アクアマリンふくしま「第6回調べラボ」開催のきろく
皆さんこんばんは、うみラボけんきゅう員の小松理虔です。10月25日に開催された調べラボの模様、そして計測したサンプルの計測結果についてお知らせ致します。
今回の調べラボ、メイン食材は木戸川のサケ!
そうです、福島県のサケの名産地、楢葉町の木戸川のサケです。いやー感慨深い。原発事故で大きな影響を受け、「原発からも近いし木戸川のサケなんてもう食わんにいべ!」とか思ってましたので、こうして復活の日がやってきて、そしてこうして食うことができる。すばらしいことだと思います。木戸川サケついに復活!
こちら、河北新報さんでも記事が出てます。いいですか皆さん、楢葉町の木戸川のサケ、食べられるようになったんですよ!
www.kahoku.co.jp
えええ楢葉町の川を泳いでるのに、食べられるわけないよ!
なんて思っているあなた、冷静に考えてみて下さい。サケって川で生まれて川に戻ってくる魚なんですけれど、戻ってくるまでは外洋、つまり海を泳いでるわけですよ。原発から遠く離れた北洋で生活しているので、回遊魚と同じでセシウムが溜まらないというわけ。
富原せんせいの解説をまず載せておきます。
アクアマリンふくしまでは2012年より木戸川に遡上してくるシロザケの放射性物質量を木戸川漁業協同組合と共同で行っています。東京電力福島第一原子力発電所から南に17km。そこには本州最大級のサケの遡上数を誇る木戸川があります。良い年は10万尾を超えるサケが遡上します。
冬に孵化したサケは初夏になると海に降り、日本から遠く離れたアリューシャン海域、ベーリング海まで北上し3〜5年をかけてオキアミなどを食べて成長し、生まれた川に戻ってきます。原発から遠く離れた北洋から帰ってきたサケに大きな放射能汚染は見られないのは当然です。
淡水魚の放射性物質は海水魚に比べて排出されづらいため、木戸川では未だに数十Bq/kgほどの汚染された淡水魚が見つかります。もし、遡上してきたサケがそれらの淡水魚を捕食したら現在の食品の基準である100Bq/kgを超えるような事態になったかもしれませんが、サケは川に入るとエサをほとんど食べなくなるので汚染されません。
また、木戸川の水自体の汚染も1Bq/ℓ以下と非常に低いため、当館所有の測定器の能力ではサケから放射性セシウムが検出されることはありません。
というわけです。サケの安全性は、こうした「生態」からも、さらに「モニタリング調査」からも確認されているわけですね。安全性が確認されて食べられるようになる。これは素直にうれしいことです。
というわけで調べラボ。まな板の鯉、いやもとい、まな板のシロザケです。
ででーんと大きな身。これからこのサケを捌いていきます。
腹を捌くとイクラが! 見て下さいこの宝石のような輝きを!
子どもたちも興味津々。これが重要。これが食育。めっちゃ大事なんですよね。
木戸川のサケに魅了される皆さま。そりゃあ当然だと思います。
別室で調理されていた木戸川のシロサケのフライが登場!!! うおおおおおお!!!
くはーーーーこのサケのフライにはタルタルが合うぅぅぅぅぅっ!
そして奇跡のイクラ醤油漬け登場!
しかも紙コップに入れて飲めだって!! 目を疑う光景。しかもこれ3皿出てますからね。どれだけ飲めばいいんだよ。痛風になっちゃうよ! ってくらいのボリューム。いやあこれですよね、海の幸は豪快に食するに限るっ!
会場の模様。今回は本当にお客様が多かった。そして皆さん美味そうにフライとイクラを頬張ってらっしゃいました。こうして木戸川のサケがおいしく食べられている光景、はやく楢葉の皆さんにも見て頂きたいですね。これぞ希望です。もはや栄光しかありません!
というわけで、今回の調べラボ、大変に盛り上がりました。サケフライの盛りのよさが通路からも見えたのがよかったのかもしれませんね。鍋物だと中をのぞかないといけませんが、フライは大皿にこんもりと盛りつけられていて、しかも外から見えますから。そしてシロザケですがね、フライが合う。塩焼きなどより、フライですね。身もホクホクしててほぐれやすく、こざっぱりとした味なので、フライでも重くならない。ソースとタルタルと試しましたが、タルタルが合いました。奥さん、今年は木戸川のサケのフライですよマジで。
さて、ここからは放射性物質の計測結果です。一挙にご紹介します。
試料①木戸川産シロサケ/計測部位:筋肉/全長78cm/N.D.
試料②木戸川産シロサケ/計測部位:卵巣(イクラ)/N.D.
はい。前段で紹介した通り、木戸川産シロサケ、身もイクラもN.D.です。当然の結果ではありますが、実際に自分たちで測ってみてN.D.でした。頭ではわかっていても、やはり目の前で測り、目の前で説明して学ぶ。このプロセスが重要だなと思います。
試料③原発沖2km ヒラメ/全長55cm/N.D.
試料④原発沖2km ヒラメ/全長56.5cm/N.D.
試料⑤原発沖10km ヒラメ/全長64.7cm/Cs合計14.8Bq/kg
試料⑥原発沖10km ヒラメ/全長61.8cm/N.D.
試料⑦原発沖10km ヒラメ/全長65.5cm/Cs合計9.14Bq/kg
ヒラメは5試料です。65㎝クラスの2試料から14.8Bq、9.14Bqとそれぞれ検出されています。耳石から査定すると大きい個体は7歳以上とのこと。7歳以上だと原発事故時にすでに成魚になっているので放射性物質が排出しきらずに少し残っています。富原せんせいによると、ヒラメは底生魚ですが餌のイワシを追いかけて50kmほどは移動するので、メバルやソイなどの根魚と違って放射性物質は蓄積されにくいのだそうです。
試料⑧原発沖2km キツネメバル/4個体/平均全長32.8cm/Cs合計21.6Bq/kg
4個体合計。富原せんせいに耳石を確認してもらったところ、1個体だけ7歳以上の個体が入っていたようで、数値も出ましたね。キツネメバルは根魚で、しかもほとんど移動しません。2011年4月1〜6日に放出された大量の汚染水の影響が強く残っている魚です。7歳以上ですとその当時成魚ですので取り込んだ放射性セシウムも多く、代謝も遅いため現在でも放射性セシウムは抜けきってません。放射性物質が検出されやすい典型的な個体ですね。
試料⑨原発沖10km ワラサ/全長49.4cm/N.D.
