いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

うみラボ第4回海洋調査まとめ(その3)

すっかり更新が遅れておりますが(汗)、うみラボ第4回海洋調査で釣り上げた「ハナサメ」と「イナダ」の計測結果をお知らせしておきます。

イチエフ沖ハナザメ
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このハナザメ、五十嵐せんせいが釣り上げた「大物」だったわけですが、こちらはセシウム合計で25.9Bq/kgという結果でした。サメは今まで計測したことがなかったので、どう判断してよいものかわかりませんが、アクアマリンふくしまの富原獣医のコメントは以下の通りです。

ハナザメは、遊泳性のサメで、餌は浮魚をメインに食べます。年齢は1~2歳と見られます。小名浜ではN.D.になって当たり前の魚という認識でいましたので、25.9ベクレルというのは意外な数字です。軟骨魚類硬骨魚類に比べてセシウムを溜めやすいので、出てもおかしくはないですが。

原因を推察すると、餌の浮魚はあまり汚染されていないので、海水由来か、あるいはたまたまセシウム濃度が高い餌魚を食べた可能性もあります。汚染水は淡水なので「海水の上に乗って拡散していくと」思われるので、表層を遊泳する魚のほうが影響を受けやすいのかもしれません。

夏にしか現れないサメで、この時期以外は別の場所に移動するので、100Bq/kgを超えるような汚染は無いと思います。サンプルが1匹だけですので推察することしかできませんね。もう5匹ほど欲しいです。

ううむ。やはり数がある程度揃わないと判断は難しいようです。ここで大事なのはやはり通常N.D.と考えられる魚種も、場合によっては高めのものも出てくるということ。ですから継続して調査して行かなければならないということですよね。今回は突発的に釣れてしまったのですが、富原せんせいに「もう5匹ほど欲しい」と言われてしまっては、サメ王子こと五十嵐せんせいには頑張って頂くほかありませんね。


続いて、F1前のイナダ
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こちらはN.D. 回遊する魚ですので当然の結果とは言えますね。

しかしなぜ「当然の結果」といえるのか。そもそも「イナダ」ってなんだろう、というところから考えてみますね。よくスーパーでも安い値段で売られている庶民の味方なのでご存知の方も多いとは思いますが、イナダとは出世魚であるブリの幼魚を指します。

主に関東では
ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ
関西では
ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ
と呼び名も異なり、また地方により更に違った呼び名もあるそうです。

関東圏でもスーパーの刺身コーナーで「ハマチ」を目にすることがありますが、これは主に養殖場が関西に多く、養殖で出荷されたものがそのまま「ハマチ」として流通しているからだそうです。なるほど。関西でハマチと呼ぶからそのままハマチと。で、関東ではだいたい30cmから50cmくらいまでの大きさのものを「イナダ」と呼ぶようで、今回釣れたのも40cm前後でしたので「イナダ」です。

さて、なぜそのイナダがN.D.で当たり前なのか。なにがヒラメ、アイナメと違うのでしょうか。

凄く簡単に言ってしまうと「回遊魚」だから、なんですね。特にブリやカツオなどの青物と呼ばれる魚は回遊する範囲が大きく、毎年南方から黒潮に乗って日本列島を北上していきます。そして、水温の低下とともに南下していくそうです。

つまり、ずっとこの福島沖で生活している魚ではないんです。

また成長速度も早い魚として有名で、1年で約30cm、2年で約50cmに成長すると言われています。40cmくらいのイナダは去年産まれたくらいなんですね。もちろん震災後生まれです。しかも南方の海域で産まれここまで回遊してきているんですねー。だから出てこないわけです。

もちろん、餌などが汚染されていた震災直後〜1年くらいの時期は福島沖のカツオやブリ、またはアジなどから微量の放射性物質が検出されましたし、「N.D.で当たり前」は、「震災から3年経過した今現在はもうN.D.で当たり前」ということなんですね。

最近は小名浜などで釣りをしてる人もイナダやアジなどは持ち帰って食べる人も多くなってきたと聞きます。こういった情報を当たり前の知識として皆さん持っているんですね〜。

このあたりで、第4回の調査結果についてのまとめを終わります。五十嵐せんせいのハードルが上がってしまいましたが、さて、次の第5回海洋調査はどうなるのか。またこちらでレポートさせて頂きます。