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いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

第8回うみラボ 福島第一原発沖調査レポ・メバル編

マダラ爆釣の第8回うみラボ。今回がレポート第2弾です。

前回の投稿にも書きましたが、メバル狙いで原発沖に船を出したのに、竿に食いつくのはマダラばっかり。どうも禁漁中に増えてしまったようです。しかしこれでは調査にならない。確かに「釣り」としては面白いのですが、ぼくたちの目的はあくまで「釣り」ではなく「調査」であります。

ほ、ほんとうです。

ということで、原発沖10kmのマダラ爆釣ポイントを一旦離れ、船長の判断のもと小良ケ浜沖約9kmのポイント(原発からはやはり10kmくらい)で、改めてメバルを狙うことに。

するとですね、早速当たりが。

この日乗船して頂いたアクアマリンふくしまの吉田せんせい、いやあ見事な腕前で、さっそく連チャンでメバルを釣り上げて頂きました。上の赤いほうが「ウスメバル」、下の黒いほうが「シロメバル」です。黒いのにシロメバルっちゃどういうことよ! とも思っちゃいますが、メバルの種類もせっかくだから覚えちゃいましょう!

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船酔いだったのか、さきほどまで具合悪そうに灰のようになっていたうみラボけんきゅう員八木もやる気スイッチが点灯。見事な尺メバルを釣り上げました!! さすが八木けんきゅう員。新しいリールが好調だったのか、次々にメバルを釣り上げ、船長からも「八木さんはセンスある」とお褒めの言葉も頂いたようです。ぐぬぬ

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アクアマリンふくしまの富原せんせいも順調で、メバル以外にもこちらアイナメちゃんを釣り上げて頂きました。アイナメも魚の汚染状況を知るために非常に重要な検体ですので、しっかりと持ち帰ります。それにしてもアイナメちゃん、真っ正面から見るとかわいいですね。

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原発沖での釣りの時間はおよそ2時間半程度でしたでしょうか。ご覧のように釣果も申し分なく、これだけあれば計測のための検体は充分です。マダラ、メバル各種、アイナメ、ソイなど、いろいろな魚を釣ることができました。いやあ、やはり釣りは楽しい。

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さて、肝心のメバルですが、この後放射性物質の計測も行っておりますので、まずはその結果を皆さんにご紹介したいと思います。メバルは1尾では量が足りませんので、複数尾を一緒に混ぜて1検体としております。

今回の測定はうみラボ史上、かつてないほどの充実内容となっております!!!


1、シロメバル(6個体で1検体)
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Cs137 : 12.2Bq/kg Cs134:N.D. Cs合計:12.2Bq/kg



2、シロメバル(4個体で1検体)
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Cs137 : 32.1Bq/kg Cs134:N.D. Cs合計:32.1Bq/kg



3、シロメバル(5個体で1検体)
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Cs137 : 20.1Bq/kg Cs134:N.D. Cs合計:20.1Bq/kg



4、キツネメバル(別名マゾイ)(2個体で1検体)
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Cs137 : N.D. Cs134:N.D. Cs合計:N.D.



5、ウスメバル(4個体で1検体)
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Cs137 : N.D. Cs134:N.D. Cs合計:N.D.


ドヤァァァァァァァ!!!!

この計測だけで、シロメバル15尾、キツネメバル2尾、ウスメバル4尾、全部で21尾のメバルを投入しています。いやあ、これ、市場価格にしたらとんでもないですよ。メバルはまだ試験操業の対象になっていない魚種ではありますが、これほど豊かな漁業資源を「食べることができない」というのは、痛恨の極みです。

本来でしたら、このメバルたちが漁師の稼ぎとなり、そして私たちの食卓を豊かにしてくれるわけですよ。原発事故で私たちが失ったものもの大きさを感じずにはいられません。悔しいし、とても悲しいですね。怒りと言っていいかもしれません。だって、食べられないんですよ? こんなうまそうなメバルが。チキショー!!


