非常に小さく、筋肉の体積が小さいので200匹くらい捌かないと1回の検査に足りる量にならないんですよね。200匹捌くんですよ? 腱鞘炎になりますよこれww 普段わたしたちが目にする「モニタリング調査」のデータも同様に、皆捌いて検査してるわけです。本当に頭が下がります。

で、このN.D.という結果。まあ、「沿岸性回遊魚」なので当然の結果だよなと思っていたのですが、詳しく聞くとなにやらそうでもないようです。ちょっとビックリしましたが、富原せんせいからコメントをいただきました

サヨリは本来、沖合いにいる魚ですのでサンマと同じく放射性物質の蓄積はしづらいと考えていましたが、水産試験場の調査で四倉沖のサヨリが1度だけ100Bq/kg超えたんですよね。それも事故から2年近く過ぎてからです。
これは私にとっては衝撃的で、試料の取り違えなどの可能性も考えていました。ただ、その後の調査で、100Bq/kg を超えないまでも、数十Bq/kgの蓄積が見られたこともあったので、間違いじゃなかったんだなと思いました。
サンマよりは沿岸寄りなので汚染水の影響を受けやすかったんですね。100Bq/kgを越えた群れは原発近辺にしばらくいたのかもしれません。サヨリの寿命はサンマ同様2年で、今は震災前に産まれたのはいません。今釣れている小さいのが今年産まれ、もうすぐやってくる大きいのが去年産まれです。
餌のことですが、現在、海洋のプランクトンはそれほど汚染度は高くないんですよね。それより、ちょっと気になるのが川の河口に集まって流れてくる餌を食べているサヨリです。カワムシなんかは非常にセシウムを蓄積してますし、それを食べればそれなりの汚染も引き起こされるかもと思っています。
原発周辺の河川環境だと数字に出るぐらいの汚染は引き起こされるかもしれません。サヨリは成長が早いので代謝も早いと思っています。例え汚染されても比較的早く排出されるのではないかと思いますので、100Bq/kg超えたサヨリは汚染されてすぐの群れだったのかなと思っています。
いずれにしても、サヨリに関しては他の魚よりも汚染される原因として考えられることが多くて難しいです。寿命2年(代謝が早い)、プランクトン食、沿岸性回遊魚、河口が好き(水の流れが好き)。この辺が汚染の原因とされるポイントですかね。

なるほど。やはり魚は難しい。様々な要因が絡んでくるんですね。

なお、福島県沖のサヨリは、まだ試験操業の対象には入っていません。

しかしながら、今年は知ってる限りではほとんどが検出限界未満とのことで、直近の検査でも196検体合わせて計測してN.D.だったということもありますので、せっかくですので美味しくいただきましょうかね。今回富原せんせいと釣った50尾のサヨリのうち大きめのものをもらいました。なかなか良いサイズですね。

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サヨリはこんなに簡単に数が釣れるのに高級魚!

お刺身にしてよし!

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一夜干しにして焼いてもよし!

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天ぷら、唐揚げと揚げてもよし!

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更に漁協女性部の方に聞いた所だと「お吸い物』にしても美味だそうです。我が家ではお刺身、天ぷら、唐揚げ、一夜干しとしていただきました。

サヨリ、ごちそうさまでした!

うみラボ第6回海洋調査レポート

みなさんこんにちは。

うみラボけんきゅう員の小松です。11月9日(日)、「今年最後」のうみラボ海洋調査を行ってきました。「今年最後」というのも、冬の間はいわき沖の海域で波が高くなりやすいのですね。けんきゅう員の安全を最優先に考えると冬の間は船出すの辞めたほうがいいべ、という判断もあり、12月から翌年3月までは調査をお休みしてるのです。そんなわけで今年最後になったわけですが、調査結果をこちらでレポートします。

うみラボ第6回海洋調査が行われたのは11月9日(日)。ちょうど第1回調査が行われて1年になりました。感慨深い船出です。順風満帆に調査を! と希望はしたものの、なんとこの日の海は、非常に波が高い。ゲロゲ〜ロ。ほとんどの方が酔い止めを服用しての出航。やはり自然相手ですからね、仕方ありません。

※このうみラボ調査は、あくまで独立した有志団体による「独自の調査」ですので、出荷規制や試験操業の判断基準になることはありません。国や県の調査とはまったく関係なく「自主的に」行われております。それをふまえたうえでお読みください。