試料⑫原発沖10km アイナメ/全長41.3cm/N.D.
アイナメです。出ませんでしたね。アイナメも「けっこう出る」種類だと思っていましたが、うみラボの調査結果見ても、その認識を改めないといけないかもしれません。ほとんど出なくなりましたね。以下富原せんせいのコメントです。
「アイナメはもう事故前生まれの個体も少なくなったのでしょうね。事故から5年経ち大きな汚染が残っているアイナメはもういません。ただ、福島県太田川河口域で平成24年8月に採取された25,800Bq/kgのアイナメが大きなニュースになったため未だにアイナメは食べられないと思っている釣り人も多いです。小名浜港はこれからアイナメ釣りのシーズンです。今シーズンの釣り人がどれだけアイナメを持ち帰って食べるのかが興味があります。(富原)」
試料⑬原発沖10km クロソイ/全長52cm/Cs合計39.3cm/kg
試料⑭原発沖10km クロソイ/全長45.8cm/Cs合計8.85Bq/kg
試料⑮原発沖10km クロソイ/2個体/平均全長39.8cm/N.D.
52cmの超ド級クロソイから39.3Bq/kgが検出されてしまいました。ううむ、体長がかなり大型なので震災前生まれかとは思いますが(詳しくは下の富原せんせいの解説をご覧ください)、、、、しかしそれにしてもクロソイ、デカいっすよね。ほんと最高級魚ですからね。まだ流通はしてないのが悔しすぎます。以下富原せんせいのコメントです。
「なかなか50㎝オーバーのクロソイはお目にかかれませんね。相当、高齢魚と思ったのですが肉眼で耳石を見ると4歳までの年輪しか確認できませんでした。大きい個体のせいか耳石も厚く正確な年齢は確認できてません。放射性セシウムが39Bq/kg検出されていることから事故前生まれだと思いますが、耳石をもっとちゃんと見ないと判断が難しいですね。三陸沖のデータですが全長52㎝で7歳らしいので、この個体も7歳ぐらいかもしれません。7歳ですと事故当時は成魚ですのでこのくらいの放射性セシウムが検出されても不思議はないですが事故後生まれだと汚染ルートが気になりますね」
というわけで今回の試料は15です。最後のクロソイがいくらか気になりますね。根魚ですので「出る」ことは予想していましたが、富原せんせいも耳石鑑定に悩まれた様子。魚の年齢を調べるには、耳石を見る以外に「ウロコ」からも確認できるそうですが、耳石での年齢判別が難しい場合は、ウロコでの鑑定も必要かもしれません。次の調べラボでは、おそらくウロコを見て年齢を調べる方法を富原せんせいが見せてくれるはずです。
さて、次の調べラボですが、11月15日(日)の予定です。アクアマリンふくしまで、木戸川のサケの展示をしていますので、次回の調べラボでも、テーマ食材は今回と同じ「木戸川産シロサケ」になります。気になる試食は、なんと木戸川漁協さんの協力により、木戸川名物「鮭の紅葉汁」を提供してくださるそうです。
調べ(たべ)ラボとは「食べて調べる」こと。うむ。これは紅葉汁、楽しむしかありませんな。
うみラボ第13回いちえふ沖調査レポ
みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松理虔です。本日13回目のうみラボいちえふ沖調査を行ってきましたので、そのレポートをば。
はやいものでもう13回目。今回は、いつも調査に助力頂いているアクアマリンふくしまの富原せんせい、吉田せんせいのお2人が学会?の関係で調査に来れず、我々だけで調査を完遂せねばならないというですね、非常にハードルの高い調査になりまして、案の定、海底土の採取に手間取りまして、200gくらいしか海底土を採取できませんでした。潮の流れなども関係してくるため、簡単に海底土って採れないんですよね。富原せんせいはいつもババっと採っちゃうのでおれたちでもできんじゃん? と錯覚してしまいますが、けっこう難しい。
で、今日は個人的に望遠レンズを持っていってたので、少しアップ目で福島第一原発の状況を撮影してきました。
こちらは1号機の様子です。まもなく燃料プールから燃料の取り出しが始まりますので、建屋カバーが全部取り外されていました。カバーがついてないのが確認できますね。これも廃炉に向けて大変重要な工程ですので、現場の皆さんには頑張って頂きたいところです。
こちらは2号機(右)と3号機(左)の様子です。2号機は爆発していないのでイチエフカラーの建屋がしっかりと目視できます。これに対し3号機は水素爆発を起こしまして建屋の屋根が見えません。いずれも原子炉建屋のなかは高線量ですので、現在はデブリがどこにあるかもわからない状態。突破しなければいけないいくつものハードルがありますね。
こちらは4号機。事故当時は点検のため停止中だったところですね。燃料の取り出しも無事に終わっています。作業員の皆さんおつかれさまでした。
このように、まずは到着後原発の様子を確認したところで調査です。今回は、2〜3km近辺の海域では潮の流れが小さく、なかなかに苦戦しましたが、原発沖10km圏内に移動してからが爆釣確変に入りましたね。特にクロソイ、マゾイあたりがよく釣れました。集中して計測できそうです。
まずはこちらの珍客。エサのイワシにタコがくっついてきました。こんなこともあるんですね。引っ張り上げられず逃げられてしまいましたが、何となく縁起のいいスタート。
久しぶりの参戦となった、うみラボアドバイザーで社会学者の五十嵐泰正先生。幸先よく本日第1釣。これはマゾイですかね。キツネメバルという別名もありますね。五十嵐せんせい、その後も順調な釣果でして、以前はサメしか釣れずに「サメ王子」の称号を与えられていましたが、返上ですかね。
今回初参加されたK間さん、先日NHKで放送された「いわきうふふマップ」を見て参加下さいました。人生発の船釣りだったそうですが、なんと人生最初の釣りで60cm近くのビッグヒラメをゲット! 満足げな表情を浮かべておられました。
うみラボ測定アドバイザーの津田せんせいはワラサですかね? イナダかな? 釣りの醍醐味である「青物」を格闘の末にゲット。さすが現場の達人。それにしてもうまそう。ワラサでもイナダでも結局ブリの子ども。回遊魚なのでセシウムは不検出になるはず。
そしてわたくし小松も今回はクロソイをゲット。こちらは原発沖10kmの海域です。釣り糸が海底に着底したらすぐ食いついてきました。これですね、刺身で食ったらほんと5切れで1000円くらい取られますよ、それが食べられずに調査に回すわけですから、何というもったいなさ。
いわき市から参加してくれたK山さん。こちらも釣り初体験で初めは苦労しましたが10km沖では立て続けにクロソイをゲット。しかしまあこんなデカいクロソイを見たことありません。刺身の末端価格にしたら数万円は確実に超える高級魚。たまりません。
東京都内からわざわざいらしてくれたK森さんは、最後の最後、終了寸前で超ビッグヒラメをゲット。いやあこの表情、素晴らしいですね! これが自然とのバトルの充実感! しかしまあデカいヒラメ。今回は生き餌がなく「冷凍イワシ」で対応しましたが、冷凍でも充分狙えます。資源の回復を実感しますね。
そしてうみラボ首席けんきゅう員の八木もビッグヒラメゲット。今回は参加される皆さんに魚を釣らせるためのサポートに回って時間がなかったはずなのにしっかり釣果を残すあたり、やはりうみラボのエース!
