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いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

うみラボ第5回海洋調査まとめ

皆さんこんにちは、うみラボけんきゅう員の小松です。

今回は10月25日に遂行された第5回うみラボ海洋調査の模様をご紹介したいと思います。が、わたし当日仕事があり調査に行けなかったのです。そこで今回は、海洋調査に同行して頂いたベジラボの川浦智子さんにレポートを書いて頂きました。

ベジラボは、野菜にまつわるさまざまな活動を行っている千葉県柏市の団体。柏市といえば福島第一原子力発電所の爆発事故で飛散した放射性物質ホットスポットとなってしまい、地域の農産物が大きな危機を迎えたにも関わらず、生産者と市民が一丸となって共通の安全基準を取り決めたまちとして知られています。(うみラボでアドバイザーをして頂いている筑波大学の五十嵐せんせいも関わっていらっしゃいましたね)

そのベジラボ、柏市では地元の野菜を使ってさまざまにレシピを開発したり、野菜について学びの場を作ろうとさまざまな活動を行ってきました。「うみラボ」は魚のことを考えますが、「ベジラボ」は野菜のことを考える。なるほどこれは非常に考えが近いかもしれない、ということで今回のツアーに参加していろいろ意見交換をさせて頂きました。

その中心人物である川浦さんが、うみラボの調査についてどう感じ、実際に何を見てきたのか、ぜひ今回のレポートをお読み頂ければと思います。


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いわき海洋調べ隊「うみラボ」に参加して 川浦智子


―柏からいわきへ

「うみラボに来ませんか」と、うみラボアドバイザーの五十嵐先生からお声がけいただき、10月25日(土)早朝、千葉県柏市からいわきへ向かいました。そのレポートを書いてほしいというご依頼を全力でお断りしたのですが、とにかく外から見て感じたことをそのまま書けばいいから、とのことで、恐る恐るお引き受けいたしました。間違っている点、不快な点などございましたら、教えていただけたら嬉しいです。私自身の学びにさせて頂きたいと思います。

私の住んでいる千葉県柏市という場所は、3.11の際、ホットスポットとして話題になった地域です。自分は料理の仕事をしており、母という立場からも「食べる」ということを大切にしていました。また身土不二の観点から、なるべく野菜は地元のものを購入していました。

そんな時東日本大震災がおき、柏がホットスポットだと報道されると、身体に良いと言われていた地元の新鮮な有機野菜は、一夜にして汚染物質扱いされるようになりました。一生懸命農産物を作っていた生産者さんを思うとなんとも申し訳ないのですが、柏産の野菜を手に取れない自分がいました。

そのうち、放射線量を測ったら数値が低かったので安全だ、という情報が入ってきましたが、数値を見てもなにが安全なのかわかりません。汚染であるのか風評被害であるのか・・。柏では作る側も消費する側も、どう対応していくのが良いか、ということを他の地域の方々よりも深く考えざるを得なかったのです。そうしなければ、柏産のものは扱えない状況でした。

情報が錯綜する中、放射線のことを学び、そのデータから自分なりに考えて選択肢を選ぶという科学リテラシーが地域に自然と浸透してきたように思います。震災後は大変厳しい状況でしたが、今は生産者も消費者も農産物に対する意識が高くなり、その部分においては結果として良かったように思うのです。「ピンチはチャンス」となったわけです。いわきに向かう車の中で、なんとなくそんなことを思い出していました。


―うみラボ海洋調査

久之浜に着いてうみラボ研究員の八木さん、大川魚店の大川さん、長栄丸船長の石井さんと初対面♪ ちょっと緊張しましたが、みなさんのっけから爽やかに明るくて、柏から一緒に同行している大瀬さんや、五十嵐先生とみなさんで、林間学校に向かうような楽しい気分になっていました。

海がしけているとのことで、八木さんから酔い止めのお薬をいただき、いざ出港! 

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波はうねっていましたが日差しは穏やかで、空は高く、海は広く、どこまでも青が広がっていました。

海側から陸を見たのは遊覧船以来の体験!陸の地形が良くわかるものだなあ! 