—いざイチエフへ

いわきを出ると、広野火力発電所福島第二原子力発電所を経由し、富岡漁港、小良ケ浜漁港跡などを巡りながら福島第一原子力発電所にたどり着くのですが、このルート、非常に学びが多い。地形を「俯瞰」しながら、発電所が建設された「立地条件」を確認することができるわけです。例えば「海そばのこんなに低いところにあるのか」とか、「地下水が沢となって海に注ぎ込んでいるのか!」とか、様々な発見があるわけです。

また、こうした「点」としての理解ではなく、「浜通り」が「エネルギー生産地帯」であるという「面」としての理解が深まりますし、常磐炭鉱から発するエネルギーの歴史をも知ることもできるわけです。これまで単なる情報として知っていたことが、実際に体験することで「立体感」が出てくるんですよね。うみラボのツアーとしての「効能」は、決して小さいものではありません。

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2014年11月9日「うみラボ6」の1F

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ちょうど1年前の「うみラボ1」の時の1F

出発から1時間ちょいで福島第一原子力発電所に到着します。前よりもクレーンの数が増えたような気がしますね。1年前の「第1回うみラボ」の写真を見比べてみると、確かに増えてるんです。これ、1号機建屋の屋根の取り外し作業が行われてることもあり、クレーンの数が増えているわけですが、復旧作業も想像以上に進んでおり、整然とした現場になっている印象。これはやはり現場で作業している方々への敬意を感じずにはいられません。


—1F沖で調査開始

さて、そんな1Fを視界に捉えつつ、海底土の採取 → サンプル魚の採取と、テキパキと進めて行きます。今回の調査では、アクアマリンふくしまの富原獣医がおりますので、前回のような「失敗」にはならないでしょう!

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富原獣医がエクマンを華麗に操る。今回はNHK福島の取材が入りました。

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採取ポイントと1Fの近さはこんな感じ。だいたい1.5kmです。


早速ですが、採取した海底土の放射性物質の計測結果を先にあげておきます。

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Cs-137:205Bq/kg
Cs-134:64.7Bq/kg
Cs合計:270Bq/kg
という結果でした。

ちなみにこちらの海底土、しっかり48時間「乾燥」させた後に測っているのですが、その結果が270Bq/kg。ちなみに乾燥させる前だと140Bq/kg。今回は500mlを使って測定しており、いつもより水分量が多かったんです。このため水による遮蔽効果が働き、乾燥前のほうが低く出るのではないかとのこと。やはり正確に測るには「乾燥」させたほうがよいそうです。

また、ヨウ素(I-131)も検出されているようにも見えるのですが、これは鉛(Pb-214)です。津田せんせいによると、「I-131の出す364keVのγ線が、Pb-214の出す352keVのγ線と近い位置にあるためです。元はウラン238が次々に崩壊してできた放射性元素の1つで、土壌中にウランがよく含まれているために見られる現象です。土壌を測定しているとたびたびみられます。これがPb-214によるものかどうかは、他のピークのエネルギーをきちんと読み取るか、よりエネルギー分解能の高いGe半導体で確定させる必要があります」とのこと。

あれ、ヨウ素出てるぅぅぅぅ!! とか脊髄反射せずに、冷静に見ることが肝要ですな。


—海の男たちが「真価」を発揮

さて、続いては男だらけの釣り!!! 

前回の釣果が散々だったこともあり、今回は皆さん目の色が、気合いが違います!!! なんとしても釣ると、そういう本格的な装備でいらっしゃっている。1F沖1.5km。釣り人たちの負けられない戦いが始まりました!!

久しぶりの参戦となった計測アドバイザーの津田せんせいも今回は気合いが違います。わざわざ前泊で仙台からいらっしゃって頂き、お疲れのはずなのに、釣り竿を握った途端にスイッチが入ったのでしょう。いつもの柔和な表情が鬼の形相となっておりました。

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そしてその津田せんせいが見事にヒラメをゲット!!! 見て下さいこの満足げな表情w!

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これですよこれ、うみラボはこうでなくては! 確かに我々「調査」が第一目的なのですが、福島第一原子力発電所沖ということを差し引いても(差し引いていいのか?)、海で魚を釣るというのは、やはりエキサイティングなもの。もちろん真剣に調査はしますが、どこかに「楽しさ」のような感覚がないと長続きしないと思うのです。ですから調査ではあるのですが、皆さん楽しそうだし、そういう様を見ると、やはり福島の海に早く笑顔が戻ってきて欲しいなと痛切に感じるんです。

そしてその笑顔が、この日だけはさらにとてつもないものに。そう、爆釣モードに入ります。

うみラボの八木けんきゅう員がヒラメをゲットォォォォォッ!!