今回の釣果です。ワラサ、ヒラメ、シロメバル、マゾイ、クロソイ、あとは珍しいところではホウボウなんかも釣れました。今回はなぜかアイナメは釣れませんでした。これらの魚は今月25日にアクアマリンふくしまで開催される「調べラボ」にて調査をし、放射性物質を計測します。ぜひお集まり下さい。
今回のうみラボですが、日テレの「真相報道バンキシャ」の取材クルーが乗り込みまして、調査に同行取材して頂きました。放送日などはわかりませんが、福島の漁業全般についてミッチリと時間を取って報道してもらえたら最高です。取材を受ける五十嵐せんせい。
今回釣った魚は、10月25日にアクアマリンふくしまで開催される「調べラボ」で放射性物質を測ります。そして、毎度おなじみの「試験操業の魚の試食」ですが、次回は10月20日ごろ解禁になる木戸川産のシャケが振る舞われるとの情報。いやあああああああ木戸川のシャケですか! もう何年も食えなかったやつですよ。本当にめでたい。試食を食べて、双葉郡の漁業再興に向けて、気持ちを新たにしたいところです! ぜひお越し下さい。
わたしたちけんきゅう員も会場におりますので、ぜひお声がけくださいませ!! では25日に会いましょう!
アクアマリンふくしま「第5回調べラボ」開催レポート
みなさんこんばんは。うみラボけんきゅう員の小松理虔です。
ちょっとご報告が遅くなりました。9月末に開催された「第5回調べラボ」の模様について、こちらうみラボブログでもご紹介致します。すでにですね、当日の模様はうみラボ首席調査員の八木ぴぽさん、調べラボ上席けんきゅう員のyajifunさんのお2人がtogetterにまとめてくださってますので、そちらもご覧下さい。
今回の調べラボで、実施回数も5回目ということで、アクアマリンふくしまでも恒例のイベントとなって参りました。イチエフで釣り上げた魚の放射線を測り、試験操業の魚をおいしく食べ、そして魚のこと、福島の海のことをもっと深く学ぶことができる。そんなイベントとして少しずつ定着しているようで、大変うれしく思います。
今回計測するのは、9月6日のうみラボにて採取した魚になります。すでに、前回のブログエントリでヒラメに関する集中レポートを掲載しておりますが、今回の調べラボでは、それ以外の、イチエフ沖のメバル、アイナメ、サンマリーナのハナザメ、小名浜湾内のボラ、この4種類について計測することになっております!!
計測にあたるのは、アクアマリンふくしまの富原獣医。手際よく魚をさばき、細かくカットし、マリネリ容器に詰め込んでいきます。
こちらは小名浜湾内のボラ。泥臭い魚だとよく言われますけれども、さばいてみると確かに泥だらけでありました。
写真右下はボラのヘソ! これがなかなかの珍味なんだとか!
そして毎度おなじみ、調べラボ名物の試食コーナーですが、今回は試験操業で連れた「カナガシラ(金頭)」のブイヤベース! 非常にダシの出やすい魚で、もちろんお刺身なんかもいけるのですが、煮込み料理に使ってもおいしいとのこと。淡白な味なので洋風の料理にもぴったりであります!
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さて、肝心の放射性物質の計測結果をお知らせ致します。
試料①シロメバル / Cs合計43.6Bq/kg / 4個体で1試料 / 原発2km沖 / 平均全長30.8cm
富原せんせいに「耳石」を見て頂くと、4個体は7〜10歳でした。10歳!!! メバルってそんなに長生きするんですね。
これだけ長生きするとなると、当然、事故後に汚染水の影響を受け、代謝が進んでいないことが想像されます。メバルは「原発近くに生息する魚で一番汚染が残っている魚」ですが、これは、根魚であまり移動せず、寿命も長く、魚食性もあるのが原因です。富原せんせい曰く「原発近傍の7歳以上のメバルを測るとこれぐらいは検出されますね」とのこと。
うむ。やはり「7歳以上のメバル」はしばらく注意が必要かもしれません。
試料②アイナメ / Cs合計8.16Bq/kg /2個体で1試料 / 原発沖2km / 平均全長39.5cm
アイナメは40㎝ほどの個体2尾を測定しました。富原せんせいによると「いずれも2歳で事故後生まれ。少し検出されていますが、小型のアイナメは大型のものより浅い海域にいるので、原発周辺の海域では小型のアイナメのほうが大型のものに比べると高い傾向があるのかなと思っています」とのこと。
事故前生まれの50㎝を超える大型アイナメは、深い海に移動するため、汚染海域から離れるのだそうです。したがってアイナメは「大きいほうが排出が進んで低い」という傾向になる。メバルは大きいほうが年齢が高く線量も高い傾向にありますが、アイナメは逆になることもあるっちゅうことですね。
つまり、現在の当該海域は、アイナメが8ベクレルほど溜め込んでしまう程度には放射性物質がある、ということになるかと思います。引き続き「40cm以下のアイナメ」は釣り続けたいところですね。
試料③ハナザメ / Cs合計8.00Bq/kg / いわきサンマリーナで採取 / 全長90cm
ここのところ継続して測っているサメ。今回は、富原せんせいがいわきサンマリーナで採取したハナザメです。
ハナザメは「海水温が高くなる夏から秋にかけて幼体がいわき沖にやってくる南方系のサメ」だそうです。今年は特に多く、小名浜港内でも目撃(釣れた)例が多数あるとか。90センチほどの大きさですが、富原せんせいによれば「今年生まれの個体」とのこと。
