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いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

「裏」アクアマリンツアーレポ

こんにちは! うみラボけんきゅう員、釣りキチのヤギです。

去る6月7日、「いわき七浜巡りというツアー」の一環で、うみラボでもおなじみ、アクアマリンふくしまの獣医、富原聖一氏と巡る「裏」アクアマリンツアーを開催致しました。

今回のエントリでは、そのツアーの模様を紹介しようと思うのですが、今までのうみラボの取り組みとは若干違う感じがする方もいらっしゃると思うので、少しばかりご説明を。


―「裏」アクアマリンツアーをなぜ企画したか

事の始まりは前回のうみラボ海洋調査の後、採取した海底土をアクアマリンで測定したときのことです。五十嵐せんせいがアクアマリン脇で見事にアイナメを釣り上げたわけですが、その時、他のメンバーは五十嵐せんせいの竿さばきを堪能…してはおりませんでした(笑

実は、富原さんのご好意もあり、(五十嵐せんせいを放置して)アクアマリン館内を案内していただいていたのです。何を隠そう、私も大のアクアマリンファンで、何度もアクアマリンには来ているのですが、富原さんの解説を聞きながら回るアクアマリンは、これはもう格別の面白さでした。

震災時の話や、水族館ならではの豆知識や裏話、魚の生態などなど。水槽前で次から次へと興味深い話が飛び出すその空間は、まさにアトラクションと言っても過言ではなく、一緒に回った方も「これは面白い!」と興奮気味に語っておられました。こんな面白いものを放っておくのはもったいない!

ヤギ:「これ、一般の人向けに出来ませんかね?」
富原:「できますよ」

マジですか! 富原さんアッサリと承諾。

しかし、ただアクアマリンを回るだけではもったいない。いや、これだけでも十分すぎるほどに面白いけどもそれでももったいない。何がもったいないかと言うとですね、「富原せんせい」という存在が、なのです。

「水族館の獣医」というだけでも興味深い話がいっぱい聞けるのですが、なにしろここは正式名称「ふくしま海洋科学館」。ただの水族館じゃあありません。原発事故後様々な機関と協力をしてふくしまの海を調査してきたのです。

そして富原さんは、私もビックリするほどの釣りキチでございまして、その腕前は釣りのインストラクターの資格を有するほど。震災後、いわきの様々な場所で、自ら釣った魚や、他の釣り人の持ち込んだ魚の放射能を測定し続けてこられたのです。

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アクアマリンふくしまの獣医、富原聖一せんせい。ドヤ!

そもそも、獣医というのは放射線の知識も持っているものらしく、しかも富原さんのご専門は海洋生物。「いわきサイエンスカフェ」にも何度も登壇され、その独自の研究成果を発表してこられたほどです。私はたまたまそのサイエンスカフェで富原さんと知り合ったわけですが、サイエンスカフェが終わった後なぜか釣りの話で盛り上がり、気付いたら2~3時間お話をしておりました・・・。

釣りの話になると止まらないのが「釣り人」という面白い人種でございまして、魚を釣るため、たったそれだけのことを成すため、魚の生態に異様に詳しくなるのですね。

例えば、○○という魚はこの時期何を食べてどこで過ごすのか、産卵期はいつ頃で、どんな場所で産卵し、いつ頃から産卵期を終え食いが立つのか。魚ごとの食性や成長速度、移動性。そんなものに、もの凄く詳しくなります。

また○○というある特定の魚種でも、個体によってかなり違いが現れます。同じ魚でも汽水域を好むもの、磯場に定着するもの、小魚を追い続け回遊するもの・・・。そのような「同じ魚種でも個体ごとに生息する場所や餌などが違う魚」をなんとなく見分けることができるようなになったりします。それが釣りキチなんです。