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こちらはイナダァァァァッ!!!

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過去の調査ではフグしか釣れず「フグ大臣」の汚名を着せられた八木が奮闘してアイナメゲット!! さすがの八木けんきゅう員、本領発揮、汚名返上です。

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そしてこちらでもヒラメェェェ!! そしてこの笑顔!! やはり自然との対峙は刺激的なんです。しかし、まだヒラメは試験操業の対象にはなっていません。なんでこんなにうまそうなヒラメが食べられないんだ。本当に悔しい。原発事故が奪ってものの大きさを噛み締めずにいられません。市場に出回れば数千円、下手したら1万を超えるようなヒラメですよ?

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こういう魚を「捨てなければならない」漁師の皆さんの気持ち、少しわかるような気がします。私たちは特段漁業を生業にしていないから気楽なものですが、こうして釣れた魚を売ることができないというのは、私たちの想像を遥かに超える悔しさだと思います。だから「福島の海は終わった」などとは絶対に思いたくもありません。何とか一刻も早く安全性が確認され、試験操業が再開されることを望みます。

こちらはキツネメバル! 通称マゾイ。釣れた時は「クロソイか!」と思いましたがキツネメバルだそうです。これですねえ、日本あちこちで釣れる魚でして、刺し身にしても塩焼きにしてもめっちゃうまい魚だそうです。私食べたことないんですが、「鯛よりもうまい」という評判もあるそうです。じゅるり。

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しかしですねえ、メバル系は比較的浅い海域の海底に棲んでおり、さらに「あんまり移動しない」魚です。おそらくそれなりのセシウムが検出されるだろうことが予想されます。もちろん、試験操業の対象にはなっていません。こちらは放射性物質の計測をやってみたいサンプルですね。どのくらい出るのでしょうか。

さあああ、うみラボ6の釣果がこちら!!!!

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ヒラメは大小合わせて10枚以上、アイナメ、イナダ、さらにはキツネメバルなどがたんまりと釣れました。まさに「入れ食い」ですね。これまでの新聞報道などで、試験操業というある種の「資源管理漁業」が続いていることから福島の漁業資源が回復していることがわかっていますが、こうして釣ってみるとそれを実感しますね。

もちろん「安全」が最優先であり、試験操業を少しずつ拡充していくほかないのですが、福島の海の豊かさが少しずつ戻ってきている。いや、前にも増して豊かになっている。そんなことを実感できました。


放射性物質の計測結果

それでは、今回釣った魚の放射性物質の検査結果をざざざっとご紹介します。ヒラメが10検体、イナダ、アイナメ、キツネメバルをそれぞれ測っています。計測に当たっては500gの筋肉部分の肉が必要になるため、アイナメについては2尾、イナダも2尾、キツネメバルについては3尾を混ぜてミンチにしてマリネリ容器に詰めて計測しています。ヒラメはすべて1検体ずつです。

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検体:キツネメバル(3個体を1回で計測)
平均全長:32.4cm 平均体長:26.8cm 平均体重:646g
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Cs137:63.5Bq/kg
Cs134:22.1Bq/kg
Cs合計:85.6Bq/kg
富原獣医コメント:体長から推察すると6〜7歳と思われます。比較的汚染度の高いソイ類ですが原発前の海域でも100Bq/kgを超えなかったのは良かったと思います。

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検体:アイナメ(2個体を1回で計測)
平均全長:35.5cm 平均体長:31.2cm 平均体重:589g
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Cs137:15.0Bq/kg
Cs134:N.D.
Cs合計:15.0Bq/kg
富原獣医コメント:以前、40㎝以下のアイナメは震災後生まれといっていましたが、35㎝以下を震災後生まれと訂正します。「体長」から推察すると3歳魚なので事故以降の生まれです。今回はCs134が検出限界未満でしたが、現在のCs137比で考えるとCs合計は20Bq/kg程度でしょうか。震災後の生まれですので、現在流出している汚染水の影響もあると思います。

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検体:イナダ(2個体を1回で計測)
平均全長:38.5cm 平均体長:32.4cm 平均体重:640g
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Cs137:N.D.
Cs134:N.D.
Cs合計:N.D.
富原獣医コメント:南方系回遊魚なので蓄積しにくいですね。


続いては、うみラボで継続して調査をしているヒラメについてです。10検体の計測結果を一気にご紹介していきます。

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検体:ヒラメ①
全長:53.5cm 体長:45.5cm 体重:1505g
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Cs137:N.D.
Cs134:N.D.
Cs合計:N.D.