「卵胎生のサメなので生まれた時にはすでに60センチほどあります。成長すると2〜3mにもなりますが、福島沿岸の水温では冬を越せないので大きなハナザメはほとんど見ることはありません。サメの仲間(軟骨魚類)は他の魚(硬骨魚類)に比べて放射性セシウムを蓄積しやすいので事故後生まれの個体でも少し検出されます。現在の福島沖の汚染レベルを知るには適しています(富原)」とのこと。
ううむ。アイナメと同じで、こちらも「現在の海域」を知るには適した試料ということですね。しかもセシウムを蓄積しやすいということですから、ハナザメから放射性物質が検出されなくなったときが、まさに「福島の海の完全復活」ということかもしれません。
試料④ボラ / Cs合計4.68Bq/kg / 2個体で1試料 / 小名浜港湾内 / 平均全長44.3cm
今回の特撰素材のボラですが、富原せんせいが水族館周辺で釣りあげたボラです。
富原せんせい曰く「40㎝を超えると脂ものり刺身でもおいしく食べられます。たまに釣ってきたボラを刺身にして事務所の机に並べておくと、何の魚だかわからないけどおいしいって言ってスタッフが食べています。ボラって言うとみんな箸が止まりますけどね(笑)。小名浜は海がきれいなので泥臭さもそれほどありません」とのこと。
うおおおおおおお、マジですか! ボラなんて小名川でめっちゃ泳いでるじゃないですか! 40cmを超えると刺身で食える。。。。クックック。いい情報を知りました。
以下、富原せんせいの解説をそのまま掲載します。
「さて、計測結果ですが4.68Bq/kgですが検出されましたね。ボラは海底の泥を食むので調査を始めた当初は汚染がひどい魚だと思っていましたが、事故当年でも136Bq/kg(LB200での測定のため放射性カリウム分が少し上乗せされています)とそれほど高い値を示しませんでした。
当時の魚食性のスズキなどの魚は数千Bq/kgが当たりまえの時でしたので、泥からは魚には放射性セシウムはあまり移行しないのだと、ボラのおかげでおぼろげながら理解していました。
去年の測定データがN.D.でしたので今回もN.D.と思っていましたが少し検出されました。耳石を見ると2歳でしたので事故の直後の汚染水の影響ではなく現状の環境からの汚染だと思います。ただ、調べラボ開催中での試料の作成ということもあり、消化管の中の泥が試料に混ざった可能性もあります。消化管に泥がたくさんあるデトリタス食の魚を捌くときは注意しなくてはいけませんね。」
※デトリタス 生物遺体や生物由来の物質の破片や微生物の死骸、あるいはそれらの排泄物を起源とする微細な有機物粒子
今回は、計測した4試料すべてで放射性セシウムが検出されました。特にメバルは7歳以上ということで、高めの線量が出ることが予想されましたが、予想通りでました。しかしこれ、予想できるということがミソで、我々もかなり福島の海域の状況がわかってきたということができると思います。なんだかんだで2年やってますから、傾向が少しずつわかってきた気がします。
まあ、それでもだいぶ下がってきているとは思いますが。
一方で、アイナメの動向は、「若いほど浅い海域におり、現在の海域の影響を受けている」ことがわかってきました。大きければそれだけ溜め込んでいるというわけではないんですね。年齢によって生息している水深が変わってくると、それだけ汚染の状況も変わってくるということです。40cm以下のアイナメ、アイアイサー!
さて、次の調べラボですが、10月末を予定しております。次はどんな試食が食べられるのか!!! 舌なめずりして待ちたいと思います。
では。
第12回うみラボで釣れたヒラメを集中計測&考察
みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。
9月6日に「第12回うみラボいちえふ沖海洋調査」を行いまして、既報のように結果は「爆釣」、かなりの試料を入手することができたのですが、そんなに多くの魚を一気には測れないので、一部は計測イベント「調べラボ」に回し、その他の魚については、アクアマリンふくしまの富原獣医にすでに計測して頂きました。今回のその結果をお知らせします。
今回の計測データで特に注目すべきは「ヒラメ」のデータです。ですので今回はそのヒラメの結果のみ取り上げ、いろいろ考察していきたいと思います(ヒラメのほかにアイナメなどのデータもあるのですが、それは次回に更新します)。
実はうみラボでは、昨年11月に行った「第6回いちえふ沖海洋調査」におきまして10試料のヒラメの放射性物質を計測しています。結果はリンク先を見て頂ければわかりますが、今回もたくさんヒラメが釣れたので、同じ「10試料」のヒラメを計測し、昨年とどのような数値の変化があるかを見ていきます。
確認のため写真載せておきますが、計測するのはこれらのヒラメ。ほんと爆釣でしたな〜。
ではまずは、今回釣れたヒラメの放射性物質の計測結果からお知らせします。
ヒラメ①原発沖10km 56.3cm/Cs合計 N.D.
ヒラメ②原発沖10km 60.5cm/Cs合計 4.34Bq/kg
ヒラメ③原発沖10km 55.5cm/Cs合計 N.D.
ヒラメ④原発沖10km 51.7cm/Cs合計 N.D.
ヒラメ⑤原発沖2km 53.0cm/Cs合計 N.D.
ヒラメ⑥原発沖2km 55.0cm/Cs合計 N.D.
ヒラメ⑦原発沖2km 55.3cm/Cs合計 6.55Bq/kg
ヒラメ⑧原発沖2km 54.0cm/Cs合計 N.D.
ヒラメ⑨原発沖2km 58.0cm/Cs合計 5.53Bq/kg
ヒラメ⑩原発沖2km 2個体平均39.7cm/Cs合計 N.D.