さて、怒りをおさえて今回の調査結果の分析です。

まずはアクアマリンふくしま富原獣医からのコメントをご紹介します。

1、シロメバルについて

今回は3試料です。①12Bq/kg、②32Bq/kg、③20Bq/kgでした。②、③に関しては耳石から年齢も見てみました。②は5歳が2個体、6歳が2個体、7歳が1個体。③は4歳が1個体、5歳が1個体、6歳が3個体でした。思ったよりも若い個体ですね。シロメバルは15年ほど寿命があるので10歳以上の個体も多く含まれていると思っていましたが、ほとんどが5〜6歳でした。釣りで獲れるシロメバルが5〜6歳がメインの魚だとすると、100Bq/kgを超えるようなメバルはうみラボの調査ではなさそうです。


2、キツネメバル、ウスメバルについて

キツネメバル(マゾイ)はN.D.です。キツネメバルは長生きする魚種で、放射性セシウムが検出されやすい魚なのですが今回は検出限界未満でした。大きな個体でしたので50Bq/kgは超えそうだと予想してたんですが。耳石の年輪を見ると5〜6歳らしく、大きい割には若い個体だったようです。
ウスメバルもN.D.でした。シロメバルと違って成長が早いので3〜4歳の個体だと思われます。2個体ほど耳石の年輪を数えてみましたが、結果は3歳でした。シロメバルと比べて沖合に生息するうえ、2012年生まれなので汚染されなかったようです。

なあるほど。

同じような大きさでも年齢を見ないと詳しい状況がわからないということですね。

例えば「30cmのシロメバル」というとき、(ア)震災時すでに成長しきって30cmになっており、その後も成長が止まっている個体と、(イ)震災時はまだ成長途上にあり、最近になって30cmまで成長した個体と、2種類は存在するということです。

(ア)の場合は、すでに成長し切っているため、これまでの4年間でも排出がなかなか進まず、震災直後に取り込んだ放射性物質が抜け切らずに、未だに体内に残っているパターン。老齢メバルとでもしておきますか。

(イ)の場合は、まだ成長途上にあるため、これまでの4年間で排出が進み、震災直後に取り込んだ放射性物質が抜けていて、検出されても非常に低いかN.D.となるパターン。青年メバルとしておきましょう。

つまり、「30cmのメバル」でも、大きさだけ見たら「老齢メバル」と「青年メバル」とで見分けがつかないということです。いやああこれには参りました。わたしたちうみラボでは昨年「ヒラメ」について「大きさを見ることで年齢がわかり、汚染の状況もある程度推察できる」ということを学んだのですが、どうも大きさだけでは判断できないというわけです。

そこで、魚の年齢を見極めるために、富原せんせいのコメントにもありますが「耳石(じせき)」を見ることになります。耳石は平衡感覚を司る器官で、通常は頭の中にあります。この小さな器官を見ると、木の年輪のように成長が刻まれていて、年齢がわかるというんですね。

メバルの耳石は小さいので、マダラの耳石を参考に見ていきましょう。ちょっとグロい画像もありますが、大切なので掲載しておきます。マダラの頭部を切り、耳石を採取します。わかりますか? この白い物体が耳石です。小さい器官なのでピンセットで慎重に取り出します。(以下、写真提供:アクアマリンふくしま

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こちらがマダラの耳石。ピンセットの先くらいの大きさですね。

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こちらの顕微鏡の写真は、メバルの耳石です。顕微鏡で見ると、このように年輪を確認することができ、震災当時の状況(すでに成長が止まっていたのか、成長途上だったのかなど)も見えてくるというわけです。

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そこで改めて今回のデータを見ましょう。

富原さんが耳石を調べてみたところ、シロメバルの多くは5〜6歳だったことがわかりました。これらのメバルは、震災時は1〜2歳と非常に若く、その後、希釈の進んだ海で成長したため、震災直後に取り込んだ放射性物質の排出が進んだ、と推察されるわけですね。

しかし、それでも現状「数十ベクレルは残ってしまう」ということになろうかと思います。これは国の基準値を下回る数値ではありますが、ごくまれに高い数値のメバルが見つかることがあり、慎重を期して試験操業の対象から外されているわけです。こうした5〜6歳のメバルが、今後どのように排出が進んでいくのか、さらに長期的に調べていく必要がありそうです。

これに対して、ウスメバルは、30cm近くあっても、耳石を見たところ3歳。震災後に生まれ、希釈の進んだ海で成長しているわけですから、当然低い結果になることが予想されますし、結果はN.D.でした。成長の早い魚なんですね。

するとそうか、成長が早い種類なのか、遅い種類なのかを見ていく必要もあるということか。

メバルは寿命の長い魚でもありますし、同じ大きさでも、老齢と青年と混ざってしまっているわけですから、なかなか安全を判断をしにくい魚種なのかもしれません。ううむ。震災当時に被曝してしまったメバルが死んですべて次の代になるまでには、ご長寿だけに時間もかかりますからね。

メバル

今後もやはり継続して調査していく必要がありそうです。