釣り人なら「!」となるような話の数々。そんな話を一般の人にもわかりやすく伝えていければなぁと、当時から富原氏と話していて感じておりました。

また、釣りをする時には海や川に行かなければならないのですが(私は海専門なのでここでは海としますね)、私の場合、いわき小名浜がメインなのですが、毎日のように海に通ってると色々な光景を目の当たりにします。

潮吹きしながらイワシの群れに突っ込んでいくスナメリの親子、群れから離れて水面にちょこんと顔を出して鳴くアザラシの子供。親潮黒潮が絶妙に交わり、季節ごとに入り乱れる旬の魚たち。

そんなふくしまの豊かな海の話をすると、地元の人でさえも「え?いわきの海にはスナメリいるの!? アザラシもいるの!? そんな魚がいるの!?」と驚きます。

豊かな「ふくしまの海」をもっともっと自分自身も知りたいし、多くの人に知ってもらいたい。そして、ふくしまの海は今どういう状況で、今後どうなっていくのか。そんな色々なことを、アクアマリンふくしまなら、より多くの方に楽しみながら知ってもらうことができるんじゃないか。

そう思い、富原さんと色々相談しながら「裏」アクアマリンツアーなるものを企画してみた! というわけです。まずは初回ということで、色々と不安な面もあったので、アクアマリン好きの友人知人に声をかけ試験的にツアーを実施してみました。


―「裏」アクアマリンツアー詳細レポート

前置きが長くなってしまいましたが、ツアー当日の模様を紹介していきますね。

ツアー当日は梅雨入りで生憎の天気でしたが、お子さん5名を含む総勢16名もの方々にご参加いただけました。富原さんによる館内案内から始まり、ワークショップ、バックヤード見学という予定で、第1回「裏」アクアマリンツアー(仮)がスタートです。

①「海・生命の進化」展示コーナー

こちらには生きた化石と呼ばれるような魚たちが展示されています。一番最初のカブトガニの水槽で・・・・富原さんはいきなり水槽に手を突っ込み、カブトガニの脱皮した皮を拾いあげて「こんな感じです」と見せ始めたのです!
 
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最初の水槽で、このパフォーマンス! つかみはバッチリと言った感じでしょうか。実はツアーが始まる前まで、私としては富原さんのお話はとても面白いと思うけれど、はたしてそれは参加者の方にもウケるのか? と多少心配していたのですが、、、杞憂に終わりました。

ちなみに、こちらに展示されている肺魚たちは、東日本大震災時でアクアマリンが停電した際にもその殆どが生き残りました。(※生きた化石たち以外にも「ふくしまの川と沿岸」の淡水生物たち、タッチプールの生き物たちは環境の激変に強く、電源喪失の期間を生き延びていたらしいです)


②「ふくしまの川と沿岸」展示コーナー

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ピンク色の婚姻色が出ているウグイについての説明を受けながら、その中に1匹ウケクチウグイという希少種が紛れ込んでることを知りました。この種を展示しているのは「日本では唯一○○水族館」ということになっていますが、実はアクアマリンにもいたんですね。

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「汽水域の環境はスタッフの手違いから偶然できた」という裏話を聞いた後、水槽をよく見ると、淡水魚が集まっているのは水面下数センチの層だけ、その下の層には海水中に生息する海藻が生えており、淡水と海水の層がクッキリと別れているのが分かりました。


③「サンゴ礁の海」展示コーナー

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人気のチンアナゴとキンメモドキのコーナーです。チンアナゴは基本的にオス・メスのペアでいること、キンメモドキは飼育が大変で費用がかさむこと、またアクアマリンでの飼育方法を参考にしようと海外の水族館関係者もこちらを訪れることなど、沢山のお話を伺いました。


④「潮目の海」~「ふくしまの海」展示コーナー

「このコウナゴは試験操業の時にもらったやつです」
「大水槽には日本でここだけしか展示してない魚が三種います」
「ヤエギス(写真・下)は生態写真すらほぼ無い希少種で、世界でここだけしか展示していません」