検出された試料が3つ。その他はいずれもN.D.という結果です。海域別に見ると、原発沖2kmポイントのものが2試料(⑦と⑨)で検出。10kmのもので1試料(②)検出という結果でした。ちなみに昨年は10試料のうち半分でセシウムが検出され、最高値は40Bq/kgだったことを考えると、前回と比較して、今回のヒラメはかなり低い印象です。
昨年との比較を図にしてみました。
昨年までは数十ベクレル/kgが検出されることもよくありましたが、今回は3つ。いずれもほぼ「検出限界」に近い低さになっています。富原せんせいからも、「検出限界が7Bq/kgほどであり、ミリベクレルまで測って平均化しないと意味あるデータにはなりませんが、昨年との比較はできます。平均全長から見て年齢構成もあまり変化がないと推察されるので、数値を比較すれば昨年よりも改善していることがわかります。来年の秋も10個体測定したいですね」と、継続調査をすすめるコメントを頂きました。
2013年の秋にスタートしたうみラボですが、継続することで、このような比較ができるようになってきたのは心強いなあと思います。何事も続けてみるもんです。
昨年までのわたしたちの認識は「ヒラメは60cm以上は震災前生まれだから高い傾向にあり、60cm以下はおおむね震災後生まれであり低い」でした。シンプルに大きさだけ見ていけばヒラメのおおまかな傾向はわかると考えていたんですね。ところが、原発事故から時間が経つにつれ、震災後生まれのヒラメも成長してきますから、ヒラメの大きさだけ見ても、その個体が震災前生まれか、震災後生まれかハッキリとはわからなくなったわけです。震災後生まれのヒラメでも60cm近い個体とかが出てきたんですね。
そこで、今年から魚の年齢の分かる「耳石」をチェックするようになりました。それにより「年齢判定」ができるようになりました。そうなると、震災前生まれでも、震災時すでに成魚だった7歳以上のものと、震災時に幼魚だった5〜6歳のものと、どうも体内の放射性物質の濃度に違いが出てくることがわかってきた。7歳前後のものは身体も老化して排出ができなくなっており、震災直後に取り込んだ汚染水の影響が抜けきらず、従って高い傾向にある(高いっつっても100ベクレル行くことは稀ですが)。これに対し震災時に幼魚だった5〜6歳モノは、とにかくこの4年半でかなり成長してきたので排出が進んでいる、と考えられるわけです。
こうして継続して調査してくると、このように「ここまでは安全だな、でもここからはまだ心配だな」という線引きができるようになります。「わからない」の領域がどんどん狭まってくるんですね。まさに「知ろうとすること」によって、福島の海の情報が日々アップデートされていきます。
もちろん漁連や漁協、国の判断もあると思いますが、ヒラメに関して言えば、そろそろ試験操業の対象に入ってきてもおかしくないかな、といった印象ですね。しかしそれでも試験操業の対象には簡単には入らない。それだけ慎重な判断がなされているというわけです。関係者の皆さんの努力にはほんとうに頭が下がります。漁業者の皆さんの選択は大いに尊重しつつ、我々は我々で調査を続けていきます!!!
うみラボ第12回いちえふ沖調査レポ
皆さんこんにちは、うみラボけんきゅう員の小松理虔です。
本日9月6日、第12回目の、うみラボ調査。
爆釣です。
その模様をたっぷりとご覧頂きたいところですがそのまえに、本日の発電所の様子をご覧下さい。
いちえふは粛々と作業が進められているようでした。毎月1、2回はここに来ますが、やはり陸からも見てみたいなあ。
というわけでここからは爆釣写真をご覧頂きます。福島の海、長期にわたる試験操業により魚の個体数が増えており、そして大型化しております。うみラボに来た釣り人たちも皆さん口を揃えておっしゃいますが、例えば東京湾などで釣れるような魚とはワケが違います。福島の海の豊かさについて思い馳せずにいられません。
元東電社員で現在はappreciate FUKUSHIMA workers代表として、廃炉作業に関わる方々の支援活動をされている吉川彰浩さんに急遽参戦頂きました。もともと釣り好きだったという吉川さん。アイナメをゲットでございます。
こちらは鎌倉からわざわざお越し頂いたI川さん。いやあすごい。撮影ポイントから離れたところで釣られてたので証拠写真はあまりないんですが、アイナメからメバルからヒラメから爆爆爆釣の様子でいらっしゃいました。
船釣りは初めてというF田さんも速効で尺メバルゲット。今日は非常に感触がよく、いつもはかなり苦労する原発3km圏内での調査がはかどります。
こちらも船釣り初体験のA川さん。釣り職人の方々のアドバイスもあり、見事に尺メバルゲット!! いやあ、すばらしい。すばらしいです!
F田さん続いてはヒラメゲット! ビギナーズラックとは思えない釣果。確実にこの海域の魚の個体が回復している証左でありましょう!
わたくし小松も今回はヒラメを3尾ゲットしております!!! ドヤァァァァッ!!
そしてふたたびの吉川さん。面目躍如のビッグヒラメゲット。
釣りポイントを移し10km圏内へ。アクアマリンふくしまの吉田さん、どうしたんですか? 船酔いですか?
10kmポイントまで移動しても安定のI川さん。こちらは高級魚マゾイであります。
撮影で参加していたNHKのカメラマンさんも試しに釣り糸を放り込んでみたら、オモリが着底した瞬間にヒラメゲット。これもしかすると増えすぎてるのかもしれないですね、ヒラメが。
今日も安定した釣果を残した、うみラボ首席調査員(釣り担当)の八木。
ドヤァァァァァァッ!
ドヤァァァァァァァァァァァァァァァァッ!