久之浜漁港を出てすぐに切り立った崖が続きます。その地形から、人の暮らしが展開しづらい地区であるように感じました。この場所に発電所が建設された理由はそのあたりにあるのでしょうか。

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広野火力発電所を通過。福島第一・第二原発が稼働しなくなった今、この発電所は首都圏に電気を送るため、休みなく稼働しているとのこと。東京電力により福島に建設された発電所は、首都圏に送るための電気を作っている(た)、という事実に、苦しさを覚えました。

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再び切り立った崖が続き、福島第二原発に到着、そこを過ぎるとまた崖です。途中に放射能汚染ゴミを処理する焼却施設らしきものを建設していました。あの町にはもう人はいないのだろうか、と思いました。

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遠くに小さく福島第一原発が見え始め、ちょっと緊張してきました。さぞまがまがしく見えるのだろうと少し怖いような気持ちでいましたが、近付いてきたそれは、エーゲ海の白い建物のように静か…。

もし、この原発があの崖の上に建設されていれば、被害はもっと小さくてすんだのに、素人の私だってそう思うのに、なぜ海沿いに建設したのでしょう。

うみラボの八木さんによれば、宮城県原発を造るにあたり、東北電力は地元の方の意見を聞いて高台に建設したけれど、東京電力はそうしなかったとのこと。効率化を優先したのでしょうか。先人・地元の意見を聞くことがどれほど大切か、思い知りました。

2011年3月11日、あそこに津波が押し寄せて冷却装置を押し流したのだ、と想像しようとしましたが、上手く出来ませんでした。少しでも早く様々な処理が終わり、被害を受けた方々に穏やかな暮らしがもどるよう、ただただ祈りました。

福島第一原発から1.5キロくらいのところで船を停止させ、いよいよ海洋調査です。採泥の機械エクマンパージ? を海底に沈めるのですが、潮流が速くて採泥器が流されてしまい、なかなか砂が採取できず!! 何度かトライしましたが、十分な量を集められませんでした。海が相手だとこういうこともあるわけです。

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みなさんがっかりしているのかと思いきや、にわかに活気づくうみラボメンバー♪ 釣りざおを取り出し、釣り、いや、サンプル採取に取りかかりました。みなさん釣りキチなんです!

このサンプル採取にあたって、またまた素人の疑問が・・。

柏で被放射線量が問題になった野菜は動かないけれど、魚は餌を求めて泳ぎ回ってしまう。種類によって行動・生活パターンが違うのに、釣れた魚を「魚」とひとくくりにして考えてよいのかな?

こういう素人のアホな疑問に、五十嵐先生はあきれもせず丁寧に答えてくださるので助かります。

「採取した魚から得た情報を活かすには、その魚がどんな食べ物を好み、どんな場所に住み、どう成長するのか、を知っている必要がある」のだそうです。潮の流れとか、海底の砂の状態とか、様々な海の知識も必要でしょう。海を知る、魚を知る、だからこそのうみラボ!なんだ、と納得。

生き生きと釣りざおを振っている釣りキチうみラボメンバーは、海のこと、魚のことを良く知っている方々でした。話を伺いながら、私もいわきの海のことが知りたくなってきました。

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船が停まったため、風が弱くなり、日差しが温かく感じられました。ゆりかごのように船が揺れ、海の力にただただ癒され、ふと横を見ると柏から同行してきた大瀬さん、爆睡! いわきの海に、一番癒されていたのは彼女です!!(笑)

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あまりの気持ちよさにう~んとのびをしたら、ヘリコプターが飛んでいるのが見え、思わず手を振りました。船長の石井さんが走って来て、「手を振らないでください、海難事故だと思われます」とおっしゃいました。わっ、やっちゃいました。

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同乗してくださった漁師の方がヒラメ、五十嵐先生がアイナメ、ドンコを釣ったところでタイムアップ。海がしけていて釣果が少なかったとのことですが、海釣り初体験の自分にとっては、十分な感動でした。アクアマリン福島で線量を計測するため、魚たちは大切に持ち帰ります。

スピードを上げて帰路に就く長栄丸。遠ざかっていく福島第一原発を見ていたら、不意に涙があふれました。いわきの海、元気なうみラボメンバーみたいに、きっと完全に元気になるから、と思いました。うみラボの皆様のおかげで船酔いもなく、無事下船。

長栄丸丸船長の石井さん、本当にお世話になりました。


―うみラボツアー第二部

うみラボツアー第二部はいわきの名店巡りです。

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災後再建したという「草の根」でランチをいただいた後、海洋調査隊でご一緒した大川さんのお店「大川魚店」さんへ。大変失礼ですが、思っていたよりずっとずっとクオリティが高く、自社製品の6次化に大成功なさっているお店でした。

