いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

第12回うみラボで釣れたヒラメを集中計測&考察

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。

9月6日に「第12回うみラボいちえふ沖海洋調査」を行いまして、既報のように結果は「爆釣」、かなりの試料を入手することができたのですが、そんなに多くの魚を一気には測れないので、一部は計測イベント「調べラボ」に回し、その他の魚については、アクアマリンふくしまの富原獣医にすでに計測して頂きました。今回のその結果をお知らせします。

今回の計測データで特に注目すべきは「ヒラメ」のデータです。ですので今回はそのヒラメの結果のみ取り上げ、いろいろ考察していきたいと思います(ヒラメのほかにアイナメなどのデータもあるのですが、それは次回に更新します)。

実はうみラボでは、昨年11月に行った「第6回いちえふ沖海洋調査」におきまして10試料のヒラメの放射性物質を計測しています。結果はリンク先を見て頂ければわかりますが、今回もたくさんヒラメが釣れたので、同じ「10試料」のヒラメを計測し、昨年とどのような数値の変化があるかを見ていきます。

確認のため写真載せておきますが、計測するのはこれらのヒラメ。ほんと爆釣でしたな〜。

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ではまずは、今回釣れたヒラメの放射性物質の計測結果からお知らせします。

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ヒラメ①原発沖10km 56.3cm/Cs合計 N.D.

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ヒラメ②原発沖10km 60.5cm/Cs合計 4.34Bq/kg

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ヒラメ③原発沖10km 55.5cm/Cs合計 N.D.

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ヒラメ④原発沖10km 51.7cm/Cs合計 N.D.

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ヒラメ⑤原発沖2km 53.0cm/Cs合計 N.D.

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ヒラメ⑥原発沖2km 55.0cm/Cs合計 N.D.

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ヒラメ⑦原発沖2km 55.3cm/Cs合計 6.55Bq/kg

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ヒラメ⑧原発沖2km 54.0cm/Cs合計 N.D.

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ヒラメ⑨原発沖2km 58.0cm/Cs合計 5.53Bq/kg

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ヒラメ⑩原発沖2km 2個体平均39.7cm/Cs合計 N.D.

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検出された試料が3つ。その他はいずれもN.D.という結果です。海域別に見ると、原発沖2kmポイントのものが2試料(⑦と⑨)で検出。10kmのもので1試料(②)検出という結果でした。ちなみに昨年は10試料のうち半分でセシウムが検出され、最高値は40Bq/kgだったことを考えると、前回と比較して、今回のヒラメはかなり低い印象です。

昨年との比較を図にしてみました。

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昨年までは数十ベクレル/kgが検出されることもよくありましたが、今回は3つ。いずれもほぼ「検出限界」に近い低さになっています。富原せんせいからも、「検出限界が7Bq/kgほどであり、ミリベクレルまで測って平均化しないと意味あるデータにはなりませんが、昨年との比較はできます。平均全長から見て年齢構成もあまり変化がないと推察されるので、数値を比較すれば昨年よりも改善していることがわかります。来年の秋も10個体測定したいですね」と、継続調査をすすめるコメントを頂きました。


2013年の秋にスタートしたうみラボですが、継続することで、このような比較ができるようになってきたのは心強いなあと思います。何事も続けてみるもんです。

昨年までのわたしたちの認識は「ヒラメは60cm以上は震災前生まれだから高い傾向にあり、60cm以下はおおむね震災後生まれであり低い」でした。シンプルに大きさだけ見ていけばヒラメのおおまかな傾向はわかると考えていたんですね。ところが、原発事故から時間が経つにつれ、震災後生まれのヒラメも成長してきますから、ヒラメの大きさだけ見ても、その個体が震災前生まれか、震災後生まれかハッキリとはわからなくなったわけです。震災後生まれのヒラメでも60cm近い個体とかが出てきたんですね。

そこで、今年から魚の年齢の分かる「耳石」をチェックするようになりました。それにより「年齢判定」ができるようになりました。そうなると、震災前生まれでも、震災時すでに成魚だった7歳以上のものと、震災時に幼魚だった5〜6歳のものと、どうも体内の放射性物質の濃度に違いが出てくることがわかってきた。7歳前後のものは身体も老化して排出ができなくなっており、震災直後に取り込んだ汚染水の影響が抜けきらず、従って高い傾向にある(高いっつっても100ベクレル行くことは稀ですが)。これに対し震災時に幼魚だった5〜6歳モノは、とにかくこの4年半でかなり成長してきたので排出が進んでいる、と考えられるわけです。

こうして継続して調査してくると、このように「ここまでは安全だな、でもここからはまだ心配だな」という線引きができるようになります。「わからない」の領域がどんどん狭まってくるんですね。まさに「知ろうとすること」によって、福島の海の情報が日々アップデートされていきます。

もちろん漁連や漁協、国の判断もあると思いますが、ヒラメに関して言えば、そろそろ試験操業の対象に入ってきてもおかしくないかな、といった印象ですね。しかしそれでも試験操業の対象には簡単には入らない。それだけ慎重な判断がなされているというわけです。関係者の皆さんの努力にはほんとうに頭が下がります。漁業者の皆さんの選択は大いに尊重しつつ、我々は我々で調査を続けていきます!!!