いやあ、皆さん大変におつかれさまでございました。
うみラボ過去11回でも1、2を争う爆釣となりました。いつもは変わり種の魚種も入ってくるのですが、今日は種類は少なめ。ヒラメ、アイナメ、メバル、ソイ、とりわけヒラメはかなり釣れました。これらの魚種はまだ試験操業の対象になっておらず、特に慎重な調査が求められる魚種。原発直近と沖の2ポイントでかなりの数を釣れたのは非常によかったと思います。
どれもデカいです。やはり黒潮と親潮のぶつかりあう常磐沖はプランクトンが豊富であり、魚の成長もかなり恵まれているわけですね。だからこそ常磐沖の根魚は少しずつブランド価値が高まっていたわけですが、うむ、実際ほんとにすばらしい海の恵みです。これが食べられないっちゅうのはほんと悔しいですね。
今回かなり釣れたヒラメ、以前だとヒラメの「大きさ」で、ある程度年齢がわかりましたが、事故から4年半が経過しようという現在、大きさのみで年齢を判別するのは難しくなってきました。したがって今後は「耳石」を採取して年齢を丁寧に見ていく必要がありそうです。
我々のこれまでの調査では、震災前生まれ、さらに7歳を超えるような個体だと、原発事故直後の汚染水の影響が見られ、線量が高めに検出される個体もありました。これに対し、4〜5歳と、原発事故直前に生まれたような個体だと排出が進み、線量は減少傾向です。今回はヒラメがかなり釣れましたので、3km圏内と10km圏内で線量にバラツキがあるのかなどを調べてみたいと思います。
その計測結果は、9月26日に開催予定、アクアマリンふくしまの「調べラボ」でお確かめください。また19日には次回のうみラボも開催予定でしたが、ごめんなさいこちらは日程を変更して開催します。
アクアマリンふくしま「第4回調べラボ」緊急報告
アクアマリンふくしまで開催されている「調(た)べラボ」も第4回目。今回のミッションは①8月9日に釣り上げた魚の放射性物質の計測の続き、そして②いわきの試験操業の魚介類の試食。つまり、しっかり測って、しっかり食べる、それが調べラボです。今回も富原聖一獣医にお世話になりました。
まずはこちら。原発沖2kmのヒラメの計測からスタート。ヒラメ、かなり大型でして、5枚下ろしにします。3枚下ろしじゃありませんよぉ〜5枚です。これがですねえ、調査のためとはいえ、白身のウマそうな身なんですわ。寿司屋で食ったらいくらになるんだべ、っていう感じの。昆布〆めになんかしたら絶品でしょうなあ。おいしい吟醸酒など合わせたいものです。
そして調べラボでは定番になった「耳石」の取り出し。
耳石とは、魚の頭にある器官で、年輪のようなものが刻まれ、それを見ることで魚の年齢がわかるんですね。昨年のうみラボでは「体長みればおおまかに汚染の傾向もわかる」というのが共通理解でしたが、例えば同じ大きさ、同じ種類の魚でも、成長には個体差があるため、それが「原発事故前産まれ」か「原発事故後産まれか」は、体長だけでなく耳石を調べなければわからない。ということがわかってきまして、調べラボでは、毎回富原獣医に耳石を調べて頂いております。
細かく刻んだ魚の筋肉をマリネリ容器に入れ、計測器に入れたら計測がスタート。富原獣医が指差すように、画面上にスペクトルが出てくるので、このピークの山を見極めることで、あらかたどのくらいのセシウムが出てくるかわかってしまうんですね。本来は60分計測するわけですが、おおまかな傾向なら数分で分かってしまいます。これは高そうだな、これはN.D.っぽいなあとか。もちろん、最後まで測らないと検出下限値も下がりませんから、すべてちゃんと60分測りますけれど。
いやあ、今回は夏休みも佳境ということでたくさんの子どもたちに来て頂きましたよ。とくにサメの解体なんて非常に人気がありまして、富原獣医がサメの内蔵や皮膚などについてしっかりと説明してくれます。メモを取る子どもたちもいて、放射線云々より、やっぱりみんな魚のことが知りたいよなあと、まずはそっからだよなあと、いつも思わされます。テレビカメラも何台も来て頂きました。じわじわとこの取り組みが知られていくといいですね。
こちらがサメの解体の様子。子どもたちは意外と真面目に、そして楽しそうに見てくれます。魚の解体なんて、一見残酷ですけれど、でも刺身だってなんだって、こうして捌いて作るわけですから、気持ち悪いだ臭いだ言ってられません。それが食うってことですからね。「食育」に力を入れているアクアマリンふくしまならではの光景。調べラボは、この「サイエンス」な感じがとても楽しいんです。ぜひ皆さんにも味わって頂きたいなあと思います。
そして試食。今回は、ワタリガニのクリームパスタ。いやあ、ガーリックの旨味がきいて、そしてこのカニの濃厚な風味。ワタリガニってーと、なんかちょっと高級なカニのイメージありますけれども、シーズンになると小名浜港あたりでもぷかぷか水面近くで泳いでいるのが目撃されます。富原獣医も、よく小名浜港の岸壁にへばりついてるワタリガニを網ですくって食べるそうです。意外と庶民的なカニなのかもしれません。
もちろんこのワタリガニは試験操業の対象になっています。甲殻類はすでに過去の調査でセシウムを溜めにくいことがわかっており、さらに今回の事故後のモニタリング調査でもかなり初期の段階から安全性が確認されていました。このため、ワタリガニは試験操業の対象になっています。
ちなみに、国の基準って100Bq/kgですけれども、漁協の自主基準はその半分の50Bq/kg。さらにそれ以前に、数ヶ月に渡ってN.D.が続くなど厳しい条件をクリアした魚種のみ試験操業の対象に加えられているので、漁協の基準が50Bq/kgだからっつって40Bq/kgとか30Bq/kgの魚がガンガン流通しているわけじゃない。試験操業の対象になっている魚種、まずN.D.ですね。
―そして計測へ
ざっくりとイベントについて振り返ったところで、放射性物質の計測結果です。
試料①ヒラメ 原発沖2km/66.2cm/N.D.
耳石で年齢判別を行うと5歳でした。つまり「原発事故前生まれ」です。しかしN.D.
富原せんせいによると「事故当初は若魚だったため代謝が進み検出限界以下となったと推察される」とのこと。事故前産まれでも、現在5〜6歳くらいだと事故当時は若魚です。事故当時にすでに成魚だった7歳以上でなければ、ほとんど検出されないことがうみラボ調査でも多くなってきました。「福島県で漁獲されるヒラメの大部分は2〜4歳魚なので、来年あたりはヒラメも試験操業対象種に含めてもいいのではないかと思います」と富原せんせい。うむ。ヒラメ復活の日は近いかもしれません!
試料②ハナザメ 原発沖2km/86.9cm/Cs合計 8.39Bq/kg
体長80㎝を超えていますが、「今年生まれの個体」とのこと。成長の早いサメなんですね。
富原せんせいによると、こちらのハナザメ、「夏になると南方から回遊してくるメジロザメの仲間で、この時期は比較的良く釣れる」そう。こちらの個体は、今年生まれの個体ですし、放射性セシウムの排出の遅い軟骨魚類ですので、「現在の原発前の海洋汚染の程度を最もよく反映する」試料だということです。ちなみに、うみラボの前年の調査(2014/8/17)では、Cs137が19.6Bq/kg、Cs134が6.3Bq/kg検出されました。今年はCs137が8.4Bq/kg、Cs134がN.D.ということで、前年に比べて半分以下ですが、「まだ軟骨魚類は放射性セシウムが検出されやすい」そうです。
まあ、ハナザメなどは食用ではないので我々が食うわけではありませんが、現在の海の状況を見ると、セシウムを溜め易い軟骨魚類の場合は、やはり出てしまう。汚染がゼロというわけではないと、そういうわけですね。ううむ。継続した調査が必要ですね。
試料③クロソイ 原発沖10km/43.2cm/N.D.
