いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

うみラボ「いちえふ沖計測ツアー」③そして分析へ

「自分たちで行ってみよう、やってみよう」のスローガンのもと、私たち「うみラボ」クルーは、11月3日、福島第一原発沖1.5kmのポイントに漁船で向かい、海水と海底土壌の採取を試みました。

前回までに、「行ってみた編」と「調査してみた編」の2回を紹介してきましたが、今回は、採取した海水の分析結果についての報告です。

―確保した水、なじょすっぺ

津田和俊せんせいの的確なアドバイスのもと、福島第一原発沖1.5kmポイントで採取した20リットルの海水を確保した「うみラボ」けんきゅう員。「取ったどー!」と勢い良く叫んだはいいものの、所詮はシロウトの集まり。どうやって海水を分析したらいいのか、なんのアテもありません。

この水、なじょすっぺ。

帰りの船上でも、「ああすっぺこうすっぺ」と様々な意見を出し合いましたが、よいアイデアがなかなか出てこず、「とりあえず昼飯だっぺな」ということで、上陸後、いわき市内のとある食堂へ移動。まあ、その、腹が減ってはなんとやら、です。

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うみラボけんきゅう員の間でも伝説となった海鮮丼。これで並。500円しない!

その食堂で注文した海鮮丼。なにこれ、うまい!

先行き不透明な分析のことなどすっかりと忘れて、この刺身がうまいだの、どこそこのぽーぽー焼きがうまいだの、どの釣りポイントがいいだの、いやあそればっかりは教えられないだの、魚の話でついつい盛り上がってしまいました。うみラボ研究員は海が大好き。てへぺろ

それにしても、これだけ話しても魚の話題が尽きないのだから、いわきの海の文化は、本当に奥深いものがありますよね。「うみラボ」でも、どんどん盛り上げたいと思います。いやあ、海鮮丼、うまがった! ごちそうさまでした!!


いやいやいやいや、決めないと! あの海水をどうするのか!!!

けんきゅう員A:「とりあえず市民測定所みでえなどごで測ってみだらいいんじゃねえのげ?」

けんきゅう員B:「いや、それじゃセシウムしか測れねえべ。ストロンチウムも測んねえど安心でぎねえよな。どっかにいいどごあっかい?」

けんきゅう員C:「俺らカネねえんだど! そんなセシウムストロンチウムもって言ってでもカネねっかどうしようもねえべよ」

津田せんせい:「そうですねえ、「うみラボ」のコンセプトやビジョンを理解してくれ、それをふまえて協力してくれるところがあるといいですね。20リットル確保しているので、何カ所かに分けての計測も可能ですし、まずはセシウムの量を測定し、それから時間をかけてストロンチウムまで検査するというようにわけてもいいと思いますよ」

けんきゅう員A:「なるほど、それがいいな、それにすっぺ!」

けんきゅう員B:「でもよ、オレらの考えとか理解してくれるとこっつったら、海に関わるとこで、しかも海が大好きな人たちがいっぱいいて、しかも魚がたくさん・・・・」

一堂「あった、小名浜に、魚の楽園が!!」

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はい、そうです、ここしかありませんよね?

―いわきが誇る、海のシンボル

けんきゅう員の口から名前のあがったのは、そうです、「アクアマリンふくしま」。まさに、いわき市が誇る海のシンボル。

アクアマリンはただの水族館じゃありませんよ! サンマやメヒカリなど、小名浜にゆかりのある魚たちの飼育と展示に関しては右に出るなし! シーラカンスの研究では、世界の最先端を走っています。

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飼育されるメヒカリさんたち。静かにしていました。

自前の釣り堀ではアジなどを釣ることができ、釣ったその場で捌いて調理し、食することもできます。まさに「食育」の最先端を行く水族館なのです!

トリップアドバイザーが選ぶ「行ってよかった水族館ランキング2013」では、沖縄の「沖縄美ら海水族館」に次ぐ堂々の2位。「環境水族館」の名の通り、展示だけでなく学習施設としても、地域の子どもたちに愛され、学びの場となっているのです。

ち・な・み・に、うみラボけんきゅう員の1人は、このアクアマリンふくしまで結婚披露宴を開催しています。実は、アクアマリンふくしまでは、メイン展示である「潮目の大水槽」の前のスペースを貸し出し、学会のシンポジウムや交流会、お見合いイベントまで、幅広い催しを開催しているのです。

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潮目の大水槽の通路から新郎新婦入場!

長くなりましたが、以上のように、アクアマリンふくしまというのは、市民に開かれたオモシロ学習水族館なのです。そんな水族館ならば、私たちの願いを聞いてくれるに違いない! そこで、失礼を百も承知で、分析を頼んでみることにしました。

けんきゅう員:「私たち、うみラボと申しまして・・・かくかくしかじか・・・かくかくしかじか・・・というわけで、海水の分析をお願いできませんでしょうか?」

アクアマリンの方:「はい、いいですよ!」

か、神はいた!!

なんと、アクアマリンふくしま様のご好意により、採取した海水を調べて頂けることになったのです。いやあ、頼んでみるもんですねえ。


―海水の分析結果

こちらが結果です。

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放射性ヨウ素(I-131)、放射性セシウム(CS-137、CS-134)、放射性カリウム(K-40)ともに、それぞれND(検出限界以下)でした。なお、検出下限値は、放射性ヨウ素が3.02Bq/kg、セシウム137が4.70Bq/kg、セシウム134が5.26Bq、放射性カリウムが55.7Bq/kgとなっています。

ちなみに、現在、日本の水道水の放射性物質の基準値は10Bq/kgですので、今回採取した海水は「水道水として飲んでも問題ない(まあそりゃ飲んだらしょっぱいけど)」ということができると思います。。正直にいえばこれは予想通りの結果でしたが、自分たちの手で採取した水の分析結果がNDだと、やっぱり少しホッとしますね。

なお、津田せんせいによると、放射性カリウムは天然の放射性物質としては最もありふれたものの1つで、海水には放射性カリウムは1リットルあたり約12Bq、人体にも1kgあたり約60Bq含まれているそうです。

今回の分析では、ヨウ素セシウム、カリウムともにNDでしたが、ストロンチウムの値も気になるところ。こちらは別の機関に分析を依頼をしており、分析に少し時間がかかりそうなので、結果が出次第、こちらに報告いたしますね。

―うみラボ「いちえふ沖調査ツアー」のまとめ

というわけで、前々回のエントリから、「うみラボ」の「いちえふ沖調査計測ツアー」を3回にわたって紹介させていただきました。

シロウトが「自分でやってみる」ということを第一に企画したので、専門家の方々から「何をやっているんだ」という厳しいお言葉を頂戴しそうですが、「目からウロコ」だったり、「そういうことだったのか!」があちこちに転がっていて、本当にためになりました。

政府がどうとか東電がどうとかそういう話じゃなく、自分たちでやってみたかったんです。結果、自分たちでやってみて、いろいろなことがわかって、なんというか、漠然とした不安が少しずつ取り除かれたような気がします。そして、何より楽しかったので、この計測ツアー、またやります。

今回アドバイザーとして参加してくださった津田和俊さん、五十嵐泰正さん、分析に協力して頂いたアクアマリンふくしまの皆様、御礼申し上げます。そして、ブログを読んでくださったあなた、改めまして、読んでくださってありがとうございました。

今後も、DIYの精神を大切にしながら、いわきの海を考えるための企画をいろいろとしかけていければと考えていますので、どうぞ皆さん、お楽しみに。うみラボの今年の報告は以上です。それではみなさま、よいお年をお迎えください!