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などなど、今まで知らなかったことが富原せんせいの口から次々と飛び出します。参加者の方々からも「へ~~~~!」「毎週のように来てるのに全然知らなかった!」「凄く面白い!」と次々驚きの声が上がります。


④「アクアマリンえっぐ」~昼食

アクアマリンエッグで先日生まれたばかりのカワウソの赤ちゃんを見た辺りでお昼の12時を回り、お子さんたちもお腹が空いたのでここでお昼タイム。館内案内に時間をかけすぎて、時間配分を見誤ってしまったこと、お子さんがいるのにお昼ご飯を重視してなかったことは反省材料でしたm(_ _)m


⑤「ワークショップ」

昼食後、出口付近のアクアルームを借りて「いわきの魚料理」ワークショップが始まりました。身近な魚のおろし方や食べ方を知って楽しんでもらおうという企画です。

普段はスーパーで切り身になった姿しか見ることがない魚。今回は、いわきでもメジャーなアイナメ、ヒラメといった魚を用意しました。三崎公園沖で釣れた、沖釣りにしてはちょっと小ぶりな40cm程度のサイズです。

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まずは初歩の初歩、ヒラメとカレイの見分け方です。

正面から見て「左ヒラメの右カレイ」。何気にこういう今更聞けないような豆知識って喜ばれますよね。

そして捌き方講座。

富原さんは漁師さんから貰った魚を多い時は1日50本も捌いており、また海獣たちの餌用の魚も自ら捌いたりするそうで、その包丁さばきはお見事の一言。あっという間にアイナメが三枚おろしになりました。

小名浜の沖の魚達は昔から「常磐モノ」と呼ばれ親しまれてきました。アイナメとヒラメはその常磐モノを代表する魚であるとともに、震災後は比較的放射能量が高いと認識されている魚でもあります。そこで、アクアマリンが所持する放射能測定器(NaI)を使って、本日の魚たちを目の前で測りました。

より正確な数値を出すためにはミンチ状にして測ることになっておりますが、参加者から「問題ない数値なら食べたい」という声が上がったため、測定用のマリネリ容器に三枚下ろしの状態で詰め込みました。

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そして、測定の様子をリアルタイムでモニターしながら、ふくしまの海産物の現状についてのお話を伺いました。

先日、五十嵐さんが釣ったアイナメの件でも触れましたが、富原さん曰く40cm程度のアイナメやヒラメは震災時はまだ幼魚で、それほど放射性物質を取り込まなかったそうです。その後成長過程において放射性物質を取り込むことも少ないと考えられ、実際に検査をしても殆どの結果がN.Dなのだそうです。
 
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この機種は測定時間毎に「検出限界」と「測定値」をチェックできます。これで数多くの検体を測ってきた富原さんに一定時間毎にスペクトルや検出限界を何度かチェックしていただき、私たちはこのヒラメとアイナメをほぼN.Dだと判断しました。

放射性物質の量が多い魚」というイメージが強いアイナメ・ヒラメですが、実際に測ってみるとそんなイメージと違ってN.Dの個体が多くいることもわかります。その理由も併せてわかれば、より身近な魚に対する理解が深まりますよね。

N.Dと判断できた三枚おろしは、その後、お刺身にして頂きました。「常磐モノ」のアイナメ・ヒラメ、想像以上の美味しさでした。

その後は、普段のバックヤードツアーでも行けないバックヤードのさらに裏を見学。ちょっと詰め込みすぎたかなと反省するくらい、充実したツアーとなりました。

今回の企画を通して、「魚の生態や特徴などを楽しみながら知る」「自分の目で見て測ってみる」ことで、多くの人により広く深くふくしまの海を理解してもらえるのではないかと感じました。

富原さんご自身も想像以上に手応えを感じられたようで、市内・県内の方、そして観光に来てくださる県外の方、1人でも多くの方に今後もこのようなツアーをやっていきたいと言って下さいました。

今後もこういった取り組みを続けて行きたいと思います!