ビッグクロソイです。富原せんせいに耳石を査定してもらうと5歳ほどとのこと。事故当時は若魚。このため結果はN.D.でした。「クロソイは根に付く魚であまり移動しないので、少しは放射性セシウムが検出されるかなと思いましたが、クロソイは成長が早いので代謝も早く、事故時に若齢だった個体は現在では排出が進み、今回のようにN.D.か若干検出される程度になるかと思われます」と富原せんせい。今回はヒラメもそうですが、事故前生まれでも、事故当時に若魚であれば排出が進むと言う傾向は一致するようです。
試料④キツネメバル(マゾイ)3個体 原発沖2〜10km/平均全長32.1cm/Cs合計 17.0Bq/kg
マゾイとよばれています。こちらは3個体合わせて測定しました。
耳石から年齢査定すると6〜7歳とのこと。ヒラメやクロソイと違って「事故当時すでに成魚」だったことが推察されます。これぐらいの年齢の根魚ですと放射性セシウムは検出されます。4月のうみラボ調査でもキツネメバルを釣り上げていますが、そちらは「事故後生まれ」でして、結果はN.D.。やはり、魚の年齢が大きなポイントとなりそうですね。
試料⑤カスザメ 小名浜沖/84.0cm/Cs合計 44.9Bq/kg
こちら、7月に小名浜沖で獲れたカスザメ。うみラボ調査ではなく、富原せんせいが捕獲したものになります。漁師さんはバイオリンというそうですね。確かに身体がバイオリン型・・・。
原発から離れている小名浜沖なのに、44.9Bq/kg検出されたことは気になります。以下、富原せんせいからのコメント。
「非常に大きな個体ですので事故前生まれだと予想されますが、軟骨魚類は年齢査定が難しいのではっきりしたことがわかりません。今度、年齢査定できるよう勉強しておきます。結果は50Bq/kg近い値となりました。小名浜近辺で獲れる魚としては高い値です。震災前生まれで、あまり移動しない底生の軟骨魚類だからでしょうか。カスザメは普段、砂の中に隠れており、イワシなどの回遊魚が近づいてきたら素早く食いつきます。餌は主にイワシ類なので餌からはあまり汚染されていないと考えられるので、今回の汚染は事故後に流された大量の汚染水の影響が残っていたと判断できます。硬骨魚類の場合は海底土の汚染は直接、移行しないことはわかってきましたが、底生の軟骨魚類の場合にもはたして当てはまるのか? 事故後生まれのカスザメを測定してみないことにはわかりませんね」
ううむ。別にサメは食わないので関係ないっちゃ関係ないのかもしれませんが、気にはなりますよね。セシウムの移行についても、硬骨魚類とはまた違ったかたちになっているのか、継続した調査が必要です。ううむ。次回以降、我々がガンガンサメ釣らないとダメかもですね。
試料⑥フトツノザメ 小名浜沖/約110cm/Cs合計5.12Bq/kg
こちらも、富原せんせい持ち込みの、小名浜沖のフトツノザメ。いかにもサメといった風貌です。以下、富原せんせいからのコメントです。
「カスザメと同じく軟骨魚類ですが遊泳性のサメですので、カスザメほど汚染されていなかったようです。比較的大きな個体でしたので事故前生まれだとは思いますが、年齢はちょっとわかりません。普段、あまり汚染されていない深い海域に生息している種類ですので、N.D.かと思っていましたが、少し検出されました。現状の海の汚染度からくるものか、事故直後の汚染水の影響が残っていたのか判断しづらい微妙な値です。軟骨魚類って水産重要種になっていないものが多くあまり調べられていません。今後は、もう少し、軟骨魚類のサンプルを増やさないといけませんね」
今回の調査&計測で改めて理解できたのは、
●事故前生まれか、事故後生まれか、だけではなく、
●事故当時成魚だったか、事故当時若魚だったか、事故後生まれか、この3つを考える必要があると言うこと。そしてそれを判別するには「年齢を読み解く」ことが必要だということですね。つまり耳石を見よと。ううむ。福島の魚の今を知るには、やはり「耳石」ですか。
そして、サメ。軟骨魚類はセシウムを溜め易いため、それがもし1〜2歳と若ければ、現在の海から受けた影響が数値化されます。現在の海洋汚染の状況を知るには、サメを見ることが必要かもしれません。サメってそんなに食べないので、そこまで興味が湧かなかったのもありますが、今後はさらにサメに着目していく必要がありそうですね。
うみラボ、どうやらサメ釣り船団にならないといけなさそうです。
うみラボ第11回いちえふ沖調査レポ
みなさんこんばんは。うみラボけんきゅう員の小松理虔です。暑い日が続いておりますが、皆さんご機嫌いかがでしょうか。1週間遅れになってしまいましたが、8月9日に行われました、うみラボ第11回いちえふ沖調査レポートをお送りします。
で、いろいろと何書くべかと悩んでたんですが、当日の写真を振り返ってプレビューしてたらいつになく天気もいいし、魚は爆釣だし言うことあんめえ! ってことで、とにかくこちらの爆釣結果をご紹介しますんでグヌヌ・・・しててくださいね。
まずは原発沖2kmあたりのところで探ってみる。
ありゃりゃ、早速何か釣れましたぞ?
うっひょひょ〜いい!! 見たことないくらいデカいヒラメ頂きました多謝。
アクアマリン富原獣医がブッリブリの超大型シロメバルゲット!
続いてマゾイ。これは刺身や煮付けで食うと最高。じゅるり。
ナンジャコリャアアアアアアアアアアアアアアア!!!
当たりがとまったので原発沖10kmのポイントへ。
料亭で食ったらとんでもない高値になるクロソイ。これは刺身で食べたい。
ピッチピチのワラサ(ブリになる手前の子ども)!! 青魚で釣りも刺激的!
おおおおおおこれは珍しいムシガレイ!! うみラボでは初!!
うおおおおおおおお超ビッグアイナメ! 昆布〆にして頂きたい。
つまり爆釣!!!
