いわき海洋調べ隊「うみラボ」活動のきろく

いわき市に誕生した、有志による団体「うみラボ」。けんきゅう員が日々の活動やイベントのお知らせを綴っていきます。

アクアマリンふくしま「第7回調べラボ」速報

皆さんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。

11月15日、日曜日です。第7回調べラボがですね、アクアマリンふくしまで開催されましたので、その模様をさっそくその日のうちに皆さんにお知らせしたいと思います。

いや〜、ここのところ海が悪い。

11月は、もとはと言えば8日に「うみラボ」の海洋調査をするはずでしたが、風と高波でお流れになり、その振替分として11月14日にも「うみラボ」開催日として皆さんにお知らせしてたのですが、こちらも風と雨の影響で中止。

うーん。この時期って風が不安定で、どちらも南風がかなり強くなりましてですね、久之浜に帰ってくる時の波がとても心配、ということでやむなく2連続での中止という憂き目にあいましてございます。自然相手ですからね。しかたありません。

ですので、今回の調べラボでは、福島第一原発直近の魚は計測できませんでした。


その代わりといっちゃなんですが、

今月のメイン食材も木戸川のシロザケです!

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楢葉町木戸川のサケといえば、震災前から楢葉名物として名を馳せた特産品。福島第一原発の事故の影響で漁ができない状態が続いてたのですが、今年の秋にようやく漁が再開になりまして、普通に食べられるようになっております。

ええええええ? 楢葉町の川で獲ったサケなんて食べられるの?

と思ってしまう方も多いと思うのですが、安心して下さい、安全性が確認されてます!

●日本から遠く離れたアリューシャン海域、ベーリング海まで北上して育つ。
原発から遠く離れた北洋で育つので、海水もエサもまったく汚染されていない。
●木戸川に戻ってくると、川ではほとんどエサを食べない。
●木戸川自体の水も1Bq/ℓ以下と非常に低い。
☞以上のような理由から、木戸川サケから放射性セシウムが検出されることはない。
☞というわけで漁が再開された。

というあんばいでございます。

もちろん、このような生態からの理由に加え、かなり綿密に且つ長期間にわたってモニタリング調査も重ねられており、慎重に漁の再開が判断されております。まずは、これまで調査や計測、そして簗場の再生などに携わってこられた方、皆さん大変ご苦労様でございました。


ただ、やはり目の前で放射性物質をしっかり測ってみようというわけですね。今回は、オスとメスを一尾ずつ計測。身体の大きなほうがオス。小さなほうがメスになります。11月くらいの時期になると、メスの身体の栄養が卵のほうに移ってしまうため、今の時期はメスよりもオスを食ったほうがうまいらしいですぜ。

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アクアマリンふくしまの獣医、富原せんせいがサケをかっさばいていきます。

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木戸川漁港の皆さんも愛用しているという、山形の刀匠が作ったという出刃包丁。刃が薄くしかも切れ味が最高。するするっとサケの身体と骨が切り離されていきました。

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そしてこちらが、木戸川漁港の職人さんが考案したと言う「採卵刀(さいらんとう)」(だったかな?) メスのお腹に当ててサッと引くと、卵を傷つけることなく採取できるという、すばらしく使える道具です。

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採卵刀をすすすっと引いていくと、サケのお腹のなかから宝石がざくざくと出てきます。

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いやあ、イクラがたっぷりと出てきたときには、さすがに会場から歓声があがりました。やっぱりイクラが好きな人はたくさんいるんですよ。そして木戸川のサケが皆さんの注目の的になっているというのがすばらしい。すばらしいですねこの光景は。


そして、イクラ採取のデモンストレーションが終わると、サケの耳石の採取です。

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うみラボファンの皆さんは、もうご存知ですよね、耳石。

耳石(じせき)とは、脳みそのそばにある器官で、年齢が木目のように刻まれているため、これを調べると魚の年齢がわかるんす。体長だけではおおまかにしか年齢が分からないため、富原せんせいが毎度耳石を取り出し、年齢を判定して頂いていました。

ただ、写真を見るとわかるように、サケの耳石ってちっせー! これじゃ目で見ただけじゃわかんないよね。

ってことで、今回は拡大カメラを使って、ウロコを確認して年齢を確認。ウロコも、耳石のように年齢が刻まれるため、耳石がわかりにくい場合はウロコを確認することも多いのだそうです。こんな風にしてウロコの年齢判断をします。

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この写真だとわかりにくいのですが、確かに年輪のようなものが刻まれており、富原せんせいによるとこちらのオスのサケの年齢は5歳ということでした。


気になる計測値ですが、こちらのオスの放射性物質は、もちろんですが、検出されませんでした。

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放射性物質の計測結果についてはまた後日こちらで詳しい解説とともにお送りできればと思いますので、先に進みます。


サケに続いて計測するのが、こちらの木戸川産マルタウグイ。木戸川のサケを採取するとき、簗場に引っかかっていたものを捕まえたものだそうです。

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マルタウグイはかなり雑食性の強い魚で、特にこの時期は、サケが生んだ卵を食べるためサケと一緒に川を遡上するんだそうです。そして簗場に引っかかっちまったわけですね、マヌケなマルタ野郎だぜ!!!

