☆祝☆調べラボ第10回! 開催レポート
みなさんこんばんは。うみラボけんきゅう員の小松です。
いやあ、調べラボ、今回で10回目ですよ。まさかぼくたち、地元の水族館と共同でこんなイベントをやることになるとは、発足当時は夢にも思いませんでした。アクアマリンふくしまといえば、福島に冠たる水族館。そこで活躍されている獣医の先生たちから専門的なお話を伺いつつ、こうして福島の海について知ることができるということ、改めて関係者の皆さんに厚く御礼を申し上げる次第でございます!
さて、まずは今回の調べラボ、試食特選素材からご案内していきます。調べラボでは、毎回福島の試験操業の魚を味わう試食を用意しているのですが、今回は原釜産のミズダコを使った「たこ飯」のはずが水が多く出てしまい「タコのリゾット」になりました。
いやあ、これですねえ、リゾットとしての完成度がめっちゃ高い(たこ飯としては破綻)。ミズダコからいいあんばいに水気が出て、お米にじっくりと旨味が周り、アツアツの仕上がりとなっていました。これ、お金取れる! まちげえねえ!
見て下さいこの賑わい。結局ねえ、うまそうな匂いに人間は勝てないんです。これがもうファイナルアンサーです。今回で10回目となる調べラボですが、結局、匂いがいい、あるいは見た目にインパクトのある試食が出るときが、なんだかんだで一番賑わいます。この間の木戸川の鮭を使った紅葉汁のときもすごかった。
思うのですが、ほとんどの皆さん「放射性物質」に興味があるわけではなく、「うまいもの」にしか興味がない。しかしそれが本質だと思うんですね。うまいものに釣られてこの部屋にやってきたら、何やら獣医の方が魚捌いてて、放射性物質について説明している。ああ、もうこんな風に下がってるのね、大丈夫じゃん。っつーかたこ飯うまい!
それでいいんだと思うわけです。というかそれがすべてなんです。普通に「福島の魚を食っている」という状況の積み重ね。遠回りなようですが、一番いいのかなと思った瞬間でした。やっぱり別に放射性物質のことなんてどうだっていいんですよ。流通してる魚は安全だし、第一うまいんだから。普通にうまさを堪能すればよし!
いや、まあ、その、別に放射性物質のことなんてどうでもいいわけではありません。一応我々、調べてますのでね(汗)。この日は、ここしばらく原発前では調査できていないので、小名浜港内で釣り上げた魚がメインになります。当日の模様をざざざっと写真で振り返って参りますね。
最初の検体であるアイナメ。今回は、アイナメ(小)と、アイナメ(大)と調査をしております。つまり年齢で見て、何かが変化があるかどうか見極めたるために、2試料を測定しています。アイナメ、刺身かこぶ〆ですよねえ。ああ食べたい。
マスメディアの皆さんと、観覧者の皆さんの両方に囲まれて調査を進めるアクアマリンふくしまの富原獣医。富原さんが捌く時の「おしゃべり」がとても勉強になります。できれば最前列で見るのがオススメですよ〜。おいしい食べ方なんかもレクチャーしてくれます。
今回は県外から大学生の方々も調べラボにいらっしゃり、かなり真剣な様子で調査を見守ってらっしゃいました。震災からもう5年が経とうとする今、こうして福島の海に関心を持ってもらって、我々もうれしいです。いい海を未来に引き継ぎたいですね。
こちらは計測担当のアクアマリン吉田さん。いつもうみラボでも多大なるご協力を頂いております。こうして専門性の高い方がやって下さるので、出てくる数値にも信頼性があります。こうして目の前で嘘偽りなく測って頂けるので、納得できますよね。
うみラボでは、アクアマリンふくしまが保有する日立アロカ製の測定器を使って放射性物質を測定しています。ストロンチウムやトリチウムまでは測れませんが、もっとも多く排出された「セシウム」の挙動だけでも充分有用なデータになります。
慣れた手つきで「耳石」を探す富原獣医。魚の年齢を見極めるため、毎回富原獣医には「耳石」という器官を採取してもらっています。耳石には年齢が年輪のように跡が残り、その魚が何歳かは肉眼でも確認することができます。
アイナメの耳石はとても小さく、たまに採取に失敗することもありますが、左右2枚ついているので大丈夫。明かりに透かすと年齢を刻んだ年輪のようなものが見えます。
この日の3番目の検体が小名浜港産のマコガレイ。マコガレイはこのあたりでは煮魚の定番として定着していますが、原発事故後は国の出荷制限がかかり、マコガレイは市場には出回っていません。はやくマゴの煮付け食べっちぇえなあ!