ただですね、これらの魚は、まだ試験操業の対象になっておりません。ちっきしょーこんなにうまそうな魚がガンガン釣れてるのに、これを食うことも煮ることもできずに調査に回さなければならないとは痛恨の極み。ほんと、原発事故によって失われてしまったわたしたちの財産について考えずにはいられません。
今回痛感したことがあります。
うみラボには、様々な動機を持ったいろいろな人たちが参加されます。原発を近くで見てみたい人。船に乗るのが好きな人。目の前で現状を確認したい人。いろいろです。今回は、「震災前から海釣りを愛していた人」が多数参加されました。それで話を伺ったんです。
そうしたら、とある方が「正直今までは踏ん切りがつかなくて震災後は釣りを辞めていた」と言うんですね。原発事故に対する思い、そして魚に対するさまざまな考えや憶測。いろいろ複雑な気持ちになり、気持ちよく釣りを再開することができなかったのだそうです。
しかし、今回のうみラボで実際に目の前に原発を視界に捉えながら魚釣りを「楽しめた」ことで踏ん切りがついたと。帰りの船の上でも「これからは気持ちよく釣りができます」とおっしゃってくれたことが本当にうれしかったです。うみラボやっててよかった。
そうなんですね。やはり、自信を持ってこの福島の豊かな海と向き合って頂きたい。
もちろん、まだ原発の汚染水の問題は続いていますし、試験操業の対象になっていない魚種もあります。しかし、取り返した多くのものがある。それを見つめて欲しいと思います。一部を除いては、もうほとんどの個体がN.D.であり、原発沖から遠く離れたいわきや相馬の海では、その傾向はさらに顕著なものになっています。
釣り人たちが堂々と、いやむしろ「何も余計なことを考えこともなく」普通に釣りが楽しめる状況になりつつあります。原発事故の収束まで気は緩められませんが、できる限り地元の釣り人に寄り添ううみラボでなければなあと兜の緒を締め直したところでありますっ!
そして計測へ
それでは放射性物質の計測結果も合わせてお送りします。本来でしたら8月23日にアクアマリンふくしまで開催されてる「調べラボ」にて計測を行いますが、調べラボで調べる魚はもう充分に揃っていることもあり、10km沖のポイントで釣れたものを数体、こちらで速報いたします。※なお、検査中の魚の写真でポイントが「2km」となっているものがありますが、すべて10km沖の魚です。
試料①ワラサ(ブリ)原発沖10km/64.5cm/N.D.
ワラサ(稚鰤)は回遊魚ということで、これはもう出ないことが想定されるわけですが、結果もN.D.と予想通り。富原せんせいによると、推定年齢は1歳半。胃の中にはイカが入っていたそうです。ワラサのエサは回遊性のイワシや、無脊椎動物の沖アミ類、イカ類なので餌生物も汚染されていません。従ってN.D.だと。ナットクですね!!!
試料⑤アイナメD 原発沖10km/44.8cm/N.D.
続いてアイナメ4尾。一番大型のアイナメAがもっともセシウムがあるため「事故前産まれ?」かと思いましたが、耳石を調べたところ3歳だったそうです。つまり震災後産まれ、現在の原発沖の影響を受けている可能性が高いということです。「アイナメが7Bqになっちゃう程度」にはまだ汚染が残っているとみるべきです。それでも7Bqですので国の基準値は大きく下回ることにはなりますが。
反対に、もっとも小型のアイナメCが実は年齢が一番上で5歳くらいだろうと。するとこちらはギリギリ震災前産まれの可能性がありますが、排出が進んだためか低かった。個体差があるようですね。しかし、いずれにしてもかなり低くなっていることがわかりますし「原発周辺のアイナメで事故後生まれの個体はもう10Bq/kgを超えなさそう(富原)」というのが現状のようです。
次はもっと大型の、震災前産まれのビッグアイナメを釣らなければなりませんね!!!
試料⑥ヒラメA 原発沖10km/67.3cm/Cs合計20.6Bq/kg
試料⑦ヒラメB 原発沖10km/65.3cm/N.D.
試料⑧ヒラメB 原発沖10km/56.8cm/N.D.
さて、こちらは末端価格はいくらになるんだろうといううまそうなヒラメです。3尾計測しておりまして、一番大型のものから約20Bq/kgが検出されております。気になりますね。
富原せんせいが耳石から年齢査定したところ大きな個体は8歳、他が5歳でした。「7歳を超えるような老齢魚だと事故直後に流された大量の汚染水の影響が残っていることがあります」とのこと。70cm近い超大物でなければ検出されることはマレである、ということになりますね。これは安心できる材料ですね。
うみラボが始まった当初は、震災前に生まれたような個体からはけっこうセシウムが出てたのですが、この2年くらいの間にも排出が進み、大型のヒラメにおいても放射性物質の量は減っていることが推察されます。「震災前産まれのヒラメはヤバい」という認識から「震災前産まれでも100Bq超えるのは稀」というようにアップデートする必要がありますね。
試料⑨イシガレイ 原発沖10km/61.5cm/Cs合計94.9Bq/kg
最後の検体のイシガレイですが、94Bq/kgと、かなり高めのセシウムが検出されました。非常に気になります。アクアマリン富原獣医によると、「60㎝を超えるイシガレイは滅多に見ることはできません。相当な年だと推察していましたが、9歳を超えていました。耳石の層が厚く薄く削らないと正確な年齢はわかりませんが、たぶん10歳前後だと思われます」とのこと。
やはり「事故前の生まれで底魚」ということで、比較的高い放射性セシウムが検出されてしまいました。富原先生によれば、カレイの仲間は寿命が長く15年ほど生きるようですので、世代が一回りするまでは注意深く見ていかなければなりません。
カレイといっても、うみラボアドバイザーの津田せんせいによると、「イシガレイはかなり獰猛な魚で小魚や貝まで食べ、どちらかというとヒラメに近い生態の魚です。底引き網の試験操業の対象になっているマガレイなどとはかなり違い「カレイ」と一括りにできないんです」とのこと。なるほど。カレイといってもいろいろあるわけですよね。
沖合に生息するムシガレイやサメガレイなどは生息環境があまり汚染されていないので汚染度は低いものの、沿岸性のカレイで大型のものは汚染が残ってるようです。特に、マコガレイ、イシガレイ、ババガレイ(ナメタガレイ)は、まだ気を付けないといけません。
そして、こうしたマコやナメタは、いわきの漁師がもっとも得意とする、そしていわきの漁業が育成やブランド化に力を入れて来た魚種でもあります。そうした「沿岸性のカレイ類」にセシウムの影響が強く残ってしまっているというのは、ほんとに悔しいことです。地物が食えないわけですから。
今後しばらく、沿岸性のカレイを注視していく必要がありそうですね。釣らねば!!
さて、今回はいちえふ沖10kmで釣った魚をメインにレポートしました。23日の調べラボでは、今回のうみラボで釣り上げた「2km沖の魚」について重点的に計測していきます。そしてなんと試食は「ワタリガニ」関連という話が漏れ伝わってきております。行かねば! そして食べねば!!!!