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で、こちらのマルタ、独特の匂いがあってほとんど食用されないので、金銭的な価値はなく、通常は流通しません。釣り人にも嫌われる魚だそうです。

しかし!!!!!!!!!!!!

今日の調べラボにいらっしゃっていた楢葉町の木戸川漁協の母ちゃんに話を聞いたら、このマルタウグイ、楢葉の皆さんは釣れた場合は刺身で食うんですって! 確かに小骨が多いのだけれど、切り方を逆に切って骨を切るように刺身にすればさほど気にならず、地元の皆さんは「にんにく醤油」で食うのだそうです。たしかに身もぷりぷりしてて、淡白な白身の身は確かにうまそう。

三陸などでは「タタキ」や「なめろう」にして食うんですって! オイラも食べてみたい。

しかしこのマルタ、沿岸に生息し、雑食性であり、海底の泥を食み、さらに汽水域を好むうえ、木戸川から福島第一原発あたりまで泳いでいく個体も多く、「放射性物質」震災直後から「線量高め」の魚として認識されていたそうです。「ほとんど食用されない」のでノーマークでしたが、そういう魚もいるわけですね。


そして本日最後の検体がこちら。

アナゴンダァァァァァァァッ!

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なんじゃこりゃあああああ!!!

この怪物、小名浜産のマアナゴ。1メートル近い巨体に驚かされました。これだけデカいとおそらく震災前生まれですので、もしかすると放射性物質が検出されるかもしれません。しかしほんとこのマアナゴの巨大さよ。蒲焼き何人分だよ・・・。

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いやあこれだけの身の厚さ、蒲焼きにして食ったらさぞかしうまえべなあ、と思っていたのですが、大きなアナゴは「刺身」で食ってもうまいそうです。うお! アナゴの刺身ですと? ちなみに小名浜港、けっこうアナゴが釣れることで知られておりまして、新鮮なものならやはり「刺身」で食うのもおすすめだと富原獣医。

そっかー。わたし小名浜生まれ小名浜育ちなのにアナゴの刺身食ったことねえズラ。

ぐぬぬぬぬ・・・・前述のマルタウグイといい、こちらのマアナゴといい、全然地元の食文化のこと知らなかったんだな・・・ぐやじい。いつかうみラボで食ってみたいですね。調べラボって「放射性物質を測る」イベントだと思われてますが、調べと書いて「たべ」と読むくらいですから、すなわち「食べラボ」なんです。魚のおいしさ、おいしい食い方を学ぶイベントなのです。

今はまだ「放射性物質を測る」ことも目的ですが、はやく測らなくていいようになればいいですねえ。

ちなみにマルタウグイとマアナゴの計測結果ですが、このような形になっております。

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木戸川産マルタウグイ(2尾)でセシウム合計10.8Bq/kg。小名浜産マアナゴはN.D.でした。高い傾向だったマルタウグイが10Bq程度、そして震災前生まれと推察される巨大マアナゴがN.D.ですから、これは非常に喜ぶべき数値かなと思います。また後日詳しく解説しますね。


さて、調べラボといえば試食です。

今日のメニューは、

木戸川産サケの紅葉汁 feat.木戸川漁協婦人会の母ちゃん。

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ほんとうめえ。

ザクザクと豪快に切り身にしたサケ、大根、里芋、人参、白菜などの野菜を赤みそとみりんなどでシンプルに味を付けて煮込んだ地元の味です。今回は木戸川漁協婦人会の母ちゃんたちのガチの味付けですよ。まずいわけがない。この時期には最高なのではないでしょうか。ックー、熱燗飲みたい。

そしてこちら、調べラボ名物「飲むイクラ」。

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柚子が入っておりましてね、通常の醤油漬けよりもさっぱりと召し上がれる。試食が始まると、どこからともなくアクアマリンの安部館長がいらっしゃり、飲むイクラを味わっておられましたよ。館長も魅了する「飲むイクラ」、これ食うチャンスを逃したあなたは好きなだけ「ぐぬぬ・・・」しててください。

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いやあ、調べラボ、写真だけ見ると完全に「食のイベント」ですよね。

でもね、これがまさに理想型。「測る」なんてせずに、普通に地元の魚を知り、おいしく食べる。そんなイベントが一番の理想です。別に皆さん「放射性物質の計測結果」に興味があるわけじゃない。単純に「うまい魚料理が食べたい」だけwww でも、それでいいし、それがいい。改めてそんなことを考えさせられました。

さて、今月は2回連続の延期となっているうみラボも、月末の29日に再度出港を予定しています。しっかり釣って、福島の海の今を、また皆さんにお知らせできればと思います。次回もぜひよろしくお願いします。