ミンチの状態ですでにしてすごくうまそうなマコガレイ。これに塩をふって練り練りして、板の上に載せて蒸したら「かまぼこ」になりますね。ネギやにんにく、生姜を入れて、醤油を垂らしたらナメロウにもなりますね。そんなことを考えつつ・・・
この日の最後の検体が小名浜港産シャコ! っておい、小名浜港にシャコいたんか! おれ知らなかったぁ〜。今回は22匹を1試料としてまとめて計測!
シャコは甲羅も入れてまるごとミキサーにかけ、それをマリネリ容器につめ、そして測定に移ります。なんとなく勿体ないような気がしますが、まあこれも計測のため。シャコ君ありがとう! これも「シャコしんじょう」のようにして食べたら意外とうまいかも。すり身に野菜を混ぜて揚げたり。
とまあ、今回も和気あいあいとした雰囲気のなかで計測が進みました。何と言うか、もう10回もやっていますので、イベントとしてかなり定着してきましたし、計測の合間に富原さんのいろいろな話も飛び出し、熱心に耳を傾ける方の姿も印象的でした。実際ですね、楽しいんですよこのイベント、すごく勉強になるし。
さて、肝心の計測結果ですが、結論から申し上げて、すべて予想通りN.D.でした。出ません。前回のうみラボ八木のレポートにも同様のことが書かれていますが、小名浜港で釣れる魚に関しては、もう何が連れても「それは食えますよ」と言っていい状況かなと思います。小名浜だけでなく久之浜も勿来も、そういう状況であると推察されます。
以下、計測にあたって頂いた富原せんせいのコメントです。
●アイナメについて
今年のアクアマリンパークにある釣り特別区はアイナメの当たり年で30〜40㎝のアイナメが良く釣れました。時には50㎝に近いアイナメも上がることがあったので夜な夜な釣りに出かけてしまいました。アイナメは東京電力福島第一原子力発電所の事故後、高い放射性物質汚染が見つかった魚です。しかし、現在は原発前の海域でさえ不検出か検出できたとしても低レベルの汚染の場合が多く、原発から55km離れた小名浜港のアイナメではこの数年、検出限界以下となっています。そのことを知ってか知らずか小名浜港のアイナメ狙いの釣り人が年々増えているのは喜ばしい限りです。
●マコガレイについて
当館の調査で最も手薄な魚の一つです。カレイ類は底魚で長寿なため放射性物質のモニタリングの生物としては重要なのですが、当館の測定機器は500gの筋肉が必要ですので、なかなか試料となるカレイを釣り上げることができずにいました。まあ、何より私がカレイ釣り(竿何本も投げて数時間放置して1枚釣れれば良いという釣り)が好きではないだけなんですがね。今年はマコガレイも当たり年で、原発事故後、漁業を自粛している影響で資源量も増えたこともあって、何とか測定に足る数を釣り上げられました。結果はN.D.です。耳石から年齢査定すると2歳魚1個体、4歳魚2個体、6歳魚1個体でした。6歳魚が混ざっていましたがN.D.と出たのは喜ばしいことです。
●シャコについて
投げ釣りの外道でおなじみのシャコです。泥底を好むため小名浜港には多く生息していますが、津波で泥が浚われてからはあまり釣れなくなっていました。震災から5年経ち、小名浜港の泥も戻ってきたようで、また釣れるようになりました。シャコを狙って釣るのは大変で、今回のシャコを釣り上げるのに延べ14日間夜釣りをする羽目になってしまいました。泥地に穴を掘って棲んでいるため当初は放射性物質の影響を受けやすいと考えていましたが、無脊椎動物で放射性セシウムを蓄積しにくいことと、泥に吸着した放射性セシウムは生物には移行しづらいことからN.D.となっています。シャコの旬は春なので、今度は食用で釣りたいですね。
というわけで、今回の調べラボ、オールN.D.となりました。うむ。繰り返しになりますが、いわき市の岸壁などの釣りは、もうどんな魚が釣れても安心してやって頂いてオッケーかなという印象ですね。前回の調べラボでは、線量が高めでお馴染みの「メバル」ですらN.D.でしたし、ほとんどの魚種で不検出になっています。出たとしても数ベクレル。漁協の自主基準値50Bq/kgに届く個体を見つけるのは非常に難しくなってきました。
特にアイナメは、鮮度が落ちやすい&高級魚なので、釣った魚じゃないとほとんど刺身では食えません。アイナメ刺は、釣り人の特権というわけです。なんですかね、私たちも継続して調査をしてきていますけれども、「調査のため」ではなく、「刺身を味わうために」魚を釣ることの楽しさには勝てませんね〜。