出荷規制から外れたいわきの名産メヒカリ・すじこをゲット♪ さばのみりん干し、サーモン、酒盗・イカキムチ・・・・・もうこうなったら日本酒も買わなくては♪

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次はかまぼこの「貴千」さんへ。こちらにはうみラボメンバーの小松さんがいらっしゃるということで、楽しみにしていました。いわゆる板のついた一般的なかまぼこをイメージしていましたが、貴千さんのかまぼこは魚の形だったり、ワインと合う味だったり、パッケージがすごくしゃれていたり、かまぼこの概念をくつがえす商品ラインナップで衝撃を受けました。小松さんが楽しそうにお仕事の話をなさるのがなにより印象的でした。


―うみラボツアーを終えて

うみラボツアーに参加して、この活動にはごまかしや嘘が無いとわかりました。東京電力や国のデータを信じられない方々や、いわきの海に関わるみなさんに安心を与えることが出来る、大変重要な活動だと思います。

ただ、安心と安全は違うものです。釣れた魚の放射線量の計測データの値が低かったからといって、いわきの魚は安全だ、と言いきることはできません。汚染水はまだ漏れているし、魚には個体差があるからです。この魚はなぜ大丈夫だったのか? という納得できる理由づけが必要です。でもその第一歩として、私たちと同じ市民が計測した信じられるデータがあるということは、とても大きなことだと思います。

ツアー第2部では、お店の方々からとても元気をいただきました。伺うことのできなかった他のお店はわかりません。厳しい状況もあると思います。でも、私が出会ったいわきの方々はいきいきと誇りをもって働いていらっしゃいました。自分のような、いわきと縁遠かった人間が、「いわきって、いいな」と、いわきの海や産物に関心を持つきっかけに、うみラボツアーは間違いなくなると思いました。

思いつくままに感想を書かせていただきましたが、一番心に残ったのは、いわきの海は美しく、いわきで出会った方は生き生きとしていらっしゃったということ。うみラボのみなさんはピンチはチャンスということを体現している方々でした。楽しい時間を過ごさせてくださったうみラボのみなさん、感謝でいっぱいです。本当にありがとうございました。


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川浦さん、レポートありがとうございます!

そうなんです、今回の調査、釣果もよくなかったのですが、海底土の採取にも失敗してしまい、調査としてはかなり反省の残る回となってしまいました。

反省① 潮流の速い時に砂泥調査はどうするのか

今回は、アクアマリンの富原せんせいが調査に参加できず、うみラボメンバーのみの調査となったわけですが、潮流が速くほとんど泥をつかむことができなかったというのは大きな反省点です。これまで、海底土の採取については、採泥器の操作を富原せんせいに任せてきてしまったので、エクマンバージの使い方をうみラボメンバーもマスターする必要があると痛感・・・・。

②悪コンディションの際の釣果の確保をどうするのか

コンディションが悪くても、うみラボは「調査」なのですから、やはり何らかの魚を採取してこなければなりません。わざわざ船を出すわけですから。潮が速いのは事前にある程度わかっていたので、ならば原発沖のポイントではなく、近郊の河口付近でカレイなどを狙うなど、他の方法があったかもしれない。これを事前に確定できなかったのは、大きな反省点です。次に活かします。

③空間線量をナメちゃいけない

これまでの調査の結果、あるいは科学的な見地から、当該海域の空間線量は低いとわかっており、もはや洋上の空間線量などは報告するまでもないと思ってしまったわけですが、今回は1号機の天井を外す工事を始めていたわけです。今回そういうニュースがある中で、しっかりと空間線量をチェックできなかったことは気の弛みでした。次回以降、しっかりと空間線量も調べてレポートします。

このように、川浦さんはレポートをしっかりとまとめて頂いたのですが、うみラボとしては非常に反省の残る回となってしまいました。これまでの調査が非常にうまくいっていたので、気が緩んでいたとしか思えません。今後はしっかりと調査体制を整え、より信頼性のある情報を発信していきたいと思います。

次の調査は11月9日に開催される予定です。冬は海が荒れるため、今年最後の調査となるので、今回の反省を活かし、万全の体制で調査を行い、今年を締めくくるにふさわしいレポートをしたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。