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検体:ヒラメ②
全長:56.8cm 体長:48.3cm 体重:1687g 
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Cs137:27.4Bq/kg
Cs134:12.6Bq/kg
Cs合計:40.0Bq/kg

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検体:ヒラメ③
全長:55.5cm 体長:46.7cm 体重:1520g
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Cs137:8.46Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:8.46Bq/kg

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検体:ヒラメ④
全長:51.2cm 体長:49.0cm 体重:1339g
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Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.

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検体:ヒラメ⑤
全長:50.5cm 体長:43.2cm 体重:1292g
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Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.

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検体:ヒラメ⑥
全長:53.7cm 体長:45.6cm 体重:1462g
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Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.

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検体:ヒラメ⑦
全長:54.3cm 体長:46.2cm 体重:1499g
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Cs137:7.38Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:7.38Bq/kg

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検体:ヒラメ⑧
全長:51.1cm 体長:43.0cm 体重:1247g
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Cs137:5.44Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:5.44Bq/kg

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検体:ヒラメ⑨
全長:52.2cm 体長:43.9cm 体重:1305g
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Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.

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検体:ヒラメ⑩
全長:56.3cm 体長:48.9cm 体重:1702g
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Cs137:8.9Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:8.9Bq/kg
富原せんせいコメント:

10個体中5個体が検出限界未満(N.D.)、1個体のみ40Bq/kgですが残りはCs134を加味して10Bq/kg前後と非常に低い検出結果となりました。全個体が雌であり、体長から推察すると3~4歳魚と推察されます。雌の60㎝以下は食品としては安心できるのではないかと予想できる結果となりました。まとまった数で調査できると信頼値が上がりますね!

おおお、今回は全個体が雌であり、国の基準値(100Bq/kg)を超えるような個体もゼロ。魚のプロである富原せんせいからも「60cm以下の雌なら食用にしても安心できそうだ」というコメントを頂き、非常に希望の持てる結果となりました。これ、原発沖1.5kmの数値ですからね。相馬やいわき沖ならば、さらに希望の持てる数値が出るものと推察されます。

とはいえ、ごくまれに原発の湾内などに侵入してしまう魚もいるはずですし、ヒラメはまだ試験操業の対象になっていません。さらに厳格な調査を行い、安全が確かめられないと試験操業の対象になはならないと思いますが、このように「大きさ」を基準にしていくことで汚染の傾向が読み取れるというのは非常に大きな収穫でした。

福島県の水産試験場なども調査結果を公表していますが、魚の体長までは結果に記載していません。しかし、これまでのうみラボの調査で、特にヒラメやアイナメなど、線量が高い傾向にあった魚は「体長」を見ていくことで汚染の傾向が読み取れることがわかってきました。来年も、この「体長」に着目して調査を継続できればと思います。

計測アドバイザーの津田和俊せんせいからもコメント頂いてます。

これまでも原発近辺の海のヒラメなどの魚種の測定は東電などが行っておりましたが、うみラボのモニタリングはサンプリング個所を原発2km沖のヒラメのポイントに的を絞った上で、体長および魚齢との相関がわかるという点で、非常に意義のあるものだと思います。
具体的には、原発事故後に産まれたことが確実な55cm以下のヒラメは既にほとんどNDで、原発事故前から生息していると考えられる60cm超のヒラメでもほとんどが100Bq/kgの基準値をかなり下回っている、と明解な傾向がわかりつつあります。
今年の漁、じゃなかったモニタリング活動は今回でおしまいですが、来年も引き続き釣り、じゃなかったサンプリングを継続していきたいですね。
また、これまで100Bq/kgの基準値を超えるヒラメも60cm以上のものが一匹みつかっただけですので、来年はがんばって60cm以上のヒラメは全部釣り尽してやろうという勢いで測定していきたいですね!

いやあ、それにしても最後の最後で、これだけ充実した調査ができてほんとうに安堵しました。協力して頂いた皆さんのおかげです。改めて、この場をお借りして御礼申し上げます。

さて、このうみラボ6の模様は、写真でちらっと紹介したように、NHK福島の取材を受けておりまして、近日中にこの模様が放映される予定です。ぜひご覧頂ければと。またですねえ、おそらく年明けになるかと思いますが、昨年同様「サイエンスバー」を開催する予定です。詳細が決まりましたらこちらでご案内いたしますね。

それでは、今年のうみラボの活動はこれにて終了。またブログには最新の動静などについて書くことがあるかと思いますが、このあたりで仮締めとさせて頂きます。1年間、大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m